竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

海の近くの街で ☆17☆

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 シュエがこてんと小首を傾げる。

「姫さまは大切に育てられていましたので……」
「まぁ、わらわが剣を扱えることを知る者は少ないからのぅ。そもそも、わらわの宮にくるものはほぼ皆無じゃし?」
「姫さまの宮はがっちりと身内で固めていますからねぇ」

 リーズが肩をすくめる。確かにシュエの暮らしている宮は家族によってがっちりと守られていた。

 それが息苦しいと思ったことはなかったが、こうして自由に旅をすることができるようになり、翠竜すいりゅう国で暮らしていた頃が『守られていた』のだと強く感じるようになった。

「過保護じゃからな!」

 明るく笑うシュエに、宇航ユーハンはふっと笑みをこぼしてから彼女に声をかける。

「つつがなくお過ごしください、姫さま」
「うむ。そなたはこれから国へ帰るのか?」
「そうですね、姫さまに文をお渡しする任務は終えましたので、国へ帰って報告いたします」
「そうか、ご苦労じゃった」

 優しく労りの言葉を紡ぐシュエに、宇航は軽く首を振り、彼女の目を真っ直ぐに見つめて一礼した。

「それでは、失礼いたします」

「宇航」

 去ろうとする宇航を呼び止め、振り返る彼に対してシュエが凛とした声で言葉を紡ぐ。

「――わらわが楽しく旅をしていること、しかと兄上たちに伝えておくれ」
「かしこまりました」

 宇航は一瞬目を丸くしてから、彼女に小さくうなずきを返す。

 部屋から出ていく宇航を見送り、シュエはリーズを見上げて「知らせたか?」と問いかけた。が、リーズはふるふると首を横に振った。

「ならばルーランか」
「でしょうね。それで姫さま、本当にクラーケンを倒すのですか?」
「うむ、見てみたいしのぅ」
「……ずっとあの宮にいましたものね」

 リーズが懐かしむように目元を細める。

 旅をしてから、王宮ではまず見ることがない悪鬼あっきを倒し、自然を感じることで自分の世界は本当に狭かったのだと痛感した。

「また恐れられるかもしれんが、それはそれ。わらわはこの旅を楽しむと決めておるんじゃ!」
「食に関してはかなり楽しんでいらっしゃると思いますが……?」
「まだまだこれからよ」

 にっと白い歯を見せるシュエに、リーズはぽんぽんとその頭を撫でる。

「さぁ、少し眠ったからスッキリしているでしょう? お風呂に入ってきてください」
「はぁい」

 リーズにうながされて、シュエはぴょんと椅子から降りた。

「こちらのお風呂も用意していますが、どちらに向かいますか?」
「部屋のお風呂で波音を聞きながら入ることにしよう! 癒されそうじゃ」
「癒され過ぎて眠らないように」
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