竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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2章:冒険者として

初仕事! ☆10☆

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「この霧の中で、どうして平然とできるんだ?」

 黙って歩いていた襲撃者が、怪訝けげんそうにシュエとリーズに声をかける。

「こういう術って、その術者よりも強い者には効かんというのが定説では?」

 にやりと口角を上げるシュエに、彼は眉間に皺を刻んだ。

「シュエ」
「わかっておる。一気に、じゃな」

 リーズがこくりと首を縦に動かすのを見てから、シュエは目を閉じて深呼吸を繰り返し、言葉を紡ぐ。

「――我らを惑わす悪しき霧よ、霧散せよ!」

 シュエの目がカッと開かれ、扇子で霧を裂くように腕を大きく振った。

「……うそだろ……」

 男性が呆然としたように目を見開く。

 相変わらず曇ってはいるが、すっかりと霧が晴れた。

「あれ、いなくなった……」
「坊ちゃん、大丈夫ですか?」

 どんなものを見ていたのかはわからないが、少年はほっとしたように息を吐く。そんな彼に声をかけるのは護衛だ。少年が「うん」とうなずいたのをみて、護衛も安堵したようだ。

「どうやら、人の恐怖心を増幅させて惑わす術のようですね。我々には効きませんが」
「……あんたら、本当に人間か?」
「うん? そなたの目に、わらわたちはどう映っておるんじゃ?」

 襲撃者がこぼした言葉に、シュエは彼の前まで移動して顔を覗き込む。

 肯定も否定もせず、ただたずねるシュエに襲撃者は視線をそらした。どうやら言いたくないらしい。

「この辺りにくると発動する魔法のようですね。いろんな魔法があるものです」

 感心したように話すリーズに、シュエは彼に近付いて辺りを見渡す。

「のぅ、リーズ。術が解けるとわかるものか?」
「術者にはわかるでしょうね」
「ふむ。ならば、我らの存在に気付いたということじゃな」

 シュエは考えるように口元に指をかけ、目を閉じる。このまま進むか、それとも相手がくるのを待つか――……

「うーむ、難しいところじゃのぅ。とりあえず、先に進むべきか?」
「シュエのお望みのままに」
「むぅ。では、前進あるのみ!」

 シュエの一言で、進むことが決まった。

「そなたら、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫。霧が消えたら楽になったよ」

 少年は深呼吸を繰り返して、それから苦笑を浮かべた。少年と護衛の様子を確認し、シュエは歩き出す。

 彼らがきちんとついてきていることを確かめながら、暗殺者ギルドへと足を進めた。

「のぅ、下っ端のリーダー。暗殺者ギルドの者って、みんな黒ずくめの服を着ておるのか?」
「は? あ、いや。まぁ、そうだな。下っ端は仕事のときにこの服を着るんだ」
「ふぅん。暗殺なのに白昼堂々襲いかかってくるし、実はそなたたち、連携が取れていないのでは?」
「……知るかよ」

 男性はそのまま口を閉ざしてしまう。

 歩き続けて数十分。ようやく暗殺者ギルドに辿りついた――のだが、シュエはその建物を見て、呆気に取られたように口をぽかんと開けた。
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