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2章:冒険者として
暗殺者ギルド ☆5☆
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「そうさなぁ……まず、両親と三人の兄がおる。つまり、わらわは末っ子というやつじゃな。それと、兄たちとは少し年齢が離れてもいるから、それを念頭に置いて聞いておくれよ?」
ピッと人差し指を立てるシュエ。少年はワクワクとした瞳を隠さず、彼女を見つめて首を縦に動かす。
「末っ子、しかも女の子が生まれたということで、家族からたーっぷりの愛情を注がれて育ったんじゃ。両親も、兄たちも、わらわが好きなことをできるようにと協力してくれた」
自身の家族のことを語るシュエの表情は、柔らかく慈愛に満ちていた。
愛されていることを知っている者の表情だ、と少年は自身の家族を思い浮かべる。
「わらわは家族に愛されて……とっても愛されていたから、こんなふうに旅ができるのもなかなか新鮮なんじゃ。まぁ、リーズも一緒だがな」
「リーズさんが保護者?」
「まぁ、そんな感じじゃな。リーズはわらわが幼い頃から一緒にいるから、安心感があるのじゃろう」
実際、シュエは今回の旅は一人で行く気だった。だが、父がリーズを護衛に選び、ともに行くように彼に命令した。さすがに国の主からそう言われたら、リーズに選択権はなかっただろう、とシュエは一瞬呆れたような表情をした。
「でも、どうして旅をしているの?」
「一族のしきたり、と言えばわかりやすいかの? 成人前に旅に出て、いろんなことを見て回るのがしきたりなんじゃ」
竜人族は成人後がとっても長い。半永久に生き続ける種族だからだ。成人前に旅に出るのは、未熟な精神の状態でどんな旅をして、なにを学ぶのか――……そして、なにができるのかと自分自身を知るため。
「お主らは? なにかしきたりがあるのか?」
「しきたり……というか、五歳くらいの頃に、神殿で魔法の適性がどんなものかを確認するよ」
「魔法の適性?」
少年はからあげが乗った皿を護衛に渡し、そっと手のひらを上にした。目を閉じると彼の手のひらにふよふよと丸い水の球体が浮かび上がる。
「ほう? ということは、そなたの適性は『水』か」
「うん……でも、うちって風の適性が多いんだって」
しょんぼりとした様子に、シュエは首を傾げる。護衛が「坊ちゃん……」と小さくつぶやいた。
「別になんの属性でも、使い方さえ間違えなければよいのでは?」
「使い方さえ、間違えなければ……?」
「力の使い方は人それぞれじゃ。こやつらのように人を襲う力もあれば、わらわのように人を助ける力もある。そうじゃろ?」
シュエはパチンとウインクをした。少年は目を瞬かせて、ぷはっと噴き出す。
「……そうだね。力の使い方、間違えないようにしないと」
「うむ、それが一番じゃ。そのためにお主も、しっかりとこの世界を見なくてはな」
にっと白い歯を見せるシュエに、少年は「そうだね!」と大きくうなずいた。
ピッと人差し指を立てるシュエ。少年はワクワクとした瞳を隠さず、彼女を見つめて首を縦に動かす。
「末っ子、しかも女の子が生まれたということで、家族からたーっぷりの愛情を注がれて育ったんじゃ。両親も、兄たちも、わらわが好きなことをできるようにと協力してくれた」
自身の家族のことを語るシュエの表情は、柔らかく慈愛に満ちていた。
愛されていることを知っている者の表情だ、と少年は自身の家族を思い浮かべる。
「わらわは家族に愛されて……とっても愛されていたから、こんなふうに旅ができるのもなかなか新鮮なんじゃ。まぁ、リーズも一緒だがな」
「リーズさんが保護者?」
「まぁ、そんな感じじゃな。リーズはわらわが幼い頃から一緒にいるから、安心感があるのじゃろう」
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「でも、どうして旅をしているの?」
「一族のしきたり、と言えばわかりやすいかの? 成人前に旅に出て、いろんなことを見て回るのがしきたりなんじゃ」
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「お主らは? なにかしきたりがあるのか?」
「しきたり……というか、五歳くらいの頃に、神殿で魔法の適性がどんなものかを確認するよ」
「魔法の適性?」
少年はからあげが乗った皿を護衛に渡し、そっと手のひらを上にした。目を閉じると彼の手のひらにふよふよと丸い水の球体が浮かび上がる。
「ほう? ということは、そなたの適性は『水』か」
「うん……でも、うちって風の適性が多いんだって」
しょんぼりとした様子に、シュエは首を傾げる。護衛が「坊ちゃん……」と小さくつぶやいた。
「別になんの属性でも、使い方さえ間違えなければよいのでは?」
「使い方さえ、間違えなければ……?」
「力の使い方は人それぞれじゃ。こやつらのように人を襲う力もあれば、わらわのように人を助ける力もある。そうじゃろ?」
シュエはパチンとウインクをした。少年は目を瞬かせて、ぷはっと噴き出す。
「……そうだね。力の使い方、間違えないようにしないと」
「うむ、それが一番じゃ。そのためにお主も、しっかりとこの世界を見なくてはな」
にっと白い歯を見せるシュエに、少年は「そうだね!」と大きくうなずいた。
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