4 / 153
1章
4話
しおりを挟む
「そして、はい。これがパン。こっちは水。いきなり追い出されたから、これしか持ち出せなかったんだよね」
「貴重な食料なのに、本当に良いの?」
「いいわよ。困ったときはお互いさまって言うじゃない?」
「命の恩人に、食の恩人も加わった……」
そんなことをいうディーンに、わたしは小さく笑った。……こうして誰かと一緒に食事を摂るのって、いつぶりだろう? 確か、去年のお祭り以降はひとりで食べていたから……、結構長い間ひとりで食べていたなぁ。ふかふかのパンを頬張りながら、そんなことを考えながらごくんと飲み込む。
「あ、そうだ。ディーン、敬語じゃなくていいよ」
「え、でも……」
「それでね、あの、こんなことをいうのはおかしいかもしれないけれど……、わたしと友達になってくれない?」
「友達?」
「うん。わたし、この国でひとりぼっちなのよ。たまにこうして話してくれると嬉しいんだけど、どうかな?」
期待に満ちた目でわたしはディーンを見た。ディーンは小さく笑みを浮かべて、「喜んで」といってくれた。やった! 友達ゲット! 念願の友達!
ダラム王国の神殿にずーっといたから、友達を作る暇なんてなかったのよね……!
初めての友達に、わたしの心はとっても高鳴った。だってずっと憧れていたのだもの!
パンを食べ終えて、水を飲んで、たき火で身体を温めていたら、足音が聞こえた。ディーンが顔を上げて、警戒するように眼光を鋭くさせる。
「見つけた! 隊長!」
「バーナード……、よくひとりで無事だったな……」
「いや、それが瘴気の森から瘴気が消えて、魔物がいな……って、誰です、この女」
「はじめましてー、ディーンの命の恩人のアクアです!」
せめて女性と呼ばんか! と思ったけれど、とりあえずにっこり笑って自己紹介をする。……さっき、ディーンは『バーナード』って呼んでいたよね。『セシル』とは違う人なのかな?
そのバーナードはわたしに対して怪訝そうな表情を浮かべながら、「命の恩人?」とディーンに聞いていた。そんなに怪しまなくてもいいじゃない!
「本当だよ。なんとか倒せたけど、魔物相手に重傷を負った。だが、アクアが回復魔法を掛けてくれたおかげで助かったんだ」
「この女が回復魔法を……?」
「せめて女性って呼んで!」
「そうだぞ、バーナード。騎士の癖にレディへの扱いがなってないぞ」
……騎士? ディーンとバーナードって騎士だったの? え、わたし騎士を助けち
ゃったのか……。騎士か……、あまりいい思い出ないのよね。ダラム王国の騎士ってこっちを睨んでくるし、冷たい視線を送っていたし、あ、もしかしてその時からあの殿下、新しい聖女を見つけていた!?
……あり得る……。とってもあり得る! ってことは、あの殿下に付き合わされた騎士たちもいるってこと? ……いやもうわたしには関係ないんだけどさ!
「ともかく、ここにいるのは危険だから、帝都に戻ろう」
「……この女も連れて行くんですか?」
「命の恩人だからね。行こうか」
「あ、ちょっと待って! 火を消すわ!」
森の中で火事を起こしちゃ大変だからね。魔法でつけたから、魔法で終わらせないと。本当は土魔法が一番良いんだろうけど、わたし、土魔法は苦手だから水魔法で。ばしゃっと。よし、消火完了。この方法、簡単に火が消せて便利なのよ……。ちょっと呆れたような視線を感じたけれど、気にしない。わたしは鞄を持ってふたりに振り返った。
「おまたせ! 歩いていくの?」
「いや、転移魔法を使う。いいな? バーナード」
「……はいはい、ちゃんと持って来てますよ」
アルストル帝国の騎士は転移魔法を使えるのかな? と考えていたら、バーナードがごそごそと懐から石? を取り出した。
「なぁに、それ?」
「転移石。これがあれば転移の魔法が使えない者も、転移を使えるようになるんだ」
「へぇ、さすがアルストル帝国! 便利なものがあるのね!」
……でも転移かぁ……。大丈夫かなぁ。ちょっと不安になりつつも、ディーンの「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と気遣ってくれた。転移のミスでここに居るって話したからね。わたしが不安がっているのがわかったのだろう。それにしてもものすごく疑いの視線を感じる。バーナードはわたしに対して、かなりの警戒心を持っているように見えるけど……。……まぁ、その気持ちもわからないでもない。正体不明の人物だものね。
「それじゃ、帝都に向かうよ。オレの手を握って」
「はぁい」
「……俺は自分で使います」
わたしと手を繋ぐのがそんなにイヤか! ……まぁいいや。わたしはディーンと手を繋いだ。それからすぐに、転移石を使ったようで、パッとどこかのお屋敷前に辿りついた。……よかった、ちゃんとついたみたい。
ほっと安堵したのと同時に、じゃあなんで神殿の転移は普通に使えなかったのか……。わざとか、やっぱりわざとなのか神官長……!
「貴重な食料なのに、本当に良いの?」
「いいわよ。困ったときはお互いさまって言うじゃない?」
「命の恩人に、食の恩人も加わった……」
そんなことをいうディーンに、わたしは小さく笑った。……こうして誰かと一緒に食事を摂るのって、いつぶりだろう? 確か、去年のお祭り以降はひとりで食べていたから……、結構長い間ひとりで食べていたなぁ。ふかふかのパンを頬張りながら、そんなことを考えながらごくんと飲み込む。
「あ、そうだ。ディーン、敬語じゃなくていいよ」
「え、でも……」
「それでね、あの、こんなことをいうのはおかしいかもしれないけれど……、わたしと友達になってくれない?」
「友達?」
「うん。わたし、この国でひとりぼっちなのよ。たまにこうして話してくれると嬉しいんだけど、どうかな?」
期待に満ちた目でわたしはディーンを見た。ディーンは小さく笑みを浮かべて、「喜んで」といってくれた。やった! 友達ゲット! 念願の友達!
ダラム王国の神殿にずーっといたから、友達を作る暇なんてなかったのよね……!
初めての友達に、わたしの心はとっても高鳴った。だってずっと憧れていたのだもの!
パンを食べ終えて、水を飲んで、たき火で身体を温めていたら、足音が聞こえた。ディーンが顔を上げて、警戒するように眼光を鋭くさせる。
「見つけた! 隊長!」
「バーナード……、よくひとりで無事だったな……」
「いや、それが瘴気の森から瘴気が消えて、魔物がいな……って、誰です、この女」
「はじめましてー、ディーンの命の恩人のアクアです!」
せめて女性と呼ばんか! と思ったけれど、とりあえずにっこり笑って自己紹介をする。……さっき、ディーンは『バーナード』って呼んでいたよね。『セシル』とは違う人なのかな?
そのバーナードはわたしに対して怪訝そうな表情を浮かべながら、「命の恩人?」とディーンに聞いていた。そんなに怪しまなくてもいいじゃない!
「本当だよ。なんとか倒せたけど、魔物相手に重傷を負った。だが、アクアが回復魔法を掛けてくれたおかげで助かったんだ」
「この女が回復魔法を……?」
「せめて女性って呼んで!」
「そうだぞ、バーナード。騎士の癖にレディへの扱いがなってないぞ」
……騎士? ディーンとバーナードって騎士だったの? え、わたし騎士を助けち
ゃったのか……。騎士か……、あまりいい思い出ないのよね。ダラム王国の騎士ってこっちを睨んでくるし、冷たい視線を送っていたし、あ、もしかしてその時からあの殿下、新しい聖女を見つけていた!?
……あり得る……。とってもあり得る! ってことは、あの殿下に付き合わされた騎士たちもいるってこと? ……いやもうわたしには関係ないんだけどさ!
「ともかく、ここにいるのは危険だから、帝都に戻ろう」
「……この女も連れて行くんですか?」
「命の恩人だからね。行こうか」
「あ、ちょっと待って! 火を消すわ!」
森の中で火事を起こしちゃ大変だからね。魔法でつけたから、魔法で終わらせないと。本当は土魔法が一番良いんだろうけど、わたし、土魔法は苦手だから水魔法で。ばしゃっと。よし、消火完了。この方法、簡単に火が消せて便利なのよ……。ちょっと呆れたような視線を感じたけれど、気にしない。わたしは鞄を持ってふたりに振り返った。
「おまたせ! 歩いていくの?」
「いや、転移魔法を使う。いいな? バーナード」
「……はいはい、ちゃんと持って来てますよ」
アルストル帝国の騎士は転移魔法を使えるのかな? と考えていたら、バーナードがごそごそと懐から石? を取り出した。
「なぁに、それ?」
「転移石。これがあれば転移の魔法が使えない者も、転移を使えるようになるんだ」
「へぇ、さすがアルストル帝国! 便利なものがあるのね!」
……でも転移かぁ……。大丈夫かなぁ。ちょっと不安になりつつも、ディーンの「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と気遣ってくれた。転移のミスでここに居るって話したからね。わたしが不安がっているのがわかったのだろう。それにしてもものすごく疑いの視線を感じる。バーナードはわたしに対して、かなりの警戒心を持っているように見えるけど……。……まぁ、その気持ちもわからないでもない。正体不明の人物だものね。
「それじゃ、帝都に向かうよ。オレの手を握って」
「はぁい」
「……俺は自分で使います」
わたしと手を繋ぐのがそんなにイヤか! ……まぁいいや。わたしはディーンと手を繋いだ。それからすぐに、転移石を使ったようで、パッとどこかのお屋敷前に辿りついた。……よかった、ちゃんとついたみたい。
ほっと安堵したのと同時に、じゃあなんで神殿の転移は普通に使えなかったのか……。わざとか、やっぱりわざとなのか神官長……!
22
あなたにおすすめの小説
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる