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1章
18話
しおりを挟む「……ちなみに、アクアはどんな生活をしたいんだ?」
「わたし? わたしはね……平和に暮らせたら、嬉しいな。仕事に追われるでもなく、ちゃんと自立しつつ平和に毎日を過ごすのが一番だと思うのよ」
休憩なく仕事ばっかりしたくないし、お休みもちゃんと欲しい。そう考えると、ノースモア公爵邸のメイドって、かなり待遇良い仕事だと思うのよね……。
「……そんなに平和に暮らしたいのなら、陛下の所有する屋敷で暮らせばいいんじゃねぇの?」
「へ?」
「神殿に行くつもりはないんだろ?」
……そりゃあね、と答えた。七人も聖女やら聖者がいるのなら、わざわざわたしが八人目として行く理由もないだろうし。……でも、七人の聖女や聖者がいても、帝都の瘴気は……。要望があれば手伝っても良いとは思うけど、わたしが出しゃばるのは違うと思うのよね。
「陛下の所有する屋敷で暮らしながら、許しを得て好きなことをすれば良いんじゃね?」
「……好きなこと……。……好きな、ことぉ……?」
ダラム王国では仕事ばっかりしていたし、アルストル帝国に来てからもメイドとして働いていたし……。わたしが好きなことってなんだろう……? うーんと悩んでいると、ディーンとバーナードが「それを見つけるのも楽しいかもね」や、「ゆっくり考えてみればいいんじゃね?」と声を掛けてくれた。……それにしてもバーナード、わたしが王族の血を引いていると知っても態度を全然改めないのね……。ま、そっちの方が話しやすくていいんだけどさ。
「……あれ、そういえば陛下はディーンのことを『甥』って言っていたけど、従弟じゃないの?」
「あー……それ、ね。ややこしいんだよね、関係図」
「?」
甘酸っぱいケーキを食べながら、ふと気になったことを尋ねると、ディーンが眉を下げてお茶を飲んだ。
「陛下の上に兄が居たんだけど、オレはその人の子。公爵家にとっては養子」
「……は?」
ちょっと待って、ちょっと待って。こんがらがって来た。陛下の上に兄が居た? 居たってことは過去形だよね。その人は一体どうなったの? そしてディーンが公爵家の養子? どういうこと?
「毒殺されたんだよね、王族あるある」
「いや、あるあるじゃないよ、怖いよ!」
「……まぁ、それで現在の陛下が玉座についたわけだ」
もうさっぱり年齢がわからない……。陛下の兄の子であるディーンは十八歳、陛下は二十歳。二歳の頃にディーンが生まれたというわけで……、陛下の兄って何歳だったのかしら……?
「それにオレ、不義の子だし。公爵家のみんなはそんなことを気にしないでくれているけどね」
「ど、どういうこと……?」
「子どもが出来る身体になった時に襲われて出来た子、らしいよ」
それはつまり……誰かが陛下の兄を襲ったってこと? うわぁ、ドロドロな関係性しか見えない……。
「実際はどうなのかわからないけどな。なんせ年齢がおかしすぎるだろ」
「……? 陛下とお兄さんの年齢差はいくつだったの?」
「五歳、だったかな」
……七歳の子を襲った人が居るってこと? ……でも、そう簡単に襲われるとは思わないんだけどな……王族が……それに七歳って……。うーん、わたしは男性じゃないからわからないわ……。その年で、子どもが出来る身体になっているのかしら……?
「だから、俺はもしかしたら当時の陛下の隠し子って可能性もあるなぁって思ってさ。まぁ、不義の子であることには変わりないんだけど」
「……ちなみに、その当時の陛下って……?」
「やっぱり毒殺されたみたい」
「怖いわ!」
ディーンはあんまり気にしていないようだけど……。……詳しく知ろうとすると消されるってわけじゃないよね……? 毒殺とか本当に怖いんだけど。王族のアレコレに巻き込まれるつもりはこれっぽっちもないぞ、わたし……!
「……今の陛下になってから何年経っているの?」
「五年。……それまでに色々あったよなぁ……」
「あったなぁ……。あんまりよくないことが主に……」
しみじみと話すふたりに、この話題はあまり良くないな、と思いながらお茶を飲んだ。ケーキも全部いただいた。美味しかった!
……それにしても、十五歳の頃から国の頂点に立っていたんだ……。それはきっと、とても大変なことだったと思う。
そういえば、わたしが謁見したのは陛下だけだった。その年で陛下になっているのなら、結婚していてもおかしくないよね……。
「陛下に配偶者はいらっしゃるの?」
「いないよ。絶賛募集中」
「ふぅん……。パートナーがいれば少しは楽できそうだけど……」
「そうもいかないのが政だろ……」
「デスヨネー」
それにしても今日は情報量が多くて頭がパンクしそう。……王族の謎っていっぱいあるんだなぁ……。ディーンの出生とか年齢とか……あれ、でもあの板に登録されているのなら……。やっぱり陛下の兄の子なのか、とか……。毒殺怖いとかね……。これはもう確実に! 下手に関わらないほうがいいよね、絶対……。
……わたしの暮らしはこれからどうなるんだろう……。ちょっと不安になって来た……。
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