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1章
24話
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『良いですか、アクアさま。迷ったのなら、自分の信じる道を行くのです』
『自分の信じる道?』
『はい。この世には色々は人がいますから』
『種族もいっぱいだよね。コボルトの肉球触りたい』
『……なぜ、肉球限定……』
……ああ、夢だ。懐かしい、夢だ。神官長との会話。わたしが七歳、神官長が十七歳。前神官長が亡くなって、今の神官長になってから数週間後くらい……、だったかな? 記憶は曖昧だ。
ダラム王国の近くにあるコボルトの集落。そこのコボルトたちは人間たちに割とフレンドリーだった。たまたまダラム王国の近くに来ていたコボルトたちと話をしたのが始まり。別の種族を初めて見たから、つい興奮して色々尋ねてしまった。そしたら質問攻めに困ったコボルトから『ストップ! ストップ!!』と肉球を顔に押し付けられたことがある。
……その時の感触が忘れられずに、コボルトを見ると肉球を触りたくなる症候群になったのだ。結局触れたのはその一回きりだけど。あの弾力のある触り心地……もっと触れたくなっちゃう。そんなわたしに、神官長はちょっと呆れたような表情と、哀れむような視線を向けていた。
『……これから、あなたには色々なことが起こるでしょう。ですが、自分の信じる道を行きなさい。……きっとそれが、あなたにとって正しい道です』
『よくわからない……』
『今はまだ、わからなくて良いのです。そのうち理解することになるでしょう。……自分の道を行くのは、時に困難なことも待ち受けています。ですが、アクアさまなら最良の道を選べるでしょう』
――ふっと、意識が浮上した。……ゆっくりと目を開けると、見慣れない天井が見えた。あ~、良く寝た! って、もう暗くなってるし! ……わたし、一体どのくらい寝ていたんだ。とりあえず、ベッドから起き上がってぐーんと背伸びをした。
……まさか神官長の夢を見るとは……。ダラム王国を出てから慣れない環境で過ごしていたからか、一度も見たことなかったのに……。少しはこの国に慣れたってことなのかな?
そんなことを考えていると、喉が渇いていることに気付いた。ベッドから抜け出して、水をもらおうと廊下へ続く扉を開けると、ディーンとバーナードが居てびっくりした。何時間、ここにいたんだろう? と思わずふたりに視線を向けると、バーナードが声を掛けてきた。
「おう、お目覚めか」
「あ、え、と……うん。喉が乾いちゃって……」
「お腹は? 空いてない?」
「大丈夫~」
「じゃあ部屋で待っていて。今、飲み物を持ってくるから」
「ありがとう、水がいいな」
「わかった」
……魔法で水を出してもいいけど、コップはないように見えたし……ここはディーンに甘えちゃおう。部屋に戻ってディーンが戻って来るのを待つ。五分もしないうちに戻ってきて、部屋の明かりを点けると、わたしに水を渡してくれた。
「ありがとう」
「どういたしまして。少しはスッキリした?」
「まだ混乱しているけどね」
肩をすくめてから渡された水を口に運ぶ。冷たい水が喉を通り、全身に巡る感覚。喉が渇いていたから一気に飲み干した。お代わりとばかりに魔法で水を入れた。いやぁ、魔法を使えるって本当に便利だわ。
「……お前の魔法の使い方、平和だな……」
「……平和じゃない使い方はしたくないのよ」
魔法は戦争にも使われるからね。魔法を使う戦争をするようになってから、死者も増えた。回復魔法を使える人は少ないから、当然といえば当然の結果だ。それに、魔法で命を奪うのは実際に斬りつけるわけではないから、命を奪っている自覚がない人も多い。
「一応、わたしは聖女だったのだから」
「……自分で『一応』をつけるのか……」
「……ともあれ、そういう平和的な使い方は好ましいよ」
飲料水を出したり、髪を乾かしたり、たき火をしたり、空を飛んだり、小さいゴーレムを出したり……、いやうん、本当……どうしてこんなに土魔法だけ苦手なのか……。いや、小さいゴーレム可愛いよ、可愛いんだけどね……。
「浮遊魔法まで使えるからなぁ、アクアは」
「浮遊魔法も? ……どれだけの属性が使えるんだよ……」
驚いたように目を見開くバーナードに、わたしは自分が使える属性を指折り数えた。
「一通り? 四属性、光と闇、複合魔法」
「……は?」
「……え?」
ディーンとバーナードは思わず、というような声を上げてわたしをマジマジと見つめる。こてんと首を傾げると、バーナードが眉間に皺を刻み、
「……お前、本当に聖女だったんだよな……?」
確認するように尋ねられたから「そうだけど?」と答えた。すると、ディーンが眉を下げて微笑みながら、
「複合魔法って、魔術師でも難しいって聞いたことあるよ……?」
と、口にした。……わたしに魔法の使い方を教えてくれたの、神官長なんだけど……。……え、神官長って実は、魔術師でしたってことなのかな? ……え? いや、ダラム王国は小国だし、神官長が魔術師でもおかしくはない? ……あれ、だめだ、混乱してきた。
「……アクアが学んできたことが気になって来た」
「色々よ、いろいろ」
だろうね、とディーンが小さく肩をすくめる。バーナードは呆れたような視線をわたしに向けていた。……普段神殿でのみ生活していたのだから、他の人たちの『普通』なんてわかるわけないじゃない……。
『自分の信じる道?』
『はい。この世には色々は人がいますから』
『種族もいっぱいだよね。コボルトの肉球触りたい』
『……なぜ、肉球限定……』
……ああ、夢だ。懐かしい、夢だ。神官長との会話。わたしが七歳、神官長が十七歳。前神官長が亡くなって、今の神官長になってから数週間後くらい……、だったかな? 記憶は曖昧だ。
ダラム王国の近くにあるコボルトの集落。そこのコボルトたちは人間たちに割とフレンドリーだった。たまたまダラム王国の近くに来ていたコボルトたちと話をしたのが始まり。別の種族を初めて見たから、つい興奮して色々尋ねてしまった。そしたら質問攻めに困ったコボルトから『ストップ! ストップ!!』と肉球を顔に押し付けられたことがある。
……その時の感触が忘れられずに、コボルトを見ると肉球を触りたくなる症候群になったのだ。結局触れたのはその一回きりだけど。あの弾力のある触り心地……もっと触れたくなっちゃう。そんなわたしに、神官長はちょっと呆れたような表情と、哀れむような視線を向けていた。
『……これから、あなたには色々なことが起こるでしょう。ですが、自分の信じる道を行きなさい。……きっとそれが、あなたにとって正しい道です』
『よくわからない……』
『今はまだ、わからなくて良いのです。そのうち理解することになるでしょう。……自分の道を行くのは、時に困難なことも待ち受けています。ですが、アクアさまなら最良の道を選べるでしょう』
――ふっと、意識が浮上した。……ゆっくりと目を開けると、見慣れない天井が見えた。あ~、良く寝た! って、もう暗くなってるし! ……わたし、一体どのくらい寝ていたんだ。とりあえず、ベッドから起き上がってぐーんと背伸びをした。
……まさか神官長の夢を見るとは……。ダラム王国を出てから慣れない環境で過ごしていたからか、一度も見たことなかったのに……。少しはこの国に慣れたってことなのかな?
そんなことを考えていると、喉が渇いていることに気付いた。ベッドから抜け出して、水をもらおうと廊下へ続く扉を開けると、ディーンとバーナードが居てびっくりした。何時間、ここにいたんだろう? と思わずふたりに視線を向けると、バーナードが声を掛けてきた。
「おう、お目覚めか」
「あ、え、と……うん。喉が乾いちゃって……」
「お腹は? 空いてない?」
「大丈夫~」
「じゃあ部屋で待っていて。今、飲み物を持ってくるから」
「ありがとう、水がいいな」
「わかった」
……魔法で水を出してもいいけど、コップはないように見えたし……ここはディーンに甘えちゃおう。部屋に戻ってディーンが戻って来るのを待つ。五分もしないうちに戻ってきて、部屋の明かりを点けると、わたしに水を渡してくれた。
「ありがとう」
「どういたしまして。少しはスッキリした?」
「まだ混乱しているけどね」
肩をすくめてから渡された水を口に運ぶ。冷たい水が喉を通り、全身に巡る感覚。喉が渇いていたから一気に飲み干した。お代わりとばかりに魔法で水を入れた。いやぁ、魔法を使えるって本当に便利だわ。
「……お前の魔法の使い方、平和だな……」
「……平和じゃない使い方はしたくないのよ」
魔法は戦争にも使われるからね。魔法を使う戦争をするようになってから、死者も増えた。回復魔法を使える人は少ないから、当然といえば当然の結果だ。それに、魔法で命を奪うのは実際に斬りつけるわけではないから、命を奪っている自覚がない人も多い。
「一応、わたしは聖女だったのだから」
「……自分で『一応』をつけるのか……」
「……ともあれ、そういう平和的な使い方は好ましいよ」
飲料水を出したり、髪を乾かしたり、たき火をしたり、空を飛んだり、小さいゴーレムを出したり……、いやうん、本当……どうしてこんなに土魔法だけ苦手なのか……。いや、小さいゴーレム可愛いよ、可愛いんだけどね……。
「浮遊魔法まで使えるからなぁ、アクアは」
「浮遊魔法も? ……どれだけの属性が使えるんだよ……」
驚いたように目を見開くバーナードに、わたしは自分が使える属性を指折り数えた。
「一通り? 四属性、光と闇、複合魔法」
「……は?」
「……え?」
ディーンとバーナードは思わず、というような声を上げてわたしをマジマジと見つめる。こてんと首を傾げると、バーナードが眉間に皺を刻み、
「……お前、本当に聖女だったんだよな……?」
確認するように尋ねられたから「そうだけど?」と答えた。すると、ディーンが眉を下げて微笑みながら、
「複合魔法って、魔術師でも難しいって聞いたことあるよ……?」
と、口にした。……わたしに魔法の使い方を教えてくれたの、神官長なんだけど……。……え、神官長って実は、魔術師でしたってことなのかな? ……え? いや、ダラム王国は小国だし、神官長が魔術師でもおかしくはない? ……あれ、だめだ、混乱してきた。
「……アクアが学んできたことが気になって来た」
「色々よ、いろいろ」
だろうね、とディーンが小さく肩をすくめる。バーナードは呆れたような視線をわたしに向けていた。……普段神殿でのみ生活していたのだから、他の人たちの『普通』なんてわかるわけないじゃない……。
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