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1章
39話
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ともあれ、ダラム王国は危機的状況を脱したらしい。わたしが使った神力のおかげで、魔物も近付けないようだ。良かった、と思うべきなのか……うーん。考え込んでいると、ルーカス陛下が立ち上がる音が聞こえて目を開ける。
「今日はゆっくり休み、明日、ダラム王国のことについて話し合うぞ」
「あ、はい。わかりました……」
ルーカス陛下はわたしの頭をもう一度くしゃりと撫でてから出て行った。……人に頭を撫でられるのって、なんだか不思議な感じ。ルーカス陛下に撫でられるのは、あまり嫌じゃないかもしれない。
……明日、か。じゃあそれまで、もうちょっと休もう。神力を使いすぎて、ちょっと……いや、かなり疲れているし。
ぱたりとベッドに横になって目を閉じると、あっという間に眠りに落ちた。
☆☆☆
ゆっくりと瞼を上げた。多分、一日は経過したよね……。起き上がって伸びをする。そして、カーテンを開けるためにベッドから降りる。ぺたぺたと足音を立ててカーテンの元まで向かい、しゃっと音を立ててカーテンを開けると、ちょうど陽が昇っていくところだった。……相変わらず早起きをしてしまったみたいだ。
「アクアさま、起きていらっしゃいますか?」
そしてものすっごくタイミングよく扉の外からノックの音の後、声を掛けられた。その声はわたしを着替えさせてくれたメイドの声だ。
「起きてるよー!」
言葉を発すると、メイドがトレイを持って部屋に入って来た。トレイの上にはホカホカと湯気が……。ごくり、と唾を飲み込みじーっとトレイを見ていると、くすりと笑う気配がした。
「お腹が空いたでしょう? これを食べて、その後に身支度をしましょう」
そう言ってテーブルの上にトレイを置く。わたしは「はーい」と返事をして、椅子に座った。スープとパンを食べると、お風呂に連れられてまた全身ピカピカにされてから、ドレスへと着替えさせられた。コルセットきっつい! なんでドレス!? 流されるままにドレスに着替えてハイヒールを履かせられ……、一体どこに向かえば良いのか……。
「あの……」
「アクア、今良いかい?」
トントントン、と扉をノックする音に続いて、ディーンの声が聞こえた。「どうぞ」と答えると、正装したディーンとバーナードが入って来た。
「……このドレスなら、髪の毛結い上げたほうが良いのでは?」
「ええ、今からバッチリやります。メイクも含めて」
がしっとわたしの肩を掴んでドレッサーの前に座らせると、手慣れた様子で髪をまとめ上げ、メイクも器用にしてくれた。完璧フル装備。……一体、これからなにが起こるというのか……。
「それじゃあ、行こうか」
「どこに?」
「それはもちろん――……」
ディーンは一度言葉を切って、バーナードと視線を合わせた。そしてふたりは同時にこう口にした。
「ダラム王国の王族たちに会いに」
……え? わたしが目を瞬かせている間に、ディーンとバーナードがわたしの手を取って歩き出す。…………ダラム王国の王族に会うために、この格好? と目を丸くすると、そのまま連れていかれた。
ダラム王国の王族たちは一室に押し込められているらしく、そこに向かっているみたいだ。部屋の扉の前にはルーカス陛下が待機していた。そして――わたしに気付くと、目を上げてじっとこちらを見てから、ディーンとバーナードに視線を向ける。
すっと彼らがわたしから離れ、代わりにルーカス陛下が手を差し伸べる。困惑して、ディーンたちに視線を向けると、彼らは小さくうなずいた。……そっと、ルーカス陛下の手を取った。
ディーンとバーナードが、扉を開ける。一気に視線がこちらに向けられるのを感じながら、ルーカス陛下が歩くのに合わせて、わたしも足を動かした。
「――アクア……」
「……なぜ、そんな恰好をしている!」
なぜといわれても……。わたしの名前を呼んだのはザカライア陛下で、問いかけて来たのがオーレリアン殿下だ。彼が見つけた聖女という女性も縄で縛られていた。男女共にこの部屋に押し込めていたようで、縄で縛られている王族と貴族たちに、わたしはルーカス陛下に視線を向けた。
――神殿の人たちがいないのは、なぜだろう。
「……アクア、十年前のことを思い出せるか?」
「え、いえ……。ダラム王国の神殿前で拾われた、くらいしか……」
「……そうか。……ならば、こいつらの処分はまた後で決めよう」
処分、という言葉を聞いて、貴族たちが震え上がった。わたしが一生思い出さなかったらどうするつもりなんだろう……?
「あの、ルーカス陛下。ダラム王国はどうなったのですか?」
「今はアルストル帝国に下っている。信頼できる者たちを派遣させ、鉱脈を調べさせているぞ」
……戦争をすることなく、ルーカス陛下はダラム王国を手にしたわけだ。人々の命が散ることなく国を手に入れたのは、果たして……。ううん、これも神の思し召しかもしれない。
「ザカライア陛下、オーレリアン殿下。……とりあえず、ぶん殴っていいですか?」
平民とコボルトたちを守ろうとしなかった人たちに対して、わたしがそう声を掛けると、ふたりとも「ひぃっ!」と短い悲鳴を上げた。……わたしの後ろに、そんなに怒りのオーラが見えたのだろうか……?
「今日はゆっくり休み、明日、ダラム王国のことについて話し合うぞ」
「あ、はい。わかりました……」
ルーカス陛下はわたしの頭をもう一度くしゃりと撫でてから出て行った。……人に頭を撫でられるのって、なんだか不思議な感じ。ルーカス陛下に撫でられるのは、あまり嫌じゃないかもしれない。
……明日、か。じゃあそれまで、もうちょっと休もう。神力を使いすぎて、ちょっと……いや、かなり疲れているし。
ぱたりとベッドに横になって目を閉じると、あっという間に眠りに落ちた。
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ゆっくりと瞼を上げた。多分、一日は経過したよね……。起き上がって伸びをする。そして、カーテンを開けるためにベッドから降りる。ぺたぺたと足音を立ててカーテンの元まで向かい、しゃっと音を立ててカーテンを開けると、ちょうど陽が昇っていくところだった。……相変わらず早起きをしてしまったみたいだ。
「アクアさま、起きていらっしゃいますか?」
そしてものすっごくタイミングよく扉の外からノックの音の後、声を掛けられた。その声はわたしを着替えさせてくれたメイドの声だ。
「起きてるよー!」
言葉を発すると、メイドがトレイを持って部屋に入って来た。トレイの上にはホカホカと湯気が……。ごくり、と唾を飲み込みじーっとトレイを見ていると、くすりと笑う気配がした。
「お腹が空いたでしょう? これを食べて、その後に身支度をしましょう」
そう言ってテーブルの上にトレイを置く。わたしは「はーい」と返事をして、椅子に座った。スープとパンを食べると、お風呂に連れられてまた全身ピカピカにされてから、ドレスへと着替えさせられた。コルセットきっつい! なんでドレス!? 流されるままにドレスに着替えてハイヒールを履かせられ……、一体どこに向かえば良いのか……。
「あの……」
「アクア、今良いかい?」
トントントン、と扉をノックする音に続いて、ディーンの声が聞こえた。「どうぞ」と答えると、正装したディーンとバーナードが入って来た。
「……このドレスなら、髪の毛結い上げたほうが良いのでは?」
「ええ、今からバッチリやります。メイクも含めて」
がしっとわたしの肩を掴んでドレッサーの前に座らせると、手慣れた様子で髪をまとめ上げ、メイクも器用にしてくれた。完璧フル装備。……一体、これからなにが起こるというのか……。
「それじゃあ、行こうか」
「どこに?」
「それはもちろん――……」
ディーンは一度言葉を切って、バーナードと視線を合わせた。そしてふたりは同時にこう口にした。
「ダラム王国の王族たちに会いに」
……え? わたしが目を瞬かせている間に、ディーンとバーナードがわたしの手を取って歩き出す。…………ダラム王国の王族に会うために、この格好? と目を丸くすると、そのまま連れていかれた。
ダラム王国の王族たちは一室に押し込められているらしく、そこに向かっているみたいだ。部屋の扉の前にはルーカス陛下が待機していた。そして――わたしに気付くと、目を上げてじっとこちらを見てから、ディーンとバーナードに視線を向ける。
すっと彼らがわたしから離れ、代わりにルーカス陛下が手を差し伸べる。困惑して、ディーンたちに視線を向けると、彼らは小さくうなずいた。……そっと、ルーカス陛下の手を取った。
ディーンとバーナードが、扉を開ける。一気に視線がこちらに向けられるのを感じながら、ルーカス陛下が歩くのに合わせて、わたしも足を動かした。
「――アクア……」
「……なぜ、そんな恰好をしている!」
なぜといわれても……。わたしの名前を呼んだのはザカライア陛下で、問いかけて来たのがオーレリアン殿下だ。彼が見つけた聖女という女性も縄で縛られていた。男女共にこの部屋に押し込めていたようで、縄で縛られている王族と貴族たちに、わたしはルーカス陛下に視線を向けた。
――神殿の人たちがいないのは、なぜだろう。
「……アクア、十年前のことを思い出せるか?」
「え、いえ……。ダラム王国の神殿前で拾われた、くらいしか……」
「……そうか。……ならば、こいつらの処分はまた後で決めよう」
処分、という言葉を聞いて、貴族たちが震え上がった。わたしが一生思い出さなかったらどうするつもりなんだろう……?
「あの、ルーカス陛下。ダラム王国はどうなったのですか?」
「今はアルストル帝国に下っている。信頼できる者たちを派遣させ、鉱脈を調べさせているぞ」
……戦争をすることなく、ルーカス陛下はダラム王国を手にしたわけだ。人々の命が散ることなく国を手に入れたのは、果たして……。ううん、これも神の思し召しかもしれない。
「ザカライア陛下、オーレリアン殿下。……とりあえず、ぶん殴っていいですか?」
平民とコボルトたちを守ろうとしなかった人たちに対して、わたしがそう声を掛けると、ふたりとも「ひぃっ!」と短い悲鳴を上げた。……わたしの後ろに、そんなに怒りのオーラが見えたのだろうか……?
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