41 / 153
1章
41話
しおりを挟む
「……労働のことは追々決めていく。逃げ出そうとしたものはその場で処罰する。アルストル帝国で一番過酷な場所へ派遣してやるから、楽しみにしていろ」
楽しそうにそういって、ルーカス陛下はわたしを連れて部屋から出て行った。部屋からはよくわからない悲鳴と泣き声が聞こえて来た。パタン、と扉が閉まると聞こえなくなったけど……。ディーンとバーナードも出て来た。そして、近くにいた騎士たちが代わりに部屋に入る。
「命を絶たれるのも面倒だ」
……どうやらその騎士たちは見張りのようだ。
「……あの、ルーカス陛下。……神殿の人たちは、どちらに?」
「ダラム王国の神殿に残っている。魔法陣を綺麗にしてから、今後のことを話し合うと言っていた」
「話し合う……」
どうやら神殿の人たちとは平和的に? 話し合うようだ。
……それにしても、わたしは一体どこに向かっているのだろう。ルーカス陛下と手を繋いだままだから、わたしのことを知らない人たちが怪訝そうな表情でこっちを見ているんだけど……。
少しの間歩いて、ルーカス陛下は部屋に入っていった。手を繋いでいるわたしも、強制的に入ることになる。ディーンとバーナードも一緒に入る。……えーっと。どうすれば……? 困ったな、と心の中で呟き、助けを求めるようにディーンとバーナードに視線を向けた。
「とりあえず、そこのソファに座れ」
「あ、はい」
ソファに座ると、わたしの後ろにディーンたちが陣取った。……これからなにが始まるというのか……。ドキドキしていると、ノックの音が聞こえ、ルーカス陛下が「入れ」と口にする。すると、老人たちがぞろぞろと入って来た。
あ、わたしたちがダラム王国に行く時に会った老人たちだ! 老人たちはわたしを見て、じろっと睨んできた。……まぁ、うん。そうなるよね……。
でも、それをルーカス陛下が咎めるように睨んだ。バチバチと火花を放っているような……。とりあえず気のせいだと思いたい。
「……陛下、なぜこの娘がここに……?」
それわたしも知りたいわ。老人たちもソファに座り、ルーカス陛下がわたしの隣に座る。
「私とアクアの顔を見て、なにを感じないのか?」
呆れたような言葉を投げつける。老人たちはじぃっとわたしとルーカス陛下、そしてディーンを見る。……なんでディーンも?
「……ステラさまに似ている……?」
「ルーカス陛下とディーン卿にも似ているぞ」
「……他人の空似というやつか?」
ひそひそと話し合う声が聞こえる。……聞こえるように話さなくても……。
そういえば、この人たちは……一体どんな役職を持っている人たちなんだろう? あの時にはいなかったよね、わたしとルーカス陛下が会った時。
「……アクアは大聖女ステラの孫だよ」
助け舟を出すようにディーンが老人たちに言葉を掛ける。その言葉を聞いて、老人たちの動きが止まり、ギギギ、なんて音が聞こえてきそうなくらいの動きでわたしへ顔を向けた。ホラーみたいで怖いんですけど……。
「ステラさまの……?」
「アクアの髪色はアルストル帝国の王族と同じ水色に近い銀色だ。瞳の色だって同じだろう」
強調するようにトントンと自分の目元を叩くルーカス陛下。……まぁ、確かにルーカス陛下の髪も水色に近い銀色よね。瞳の色は……気にしたことがなかったから、思わず凝視してしまった。色の濃さの違いはある……かな?
わたしのほうが濃い気がする。
「……ならば、十年前の……?」
「生きていたのか……」
「……ダラム王国の王族や貴族たちもこの城に置いている。十年前の事件のこと、改めて調べ上げるつもりだ」
わたしが攫われたという十年前の事件。……なんだろう、心がぎゅっと痛くなったような気がして、わたしは自分の胸元に手を置いた。
「それと、ダラム王国は我が国に下った。ダラム王国の貴族たちはオールトン地方に向かわせ、労働をさせよ」
……オールトン地方ってどこだ……。アルストル帝国って広すぎるんだよね……。小国のダラム王国でさえ、街や村のすべて、視察に行けなかったし……。……いや、視察ってわたしの仕事ではなかったよね? 本来なら領地を治めている貴族の役目だよね?
もう聖女の仕事がどこまでだったのかもわからないわ……。
「じゅ、十年前の事件のことを調べて、どうするおつもりなのですか」
「私はただ、真実を知りたいだけだ。なぜアクアが攫われることになったのか、そして……その日、都合よく国境を越えたダラム王国の者たちがいたのか、な」
ルーカス陛下の話を聞いて、確かに、と心の中で呟いた。あまりにもタイミングが良すぎる。わたしが本当にその事件の日に攫われたのなら、誰かがダラム王国に密告していたという可能性もあるわよね……。正直、全然覚えてはいないのだけど。
「――王族を敵に回しているのだ、それなりの覚悟はあるだろう?」
にっと笑うルーカス陛下の背後に、怒りのオーラを感じた……。……ダラム王国と、誰かが繋がっていたとして、どうしてそんなことをしたのか……。そこら辺もわかるのかな?
怯えるように身をすくませる老人たちを眺めて、わたしは老人たちとルーカス陛下に視線を向けて、これからのことを尋ねた。わたしの扱い、どうなるのか聞いていなかったし。とりあえず、わたしの意志は尊重してくれるみたいで、わたしが望まない限り王族の血を流していることは伏せてくれるらしい。
ただ、この国の王族=水色に近い銀髪という認識があるらしく、バレるのは時間の問題とのこと。
……わたしにどうしろというのか……。ゆっくり息を吐くと、わたしの顔色を窺うように老人たちがじーっと見ていた。……見世物じゃないのよ。という気持ちを込めて睨んでみると、さっと顔を背けられた。……いきなり王族の血を引く者が現れたのだから、半信半疑になる気持ちはわからなくはないけどね。……むしろ、わたしが否定したいかもしれない。
楽しそうにそういって、ルーカス陛下はわたしを連れて部屋から出て行った。部屋からはよくわからない悲鳴と泣き声が聞こえて来た。パタン、と扉が閉まると聞こえなくなったけど……。ディーンとバーナードも出て来た。そして、近くにいた騎士たちが代わりに部屋に入る。
「命を絶たれるのも面倒だ」
……どうやらその騎士たちは見張りのようだ。
「……あの、ルーカス陛下。……神殿の人たちは、どちらに?」
「ダラム王国の神殿に残っている。魔法陣を綺麗にしてから、今後のことを話し合うと言っていた」
「話し合う……」
どうやら神殿の人たちとは平和的に? 話し合うようだ。
……それにしても、わたしは一体どこに向かっているのだろう。ルーカス陛下と手を繋いだままだから、わたしのことを知らない人たちが怪訝そうな表情でこっちを見ているんだけど……。
少しの間歩いて、ルーカス陛下は部屋に入っていった。手を繋いでいるわたしも、強制的に入ることになる。ディーンとバーナードも一緒に入る。……えーっと。どうすれば……? 困ったな、と心の中で呟き、助けを求めるようにディーンとバーナードに視線を向けた。
「とりあえず、そこのソファに座れ」
「あ、はい」
ソファに座ると、わたしの後ろにディーンたちが陣取った。……これからなにが始まるというのか……。ドキドキしていると、ノックの音が聞こえ、ルーカス陛下が「入れ」と口にする。すると、老人たちがぞろぞろと入って来た。
あ、わたしたちがダラム王国に行く時に会った老人たちだ! 老人たちはわたしを見て、じろっと睨んできた。……まぁ、うん。そうなるよね……。
でも、それをルーカス陛下が咎めるように睨んだ。バチバチと火花を放っているような……。とりあえず気のせいだと思いたい。
「……陛下、なぜこの娘がここに……?」
それわたしも知りたいわ。老人たちもソファに座り、ルーカス陛下がわたしの隣に座る。
「私とアクアの顔を見て、なにを感じないのか?」
呆れたような言葉を投げつける。老人たちはじぃっとわたしとルーカス陛下、そしてディーンを見る。……なんでディーンも?
「……ステラさまに似ている……?」
「ルーカス陛下とディーン卿にも似ているぞ」
「……他人の空似というやつか?」
ひそひそと話し合う声が聞こえる。……聞こえるように話さなくても……。
そういえば、この人たちは……一体どんな役職を持っている人たちなんだろう? あの時にはいなかったよね、わたしとルーカス陛下が会った時。
「……アクアは大聖女ステラの孫だよ」
助け舟を出すようにディーンが老人たちに言葉を掛ける。その言葉を聞いて、老人たちの動きが止まり、ギギギ、なんて音が聞こえてきそうなくらいの動きでわたしへ顔を向けた。ホラーみたいで怖いんですけど……。
「ステラさまの……?」
「アクアの髪色はアルストル帝国の王族と同じ水色に近い銀色だ。瞳の色だって同じだろう」
強調するようにトントンと自分の目元を叩くルーカス陛下。……まぁ、確かにルーカス陛下の髪も水色に近い銀色よね。瞳の色は……気にしたことがなかったから、思わず凝視してしまった。色の濃さの違いはある……かな?
わたしのほうが濃い気がする。
「……ならば、十年前の……?」
「生きていたのか……」
「……ダラム王国の王族や貴族たちもこの城に置いている。十年前の事件のこと、改めて調べ上げるつもりだ」
わたしが攫われたという十年前の事件。……なんだろう、心がぎゅっと痛くなったような気がして、わたしは自分の胸元に手を置いた。
「それと、ダラム王国は我が国に下った。ダラム王国の貴族たちはオールトン地方に向かわせ、労働をさせよ」
……オールトン地方ってどこだ……。アルストル帝国って広すぎるんだよね……。小国のダラム王国でさえ、街や村のすべて、視察に行けなかったし……。……いや、視察ってわたしの仕事ではなかったよね? 本来なら領地を治めている貴族の役目だよね?
もう聖女の仕事がどこまでだったのかもわからないわ……。
「じゅ、十年前の事件のことを調べて、どうするおつもりなのですか」
「私はただ、真実を知りたいだけだ。なぜアクアが攫われることになったのか、そして……その日、都合よく国境を越えたダラム王国の者たちがいたのか、な」
ルーカス陛下の話を聞いて、確かに、と心の中で呟いた。あまりにもタイミングが良すぎる。わたしが本当にその事件の日に攫われたのなら、誰かがダラム王国に密告していたという可能性もあるわよね……。正直、全然覚えてはいないのだけど。
「――王族を敵に回しているのだ、それなりの覚悟はあるだろう?」
にっと笑うルーカス陛下の背後に、怒りのオーラを感じた……。……ダラム王国と、誰かが繋がっていたとして、どうしてそんなことをしたのか……。そこら辺もわかるのかな?
怯えるように身をすくませる老人たちを眺めて、わたしは老人たちとルーカス陛下に視線を向けて、これからのことを尋ねた。わたしの扱い、どうなるのか聞いていなかったし。とりあえず、わたしの意志は尊重してくれるみたいで、わたしが望まない限り王族の血を流していることは伏せてくれるらしい。
ただ、この国の王族=水色に近い銀髪という認識があるらしく、バレるのは時間の問題とのこと。
……わたしにどうしろというのか……。ゆっくり息を吐くと、わたしの顔色を窺うように老人たちがじーっと見ていた。……見世物じゃないのよ。という気持ちを込めて睨んでみると、さっと顔を背けられた。……いきなり王族の血を引く者が現れたのだから、半信半疑になる気持ちはわからなくはないけどね。……むしろ、わたしが否定したいかもしれない。
17
あなたにおすすめの小説
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる