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1章
46話
「とりあえず、神殿の人たちには新たな領主に仕えてもらう。元々捨てた命だ、こちらが拾っても文句はあるまい」
「……そうなります?」
「なる。私が言っているのだから」
にやりと口角を上げるルーカス陛下に、わたしと神官長は顔を見合わせた。それから、降参ですとばかりに神官長が両手を上げる。
「ええと、この後どうするんですか……?」
「……その前に聞きたいことがある。神力を計測する道具を、持っているか?」
「ああ……。ええ、あります。少々お待ちください」
すっと立ち上がって礼拝堂から出て行く神官長。わたしがおろおろとしている間に、扉は閉まり……残されたのはわたしとルーカス陛下だけだ。
「……神官長の国って……?」
わたしが尋ねてもいいものか悩んだけど、気になって結局聞いてしまった。ルーカス陛下は椅子に深く座り直し、足を組む。……礼拝堂の中でこんな座り方する人、初めて見た。
「ダラム王国から北東に、ルガラントという国があった。最初の国王がとても知恵者で、国も安定して良い国だった……らしいが、まぁ、段々と欲深いものが増えて、自分たちの財産をよそに渡すのはイヤだと近親婚を繰り返した結果、身体が弱い子が生まれ、さらに残忍な性格の子も増え、悪政を敷くようになっていった。……が、近親婚から逃れた王族の血を持つ者が、他国の者と契るようになり、その時の子が『ヒューイ』だと言われている。あの国で割とまともな神経を持っていたヒューイは、このままでは国が滅びると考えて他国を招いた結果がコレだそうだ。聞いた話では」
「……他国に攻められて逃げて来たって、全部自演じゃないですか……!」
「それなりの代償は払っているがな。ヒューイを護衛している者たち以外の身内は、全滅したと聞いたことがあるが……」
「……なんでそんなに詳しいのですか……」
「友人が現国王だからな。アルストル帝国と手を結んでいる間柄だ」
ふっと自慢するように笑うルーカス陛下に、そういうものなのか……? と首を傾げる。わたしの友人……といえば、やっぱりディーンかな。……いや、そうじゃなくて……。……あれ、待って? 十歳の頃って神官長いっていたよね。神官長が十歳の頃、陛下の年齢は……ええと、神官長は二十五歳。ルーカス陛下は二十歳。あ、わたしたち五歳ずつ離れていたのね。今更なことに気付いて、頬を掻く。
……そうじゃなくて! 神官長が十歳の頃って、十五年前のことで……ルーカス陛下五歳じゃん……。わたしはぎりぎり生まれているか、いないかってところ?
「ルーカス陛下の友人って、何歳の方なのですか……?」
「確か三十代くらいだったはず……。なぜ、そんなことを気にするのだ?」
「……どういう交友関係だったのか気になって……?」
疑問系になったけれど……そう答えると、ちょっとだけルーカス陛下が嬉しそうに笑った。なぜそこで嬉しそうになるのかがわからず、思わずマジマジとルーカス陛下を眺めてしまった。いやぁ、イケメン。この人と血が繋がっているなんて、やっぱりまだ信じられないわ……。
「興味を持ってくれるのは嬉しいな。だが、今は、確かめてみないといけないことがある」
「確かめてみないといけないこと……?」
そのタイミングで、神官長が戻って来た。手に持っているのは……見たことのない物で……。
「なんですか、これ?」
「アクアが誘拐された原因の道具だ」
「……はい?」
こんな小さい道具で誘拐されたのか……ダラム王国、案外すごい? と思考を巡らせていると、神官長が呆れたように息を吐いて、それからわたしへとその道具を向けた。……なにしているんだろう?
「……このように、神力が強ければ強いほど、青くなる仕組みです」
「……見事に青だな……」
「そして、そのままでいると……」
よくわからないものをわたしに向けたまま動かない神官長。そのうちにピーピーと小さい音が鳴った。
「こうなると計測不能となります」
「……なるほど、アクアの神力は計測不能か」
「そうなりますね。ちなみに私はこのくらいです。水色。アクアさまの神力にはとても届きません。届くとしたら……大聖女ステラさまくらいかと」
「……わかっていて言っているな?」
「アクアさまの髪色から推測できますからね。ですが、この神力を求めてしまったのは我々神殿のものも同じ。おかげでダラム王国では十年ほど安定して結界を維持出来ましたから」
そういわれて、嬉しいような、嬉しくないような……なんとも複雑な気持ちになった。だって、わたしがもしこの国に攫われてなかったら結界どうなっていたんだろう……?
「これの在庫は?」
「城にあったはずですが……あのくらい派手に壊されていますから、在庫も全部だめになったのでは?」
「いや、それでいい。これは私が預かっても?」
「構いません。我々には必要のないものですから」
すっとルーカス陛下の手に道具を渡す神官長。……お城、一体どんな壊され方をしたのかが気になる……。
「……あの、ルーカス陛下。神官長たちはこの国で生きていくってことで良いんですよね?」
「そうなるな」
あからさまにホッとしたわたしに、神官長が眉を下げる。
「……ってことは、神官長……本当に国と命運を共にするんですね」
口角を上げてそういうと、神官長は目を瞬かせて、それから肩をすくめた。
「……全く、自分を利用していた相手に、そこまで寛大にならなくても良いものを」
「寛大じゃなくてワガママなんですー! わたしは……出来るだけ、死んで欲しくないから」
「アクアさまらしいですね」
神官長の言葉は、とても優しい響きを持っていて……、さっきの複雑な気持ちが洗い流されていくようだった。
「……そうなります?」
「なる。私が言っているのだから」
にやりと口角を上げるルーカス陛下に、わたしと神官長は顔を見合わせた。それから、降参ですとばかりに神官長が両手を上げる。
「ええと、この後どうするんですか……?」
「……その前に聞きたいことがある。神力を計測する道具を、持っているか?」
「ああ……。ええ、あります。少々お待ちください」
すっと立ち上がって礼拝堂から出て行く神官長。わたしがおろおろとしている間に、扉は閉まり……残されたのはわたしとルーカス陛下だけだ。
「……神官長の国って……?」
わたしが尋ねてもいいものか悩んだけど、気になって結局聞いてしまった。ルーカス陛下は椅子に深く座り直し、足を組む。……礼拝堂の中でこんな座り方する人、初めて見た。
「ダラム王国から北東に、ルガラントという国があった。最初の国王がとても知恵者で、国も安定して良い国だった……らしいが、まぁ、段々と欲深いものが増えて、自分たちの財産をよそに渡すのはイヤだと近親婚を繰り返した結果、身体が弱い子が生まれ、さらに残忍な性格の子も増え、悪政を敷くようになっていった。……が、近親婚から逃れた王族の血を持つ者が、他国の者と契るようになり、その時の子が『ヒューイ』だと言われている。あの国で割とまともな神経を持っていたヒューイは、このままでは国が滅びると考えて他国を招いた結果がコレだそうだ。聞いた話では」
「……他国に攻められて逃げて来たって、全部自演じゃないですか……!」
「それなりの代償は払っているがな。ヒューイを護衛している者たち以外の身内は、全滅したと聞いたことがあるが……」
「……なんでそんなに詳しいのですか……」
「友人が現国王だからな。アルストル帝国と手を結んでいる間柄だ」
ふっと自慢するように笑うルーカス陛下に、そういうものなのか……? と首を傾げる。わたしの友人……といえば、やっぱりディーンかな。……いや、そうじゃなくて……。……あれ、待って? 十歳の頃って神官長いっていたよね。神官長が十歳の頃、陛下の年齢は……ええと、神官長は二十五歳。ルーカス陛下は二十歳。あ、わたしたち五歳ずつ離れていたのね。今更なことに気付いて、頬を掻く。
……そうじゃなくて! 神官長が十歳の頃って、十五年前のことで……ルーカス陛下五歳じゃん……。わたしはぎりぎり生まれているか、いないかってところ?
「ルーカス陛下の友人って、何歳の方なのですか……?」
「確か三十代くらいだったはず……。なぜ、そんなことを気にするのだ?」
「……どういう交友関係だったのか気になって……?」
疑問系になったけれど……そう答えると、ちょっとだけルーカス陛下が嬉しそうに笑った。なぜそこで嬉しそうになるのかがわからず、思わずマジマジとルーカス陛下を眺めてしまった。いやぁ、イケメン。この人と血が繋がっているなんて、やっぱりまだ信じられないわ……。
「興味を持ってくれるのは嬉しいな。だが、今は、確かめてみないといけないことがある」
「確かめてみないといけないこと……?」
そのタイミングで、神官長が戻って来た。手に持っているのは……見たことのない物で……。
「なんですか、これ?」
「アクアが誘拐された原因の道具だ」
「……はい?」
こんな小さい道具で誘拐されたのか……ダラム王国、案外すごい? と思考を巡らせていると、神官長が呆れたように息を吐いて、それからわたしへとその道具を向けた。……なにしているんだろう?
「……このように、神力が強ければ強いほど、青くなる仕組みです」
「……見事に青だな……」
「そして、そのままでいると……」
よくわからないものをわたしに向けたまま動かない神官長。そのうちにピーピーと小さい音が鳴った。
「こうなると計測不能となります」
「……なるほど、アクアの神力は計測不能か」
「そうなりますね。ちなみに私はこのくらいです。水色。アクアさまの神力にはとても届きません。届くとしたら……大聖女ステラさまくらいかと」
「……わかっていて言っているな?」
「アクアさまの髪色から推測できますからね。ですが、この神力を求めてしまったのは我々神殿のものも同じ。おかげでダラム王国では十年ほど安定して結界を維持出来ましたから」
そういわれて、嬉しいような、嬉しくないような……なんとも複雑な気持ちになった。だって、わたしがもしこの国に攫われてなかったら結界どうなっていたんだろう……?
「これの在庫は?」
「城にあったはずですが……あのくらい派手に壊されていますから、在庫も全部だめになったのでは?」
「いや、それでいい。これは私が預かっても?」
「構いません。我々には必要のないものですから」
すっとルーカス陛下の手に道具を渡す神官長。……お城、一体どんな壊され方をしたのかが気になる……。
「……あの、ルーカス陛下。神官長たちはこの国で生きていくってことで良いんですよね?」
「そうなるな」
あからさまにホッとしたわたしに、神官長が眉を下げる。
「……ってことは、神官長……本当に国と命運を共にするんですね」
口角を上げてそういうと、神官長は目を瞬かせて、それから肩をすくめた。
「……全く、自分を利用していた相手に、そこまで寛大にならなくても良いものを」
「寛大じゃなくてワガママなんですー! わたしは……出来るだけ、死んで欲しくないから」
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神官長の言葉は、とても優しい響きを持っていて……、さっきの複雑な気持ちが洗い流されていくようだった。
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