恩を返して欲しいのはこっちのほうだ!

秋月一花

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1章

50話

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 さて、そろそろお祈りをやめてみんなを迎える準備でもしようかな、と思って立ち上がろうとした瞬間、バンッと礼拝堂の扉が乱暴に開けられた。びくっと肩が震えたわたし、悪くない。後ろを振り返ると、ぜぃぜぃと息を切らしているふたりの男性――うん、バーナードとディーンだ。彼らはわたしの元へ早足で近付いて来た。

「お・ま・え・なぁ……っ!」
「頼む、から……、ひとりで、行動しないで……っ」

 息を切らしながらそういうふたりに、目を瞬かせる。どのくらいお祈りに時間を捧げていたのかわからないけれど、まだ寝ている時間だったのでは……?

「……えーっと……、ごめん?」
「なんで疑問系!」
「もー……」

 困ったように眉を下げるディーンに、眉を吊り上げるバーナード。対照的なふたりだよなぁ……っと、そうじゃなくて。

「もしかして探しに来てくれたの?」
「あのな、ここは神殿じゃないんだよ……。王城からアクアが消えたと知ったら、陛下が全力で探すことを頭の隅に置いておけ!」

 怒られた。わたしが目を瞬かせると、「返事!」と強い口調でいわれたので、「はい」と素直に答えた。それを聞いて、「よし」とバーナードがうなずく。わたしたちのやり取りに、ディーンが堪えきれないとばかりにお腹を抱えて笑いだした。

「心配したって素直に言えばいいのに」
「はぁ!?」
「ほほう、バーナードって結構心配性なのね。……せっかく来たんだから、お祈りしておきなよ」

 そういってふたりにお祈りを勧めた。ふたりは顔を見合わせて、それから目を閉じて胸元で手を組む。……ぽわぽわとふたりに降り注ぐ、柔らかな光を感じてわたしは小さく肩をすくめた。ここでお祈りするたびに祝福を受けていたら、そのうち彼らにも神力しんりょくが宿りそう。そもそも、神力が宿っているかどうかって、判断基準がよくわからない。浄化出来れば持っているとか……? ……わたし、よくこれで聖女出来ていたな……。
 ダラム王国の神殿で聖女として育てられていたから、自分に神力があることは知っていた。そのうちに、魔法の使い方を神官長に習うようになり、他の魔法の適正もそこそこあることを知った。……土魔法は苦手だけど。
 あ、土魔法で思い出した。お祈りを終えたディーンとバーナードに声を掛ける。

「明日か明後日にはコボルトたちに会いに行きたいんだけど……」
「コボルトたちに?」
「うん、ゴーレムあげるって約束したもの。約束は果たさないとね!」

 わたしが笑顔でそう伝えると、ディーンは「陛下に許可を取ってからね」とウインクをした。イケメンのウインクはとてもグッとくるものがある……と思う。バーナードが思いっきり長くため息を吐いていたことには触れないでおこう。

「あ、そうだ。みんなの準備をしないとね」
「……いや、それは大丈夫。アクアはただ、黙って来た人たちを受け入れたら良いよ」
「そうなの?」
「ここの主人はお前だからな」

 そういうものなのか……と納得したような、しないような表情を浮かべるわたしに、ディーンがぽんと肩を叩く。

「陛下がね、ここではアクアの好きにしていいって言っていたよ」
「どういうこと?」
「この場所にいるのは、アクアの望みを叶える人たちってこと」

 ディーンはわたしの頭に手を置くと、くしゃりと撫でた。そしてまたウインクした。……ディーンって絶対自分の顔面の偏差値をよく知って利用しているよね、と心の中で呟く。残念ながらタイプではないけど、格好いい人たちを見るのは目の保養。昔、可愛い女の子を見てそんなことをいっていた神官がいて、神官長に首根っこ掴まれて説教されていたっけ。曰く、わたしに変な言葉を教えるな、と叱られたらしい。あとであの言葉は忘れるようにとっていわれたけど、無理無理。
 しっかりと頭に刻み込まれちゃったのよ。わたしが忘れていないことに気付いた神官長の顔、ものすごくイヤそうな表情だったなぁ、なんて思い出して小さく笑う。

「……どうしたの、いきなり笑って」
「ううん、なんでもなーい」

 不思議そうにわたしを見るふたりに、ひらひらと手を振ってみせた。みんなを迎え入れるために、玄関へ向かう。
 そして、それから一時間もしないうちに、ディーンが隊長をしていた隊員たちと、メイド服の女性たちがこの屋敷にやってきた。……屋敷っていうか、お城っぽい建物だけど……。まぁ、ルーカス陛下が屋敷といったのだ、屋敷なのだろう。

「いらっしゃい! 今日からよろしくね!」

 わたしが玄関で迎えたから驚かせてしまったみたい。みんな目を大きく見開いて、「アクアさま!?」と声を揃えて口にした。わたしが出迎えることが、そんなに意外だったのかな? と思ったら、「いつの間に……」といわれた。
 考えてみれば、この時間帯はまだ眠っている人が多いくらいだろうしね……。わたしがここにいるのを不思議がるのも無理はない、か。

「みんなを出迎えたくて! とはいえ、本当に出迎えるだけなんだけど」

 えへへ、と頬を掻くと、みんな小さく微笑みを浮かべてなぜか「ありがとうございます」とお礼をいわれた。
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