恩を返して欲しいのはこっちのほうだ!

秋月一花

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1章

57話:モフモフぷにぷにパーティー! 3

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 ディーンとバーナードは顔を見合わせて、それから「仕方ないな」とばかりに肩をすくめていたけれど……、多分、あのモフモフをもう一度、と思っていたのかもしれない。子どものコボルトたちを相手にしてくれていた。そんな中、戦士のコボルトが「あのふたり、強い?」と聞いて来たので、「たぶん」と答える。すると、目をキラキラと輝かせてディーンたちに近付き、「勝負! しよう!」と誘った。

「危険な勝負はダメだよー!」

 一応、そう声を掛けた。こくこくうなずいているのを見て、わたしは子どものコボルトたちと遊ぶことを優先することにした。

「なにして遊ぶ?」
「んっとねー、んっとねー、アクア、ご本読んで!」
「人間の文字、覚えたい!」
「きらきら!」

 どこからか絵本を取り出して、わたしに渡す。……コボルトたち、これをどこで手に入れたんだろう? ちょっとボロボロになっているけれど……。
 不思議そうに見ていると、どうやら行商人(行商コボルト?)が村のみんなにと置いていったものだそうだ。こういうのも扱っていたんだ。なんて感心しつつ、「ちょっと待ってね」とパラパラ絵本を眺める。子ども向けの絵本だから、可愛らしい絵だ。どうやら王子さまとお姫さまの物語のようだ。ふむふむ。うん、ハッピーエンドだし、読んでも良いかな。バッドエンドの物語だと、怖がっちゃうかもしれないと思って先に読んでみた。

「それじゃあ読むね。みんなこっちに来て~」

 パタパタと嬉しそうに尻尾を振りながらこっちに来る小さなコボルトたち。わたしは地面に座ると、みんなも座った。見やすいように絵本も置いて、最初のページを捲る。

「むかしむかし、あるところに――……」

 仮面舞踏会で会った王子さまとお姫さまの話。周囲に反対されたけれど、何度も何度も説得して、ついには結婚したという、ハッピーエンドな物語。王子さまとお姫さまの両親を説き伏せていくうちに、強い絆が出来て両国ともに幸せになったという話だった。
 一通り読み終えると、コボルトたちは文字について尋ねて来た。文字の書き方と読み方を教えると、たどたどしく絵本を読んでくれた。あー……可愛い。読み終えたら、「どう? どう?」とばかりにわたしを振り返り、尻尾を振っている。褒めて欲しいんだろうな、可愛いなぁ、もう! とめっちゃ撫でて褒めたら、「ずるーい!」と他の子たちも! ああ、幸せ……。
 ふと気になって、ディーンたちのほうを見ると、なんと腕相撲をしていた。コボルトと手を繋ぐ=肉球を触るということだから、ディーンもバーナードもなんだかちょっと楽しそう。

「じゃあ、勝負、はじめっ!」

 審判役……なのかな? コボルトがそう宣言すると同時に腕相撲が始まった。ごくり、と唾を飲み込む音。……子どもたちが夢中になっているのを見て、わたしは表情を綻ばせた。きっと、こんな風に強くなりたいと願っている子たちもいるんだろうなぁ。
 勝負は中々つかなかった。どっちも手を抜いている、わけではなくて……多分、肉球を堪能したいんだろうなって思った。わたしも堪能したい。ひょいっと子どものコボルトを後ろから抱っこして、その柔らかな毛並みを撫でる。ああ、気持ちいいなぁ。こんな子たちがあの屋敷で一緒に暮らせるのなら、すっごく幸せだろうなぁって改めて思った。
 絶対ルーカス陛下に許可をもらおう……! ひっそりとそう決意していると、勝負を盛り上げようとしているのか、熱い音楽が流れだした。

「……これはなんの曲?」
「戦士たちに、がんばれーって応援する曲!」

 子どものコボルトたちは楽しそうに身体を揺らしながら答えてくれた。そういう曲もあるんだ。確かに熱い音楽だ。そしてそれを奏でているのがコボルト。うーん、あの手でどうやって……と思わずそっちに意識がいってしまう。それはディーンとバーナードも同じだったようで、ふたりとも「あ」と小さく声を漏らして、コボルトたちに勝ってしまった。もう少し肉球を堪能したかったみたいで、残念そうに眉を下げていた。
 負けた戦士のコボルトたちはブルブルと震えていた。どこか痛めちゃったのかと思って立ち上がろうとすると、それよりも先に、戦士のコボルトたちが両膝をついて頭を下げた。ぎょっとしたディーンとバーナードが「ど、どうした!?」と声を掛けると、コボルトたちは顔を上げてこういった。

「戦士のコボルト、強い人について行く!」
「もっと強くなりたい!」
「よろしく、アニキ!」

 ぶふっ、と吹き出したわたし、悪くない。だって「よろしく、アニキ!」って言葉が重なっていて、パタパタ尻尾が揺れていたんだもん。

「ええー……」
「……どうする、ディーン……」

 困惑しているふたりに、長老がちょいちょいと手招きしてふたりになにかを話していた。そして、それから渋々とばかりにコボルトたちに手を差し出す。

「言っておくけど」
「俺らの指導は厳しいからな」

 どうやら長老に戦士のコボルトたちを頼まれたようだ。手を差し出されたコボルトはその手をしっかりと握って、こくこくと何度もうなずいていた。うーん、麗しい場面を目撃した感じ。睨まれそうだからいわないけど。
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