56 / 153
1章
57話:モフモフぷにぷにパーティー! 3
しおりを挟む
ディーンとバーナードは顔を見合わせて、それから「仕方ないな」とばかりに肩をすくめていたけれど……、多分、あのモフモフをもう一度、と思っていたのかもしれない。子どものコボルトたちを相手にしてくれていた。そんな中、戦士のコボルトが「あのふたり、強い?」と聞いて来たので、「たぶん」と答える。すると、目をキラキラと輝かせてディーンたちに近付き、「勝負! しよう!」と誘った。
「危険な勝負はダメだよー!」
一応、そう声を掛けた。こくこくうなずいているのを見て、わたしは子どものコボルトたちと遊ぶことを優先することにした。
「なにして遊ぶ?」
「んっとねー、んっとねー、アクア、ご本読んで!」
「人間の文字、覚えたい!」
「きらきら!」
どこからか絵本を取り出して、わたしに渡す。……コボルトたち、これをどこで手に入れたんだろう? ちょっとボロボロになっているけれど……。
不思議そうに見ていると、どうやら行商人(行商コボルト?)が村のみんなにと置いていったものだそうだ。こういうのも扱っていたんだ。なんて感心しつつ、「ちょっと待ってね」とパラパラ絵本を眺める。子ども向けの絵本だから、可愛らしい絵だ。どうやら王子さまとお姫さまの物語のようだ。ふむふむ。うん、ハッピーエンドだし、読んでも良いかな。バッドエンドの物語だと、怖がっちゃうかもしれないと思って先に読んでみた。
「それじゃあ読むね。みんなこっちに来て~」
パタパタと嬉しそうに尻尾を振りながらこっちに来る小さなコボルトたち。わたしは地面に座ると、みんなも座った。見やすいように絵本も置いて、最初のページを捲る。
「むかしむかし、あるところに――……」
仮面舞踏会で会った王子さまとお姫さまの話。周囲に反対されたけれど、何度も何度も説得して、ついには結婚したという、ハッピーエンドな物語。王子さまとお姫さまの両親を説き伏せていくうちに、強い絆が出来て両国ともに幸せになったという話だった。
一通り読み終えると、コボルトたちは文字について尋ねて来た。文字の書き方と読み方を教えると、たどたどしく絵本を読んでくれた。あー……可愛い。読み終えたら、「どう? どう?」とばかりにわたしを振り返り、尻尾を振っている。褒めて欲しいんだろうな、可愛いなぁ、もう! とめっちゃ撫でて褒めたら、「ずるーい!」と他の子たちも! ああ、幸せ……。
ふと気になって、ディーンたちのほうを見ると、なんと腕相撲をしていた。コボルトと手を繋ぐ=肉球を触るということだから、ディーンもバーナードもなんだかちょっと楽しそう。
「じゃあ、勝負、はじめっ!」
審判役……なのかな? コボルトがそう宣言すると同時に腕相撲が始まった。ごくり、と唾を飲み込む音。……子どもたちが夢中になっているのを見て、わたしは表情を綻ばせた。きっと、こんな風に強くなりたいと願っている子たちもいるんだろうなぁ。
勝負は中々つかなかった。どっちも手を抜いている、わけではなくて……多分、肉球を堪能したいんだろうなって思った。わたしも堪能したい。ひょいっと子どものコボルトを後ろから抱っこして、その柔らかな毛並みを撫でる。ああ、気持ちいいなぁ。こんな子たちがあの屋敷で一緒に暮らせるのなら、すっごく幸せだろうなぁって改めて思った。
絶対ルーカス陛下に許可をもらおう……! ひっそりとそう決意していると、勝負を盛り上げようとしているのか、熱い音楽が流れだした。
「……これはなんの曲?」
「戦士たちに、がんばれーって応援する曲!」
子どものコボルトたちは楽しそうに身体を揺らしながら答えてくれた。そういう曲もあるんだ。確かに熱い音楽だ。そしてそれを奏でているのがコボルト。うーん、あの手でどうやって……と思わずそっちに意識がいってしまう。それはディーンとバーナードも同じだったようで、ふたりとも「あ」と小さく声を漏らして、コボルトたちに勝ってしまった。もう少し肉球を堪能したかったみたいで、残念そうに眉を下げていた。
負けた戦士のコボルトたちはブルブルと震えていた。どこか痛めちゃったのかと思って立ち上がろうとすると、それよりも先に、戦士のコボルトたちが両膝をついて頭を下げた。ぎょっとしたディーンとバーナードが「ど、どうした!?」と声を掛けると、コボルトたちは顔を上げてこういった。
「戦士のコボルト、強い人について行く!」
「もっと強くなりたい!」
「よろしく、アニキ!」
ぶふっ、と吹き出したわたし、悪くない。だって「よろしく、アニキ!」って言葉が重なっていて、パタパタ尻尾が揺れていたんだもん。
「ええー……」
「……どうする、ディーン……」
困惑しているふたりに、長老がちょいちょいと手招きしてふたりになにかを話していた。そして、それから渋々とばかりにコボルトたちに手を差し出す。
「言っておくけど」
「俺らの指導は厳しいからな」
どうやら長老に戦士のコボルトたちを頼まれたようだ。手を差し出されたコボルトはその手をしっかりと握って、こくこくと何度もうなずいていた。うーん、麗しい場面を目撃した感じ。睨まれそうだからいわないけど。
「危険な勝負はダメだよー!」
一応、そう声を掛けた。こくこくうなずいているのを見て、わたしは子どものコボルトたちと遊ぶことを優先することにした。
「なにして遊ぶ?」
「んっとねー、んっとねー、アクア、ご本読んで!」
「人間の文字、覚えたい!」
「きらきら!」
どこからか絵本を取り出して、わたしに渡す。……コボルトたち、これをどこで手に入れたんだろう? ちょっとボロボロになっているけれど……。
不思議そうに見ていると、どうやら行商人(行商コボルト?)が村のみんなにと置いていったものだそうだ。こういうのも扱っていたんだ。なんて感心しつつ、「ちょっと待ってね」とパラパラ絵本を眺める。子ども向けの絵本だから、可愛らしい絵だ。どうやら王子さまとお姫さまの物語のようだ。ふむふむ。うん、ハッピーエンドだし、読んでも良いかな。バッドエンドの物語だと、怖がっちゃうかもしれないと思って先に読んでみた。
「それじゃあ読むね。みんなこっちに来て~」
パタパタと嬉しそうに尻尾を振りながらこっちに来る小さなコボルトたち。わたしは地面に座ると、みんなも座った。見やすいように絵本も置いて、最初のページを捲る。
「むかしむかし、あるところに――……」
仮面舞踏会で会った王子さまとお姫さまの話。周囲に反対されたけれど、何度も何度も説得して、ついには結婚したという、ハッピーエンドな物語。王子さまとお姫さまの両親を説き伏せていくうちに、強い絆が出来て両国ともに幸せになったという話だった。
一通り読み終えると、コボルトたちは文字について尋ねて来た。文字の書き方と読み方を教えると、たどたどしく絵本を読んでくれた。あー……可愛い。読み終えたら、「どう? どう?」とばかりにわたしを振り返り、尻尾を振っている。褒めて欲しいんだろうな、可愛いなぁ、もう! とめっちゃ撫でて褒めたら、「ずるーい!」と他の子たちも! ああ、幸せ……。
ふと気になって、ディーンたちのほうを見ると、なんと腕相撲をしていた。コボルトと手を繋ぐ=肉球を触るということだから、ディーンもバーナードもなんだかちょっと楽しそう。
「じゃあ、勝負、はじめっ!」
審判役……なのかな? コボルトがそう宣言すると同時に腕相撲が始まった。ごくり、と唾を飲み込む音。……子どもたちが夢中になっているのを見て、わたしは表情を綻ばせた。きっと、こんな風に強くなりたいと願っている子たちもいるんだろうなぁ。
勝負は中々つかなかった。どっちも手を抜いている、わけではなくて……多分、肉球を堪能したいんだろうなって思った。わたしも堪能したい。ひょいっと子どものコボルトを後ろから抱っこして、その柔らかな毛並みを撫でる。ああ、気持ちいいなぁ。こんな子たちがあの屋敷で一緒に暮らせるのなら、すっごく幸せだろうなぁって改めて思った。
絶対ルーカス陛下に許可をもらおう……! ひっそりとそう決意していると、勝負を盛り上げようとしているのか、熱い音楽が流れだした。
「……これはなんの曲?」
「戦士たちに、がんばれーって応援する曲!」
子どものコボルトたちは楽しそうに身体を揺らしながら答えてくれた。そういう曲もあるんだ。確かに熱い音楽だ。そしてそれを奏でているのがコボルト。うーん、あの手でどうやって……と思わずそっちに意識がいってしまう。それはディーンとバーナードも同じだったようで、ふたりとも「あ」と小さく声を漏らして、コボルトたちに勝ってしまった。もう少し肉球を堪能したかったみたいで、残念そうに眉を下げていた。
負けた戦士のコボルトたちはブルブルと震えていた。どこか痛めちゃったのかと思って立ち上がろうとすると、それよりも先に、戦士のコボルトたちが両膝をついて頭を下げた。ぎょっとしたディーンとバーナードが「ど、どうした!?」と声を掛けると、コボルトたちは顔を上げてこういった。
「戦士のコボルト、強い人について行く!」
「もっと強くなりたい!」
「よろしく、アニキ!」
ぶふっ、と吹き出したわたし、悪くない。だって「よろしく、アニキ!」って言葉が重なっていて、パタパタ尻尾が揺れていたんだもん。
「ええー……」
「……どうする、ディーン……」
困惑しているふたりに、長老がちょいちょいと手招きしてふたりになにかを話していた。そして、それから渋々とばかりにコボルトたちに手を差し出す。
「言っておくけど」
「俺らの指導は厳しいからな」
どうやら長老に戦士のコボルトたちを頼まれたようだ。手を差し出されたコボルトはその手をしっかりと握って、こくこくと何度もうなずいていた。うーん、麗しい場面を目撃した感じ。睨まれそうだからいわないけど。
16
あなたにおすすめの小説
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる