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2章
93話
感情がいろいろ混ざってよくわからない感覚になるけれど、大丈夫。バーナードには悪いけれど、わたしの事情を知っている人に話せるのは、心の整理に繋がるから。
「……妹がいるから、慰めるの慣れてる?」
「それもあるけど……、まぁ、最初に悪いことしたな、とは思っていたから」
「……敵意あったもんね」
ダラム王国から瘴気の森に飛ばされたあと、バーナードと初めて会った時を思い出して小さく笑う。不審者を見る感じだったもんね。
「王族と同じ色の髪と瞳を持つ女なんて、怪しく見えて当然だろ……」
「ノースモア公爵邸でそこら辺突っ込まれなかったけどなぁ」
「ディーンが連れて行ったからだろうな」
……確かに、それはあるかも。ディーンの事情を知っている人たちの中で、どうしてノースモア公爵家の人たちは彼を育てることを決めたのだろう。……謎ばかりが増えていくわね。……ディーンがここで魔物討伐隊に就いていたのも、それが関係していたりするのかな。
「……ディーンって、どういう環境で育ったの?」
「どういう……って、そうだな、ノースモア公爵たちがこの帝都に来るまでは、事情を知らない人たちに育てられていたはずだけど……」
「……そうなんだ? ノースモア公爵家の人たち、わざわざこっちに引っ越してきたの?」
「元々、長男が継ぐこと決定していたからな。隠居生活するってこっちに来たらしい」
……じゃあその長男は現在ひとりで領地を治めているってこと?
「ディーンとその人は面識あるの?」
「ある。興味深そうにディーンを見ていた」
「……ディーンがルーカス兄さまの兄の子だっていう噂は、どこから……?」
「ルーカス陛下が流した」
……ディーンが作られた人間だということを隠すための噂だったのかな。……だとしても、すごい噂だ。
「ルーカス兄さまに兄は居なかったと思うけど……」
「いろいろもみ消すのが得意なんだろうな」
「……王族の闇に触れている気分だわ」
眉間に皺を刻んでそう呟くと、「俺も」とバーナードが肩をすくめる。わたしたちはゆっくりとため息を吐いた。……そうだよねぇ……。暴かなくても良いことを気にしているような気がする。
好奇心って怖いな……。
「……そういえば、元老院が仲間割れし始めたらしいぞ」
「――仲間割れ?」
もしかして、わたしが瘴気を浄化したのが原因だったりするのだろうか……。
……あの時、わたしの浄化を拒んだのは……。
「……元老院のひとりは、大聖女ステラの弟だ」
「ステラって弟いたの!?」
「ああ。神殿で司祭していたらしい」
「司祭……。今も?」
「さぁ……?」
……ステラの弟がいたとは……。しかも司祭とは……。
恐らく、ではあるけれど、ステラの父は大司教か枢機卿だったのだろう。大聖女ステラの威光でそうなった可能性もある。……ああ、枢機卿は司祭でもなれるか……。……あれ、でもこの国ではどうなんだろう。ダラム王国の神殿しか知らないや。他の国の聖職者と話す機会なんてなかったし……。
「……神殿と王族って今、どのくらいの力の差がある?」
「大聖女ステラが亡くなって、神殿のほうが押され始めている感じだな」
……やっぱり神殿に行かなくて正解だったかもしれない。王家の血を引くわたしが行けば、バランスが崩れる。
「……そう。……あ、でも一度神殿には足を運ぶつもり」
「お前行きたいところどんどん増やしてないか?」
「付き合ってね、護衛さん」
にっこり笑ってそういうと、バーナードが「そんくらい軽口叩けるなら平気そうだな」と呆れたようにいわれた。……そうね、思ったよりもわたし、立ち直りが早かった。……まぁ、バーナードと話して、ちょっと心に余裕が出たのかもしれない。
「……バーナードがいてくれて良かった」
「……なんだよ、急に」
「だって、ひとりで悩んで抱え込むなんて、したくないもん。……バーナードも、少しは楽になった?」
ディーンのことを言外に伝えると、彼は一瞬目を大きく見開いて、それからくしゃりと自分の髪を握ってふっと笑った。
「まぁ、確かに楽にはなったかもしれないな。ルーカス陛下にはおいそれと話し掛けられないし、秘密を抱えたままってのは、結構きつい」
「……だよねー……」
共通の友人、ディーンの秘密。……きっとバーナードは、ずっとディーンの傍に居たのだろう。長い間一緒にいることで、友情が芽生えたのかもしれない。……そして、それと同時にディーンに真実を話せないという負い目も感じていたのかもしれない。
「しっかし、バーナードの一族って一体……」
「俺に聞くな、良く知らない」
「……一族なのに?」
「逆に尋ねるが、お前は王家のことがわかるか?」
わかりません。……確かに、わからないな……。西のほうから来たというバーナードの一族を迎えいれた理由もわからないし……。……その技術を欲していた……としかわたしには想像出来ないや。
緩やかに首を左右に振るわたしを見て、「ほらな?」と言い聞かせるように肩をすくめる。世の中わからないことだらけだ。
「……妹がいるから、慰めるの慣れてる?」
「それもあるけど……、まぁ、最初に悪いことしたな、とは思っていたから」
「……敵意あったもんね」
ダラム王国から瘴気の森に飛ばされたあと、バーナードと初めて会った時を思い出して小さく笑う。不審者を見る感じだったもんね。
「王族と同じ色の髪と瞳を持つ女なんて、怪しく見えて当然だろ……」
「ノースモア公爵邸でそこら辺突っ込まれなかったけどなぁ」
「ディーンが連れて行ったからだろうな」
……確かに、それはあるかも。ディーンの事情を知っている人たちの中で、どうしてノースモア公爵家の人たちは彼を育てることを決めたのだろう。……謎ばかりが増えていくわね。……ディーンがここで魔物討伐隊に就いていたのも、それが関係していたりするのかな。
「……ディーンって、どういう環境で育ったの?」
「どういう……って、そうだな、ノースモア公爵たちがこの帝都に来るまでは、事情を知らない人たちに育てられていたはずだけど……」
「……そうなんだ? ノースモア公爵家の人たち、わざわざこっちに引っ越してきたの?」
「元々、長男が継ぐこと決定していたからな。隠居生活するってこっちに来たらしい」
……じゃあその長男は現在ひとりで領地を治めているってこと?
「ディーンとその人は面識あるの?」
「ある。興味深そうにディーンを見ていた」
「……ディーンがルーカス兄さまの兄の子だっていう噂は、どこから……?」
「ルーカス陛下が流した」
……ディーンが作られた人間だということを隠すための噂だったのかな。……だとしても、すごい噂だ。
「ルーカス兄さまに兄は居なかったと思うけど……」
「いろいろもみ消すのが得意なんだろうな」
「……王族の闇に触れている気分だわ」
眉間に皺を刻んでそう呟くと、「俺も」とバーナードが肩をすくめる。わたしたちはゆっくりとため息を吐いた。……そうだよねぇ……。暴かなくても良いことを気にしているような気がする。
好奇心って怖いな……。
「……そういえば、元老院が仲間割れし始めたらしいぞ」
「――仲間割れ?」
もしかして、わたしが瘴気を浄化したのが原因だったりするのだろうか……。
……あの時、わたしの浄化を拒んだのは……。
「……元老院のひとりは、大聖女ステラの弟だ」
「ステラって弟いたの!?」
「ああ。神殿で司祭していたらしい」
「司祭……。今も?」
「さぁ……?」
……ステラの弟がいたとは……。しかも司祭とは……。
恐らく、ではあるけれど、ステラの父は大司教か枢機卿だったのだろう。大聖女ステラの威光でそうなった可能性もある。……ああ、枢機卿は司祭でもなれるか……。……あれ、でもこの国ではどうなんだろう。ダラム王国の神殿しか知らないや。他の国の聖職者と話す機会なんてなかったし……。
「……神殿と王族って今、どのくらいの力の差がある?」
「大聖女ステラが亡くなって、神殿のほうが押され始めている感じだな」
……やっぱり神殿に行かなくて正解だったかもしれない。王家の血を引くわたしが行けば、バランスが崩れる。
「……そう。……あ、でも一度神殿には足を運ぶつもり」
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「付き合ってね、護衛さん」
にっこり笑ってそういうと、バーナードが「そんくらい軽口叩けるなら平気そうだな」と呆れたようにいわれた。……そうね、思ったよりもわたし、立ち直りが早かった。……まぁ、バーナードと話して、ちょっと心に余裕が出たのかもしれない。
「……バーナードがいてくれて良かった」
「……なんだよ、急に」
「だって、ひとりで悩んで抱え込むなんて、したくないもん。……バーナードも、少しは楽になった?」
ディーンのことを言外に伝えると、彼は一瞬目を大きく見開いて、それからくしゃりと自分の髪を握ってふっと笑った。
「まぁ、確かに楽にはなったかもしれないな。ルーカス陛下にはおいそれと話し掛けられないし、秘密を抱えたままってのは、結構きつい」
「……だよねー……」
共通の友人、ディーンの秘密。……きっとバーナードは、ずっとディーンの傍に居たのだろう。長い間一緒にいることで、友情が芽生えたのかもしれない。……そして、それと同時にディーンに真実を話せないという負い目も感じていたのかもしれない。
「しっかし、バーナードの一族って一体……」
「俺に聞くな、良く知らない」
「……一族なのに?」
「逆に尋ねるが、お前は王家のことがわかるか?」
わかりません。……確かに、わからないな……。西のほうから来たというバーナードの一族を迎えいれた理由もわからないし……。……その技術を欲していた……としかわたしには想像出来ないや。
緩やかに首を左右に振るわたしを見て、「ほらな?」と言い聞かせるように肩をすくめる。世の中わからないことだらけだ。
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