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2章
97話
「……あの日、シャーリーさまたちの遺体は確認されましたが、ひとりだけ……。リネットさまだけ、発見できなかったのです。ですので、生きているのかもしれないという淡い期待と、それが望めないのではないかという恐怖……。なんとも言えない気持ちが続いていました」
……残された人は残された人で、痛みが広がる。……そうだよね。生死不明のままだったリネットのことを、スーザンは気に掛けてくれていたのかな。
「十年の月日が経ち、アクアさまがノースモア公爵家に来た時には驚きましたが……。他人の空似、という言葉があるくらいですから、私は自分の心のためにリネットさまではない、と思い込みました。違っていたらと思うと、怖かったのです」
淡々とした話し方だったけど、その恐怖心からか声が震えていた。……期待と違うと落胆するもんね。
「そっかぁ……」
「性格も、私の知るリネットさまとは正反対でしたしね」
「……そうね。今のわたしの性格は、リネットが望んだ性格だろうから」
「……?」
不思議そうにわたしを見るスーザンに、わたしは出来るだけ淡々と、記憶を取り戻した時のことを話した。わたしの中にいた、小さな少女。記憶を抱えたまま耐えていた少女のことを。
「……帝都で暴れる人が……」
「なんで暴れたのかは謎のままなんだけどね……」
「……瘴気を操れる人がいるのかもしれない……」
ぽつり、とわたしが言葉をこぼすと、三人はぎょっとしたように目を大きく見開いた。わたしは両手を顔の前まで上げて、「かもしれない、だからねっ?」と慌てて付け足す。
「……どうしてそう思った?」
バーナードの問いかけに、わたしは手を下げて膝の上で組んだ。
「ええっと、瘴気ってどうしても人から切り離せないものなのよ。人の感情って、理性があってもコントロールは難しいものでしょ? それに、なにかで鬱憤を晴らさないと延々と溜まっていくし。溢れちゃうと理性を失って人に襲い掛かったりするみたい……なんだけど、……まぁ、ぶっちゃけると『アクア・ルックス』が毎日神に祈りを捧げているのにそれほどまで瘴気が溜まるとは思わないんだよね……」
聖女としてダラム王国の神殿で神に毎日祈りを捧げていた。そのおかげだろう、貴族たちがかなりの横暴さだったが、平民たちからの反発は少なく(見せしめとして痛めつけられていた人がいたからかもしれない)、ただ耐えるだけ耐える……そんな人たちが多かった。……まぁ、そもそも貴族たちが横暴に振舞っていたのは主に使用人たちだったらしい、というのもある。平民たちにどんな感じで振舞っていたかはよく知らないんだよね……。平民たちほぼ諦めモードだったし、貴族の話をするとイヤそうな表情されたし。……今は、自由に好きなことをして暮らせていると良いのだけど……。
……話がそれた。
「……案外、自信家、なのでしょうか……?」
「ん~……。わかるのよね、自分がどのくらいの瘴気を浄化したかって。他の聖女や聖者と一緒にやったことがあるわけじゃないから、それがどのくらいのレベルなのかはよくわからないけど……」
そもそもタイプが違う。こっちの浄化方法は聖女や聖者が身体に瘴気を吸わせてそれを浄化するっていう結構大変な方法だ。
「……自分で言うのもなんだけど、わたし、浄化に対しては結構な自信を持っているのよ。神に祈ってから浄化すると、かなりの広範囲を浄化できるし、わたし自身でも近くの人の浄化をパパっと出来ちゃう」
ノースモア公爵家でも使った、浄化の古代語。あれは対象の人に対してだけ出来る浄化だから、使い分けも出来る。瘴気の森で使ったのは、川だけを綺麗にしようと思ってちょっと範囲の広い浄化を使う時に呟く古代語。……そういえば最近古代語を使わなくても浄化出来ているな、と今更気付いた。
「どうしたの、そんな真剣な表情をして」
「……この国に来て、わたしの神力パワーアップしているかも……?」
神を信仰する人たちが多いから……かもしれない。人口がダラム王国とはかなり違うからね。
「……それ、自分でわかるもの?」
「んー、もう感覚的な話になっちゃうのよね……。わたしが使っていた浄化は古代語を使うやり方だったんだけど……。……というか神官長からそのやり方しか教わってなかったんだけど……、古代語を使う方法だと、範囲を選べるんだよね。……でも、この国に来てから古代語を使わなくても浄化出来たし……」
うーん、と腕を組んで唸ってみた。すると、スーザンが驚いたように目を丸くする。どうしたの? と声を掛ける前に、スーザンが言葉を紡いだ。
「……まるで、ステラさまのようですね……」
心底感心したようにいわれて、わたしは目を瞬かせた。
「どういうこと?」
「ステラさまは浄化をする時、なにも口にしていませんでしたから……」
「……見たことがあるの?」
わたしの問いに、こくりとうなずいた。……わたしとステラの神力は同等くらいだっていわれたよね、あの身分証明に……。わたしがリネットだと確定した日を思い出して、少し肩をすくめた。
……残された人は残された人で、痛みが広がる。……そうだよね。生死不明のままだったリネットのことを、スーザンは気に掛けてくれていたのかな。
「十年の月日が経ち、アクアさまがノースモア公爵家に来た時には驚きましたが……。他人の空似、という言葉があるくらいですから、私は自分の心のためにリネットさまではない、と思い込みました。違っていたらと思うと、怖かったのです」
淡々とした話し方だったけど、その恐怖心からか声が震えていた。……期待と違うと落胆するもんね。
「そっかぁ……」
「性格も、私の知るリネットさまとは正反対でしたしね」
「……そうね。今のわたしの性格は、リネットが望んだ性格だろうから」
「……?」
不思議そうにわたしを見るスーザンに、わたしは出来るだけ淡々と、記憶を取り戻した時のことを話した。わたしの中にいた、小さな少女。記憶を抱えたまま耐えていた少女のことを。
「……帝都で暴れる人が……」
「なんで暴れたのかは謎のままなんだけどね……」
「……瘴気を操れる人がいるのかもしれない……」
ぽつり、とわたしが言葉をこぼすと、三人はぎょっとしたように目を大きく見開いた。わたしは両手を顔の前まで上げて、「かもしれない、だからねっ?」と慌てて付け足す。
「……どうしてそう思った?」
バーナードの問いかけに、わたしは手を下げて膝の上で組んだ。
「ええっと、瘴気ってどうしても人から切り離せないものなのよ。人の感情って、理性があってもコントロールは難しいものでしょ? それに、なにかで鬱憤を晴らさないと延々と溜まっていくし。溢れちゃうと理性を失って人に襲い掛かったりするみたい……なんだけど、……まぁ、ぶっちゃけると『アクア・ルックス』が毎日神に祈りを捧げているのにそれほどまで瘴気が溜まるとは思わないんだよね……」
聖女としてダラム王国の神殿で神に毎日祈りを捧げていた。そのおかげだろう、貴族たちがかなりの横暴さだったが、平民たちからの反発は少なく(見せしめとして痛めつけられていた人がいたからかもしれない)、ただ耐えるだけ耐える……そんな人たちが多かった。……まぁ、そもそも貴族たちが横暴に振舞っていたのは主に使用人たちだったらしい、というのもある。平民たちにどんな感じで振舞っていたかはよく知らないんだよね……。平民たちほぼ諦めモードだったし、貴族の話をするとイヤそうな表情されたし。……今は、自由に好きなことをして暮らせていると良いのだけど……。
……話がそれた。
「……案外、自信家、なのでしょうか……?」
「ん~……。わかるのよね、自分がどのくらいの瘴気を浄化したかって。他の聖女や聖者と一緒にやったことがあるわけじゃないから、それがどのくらいのレベルなのかはよくわからないけど……」
そもそもタイプが違う。こっちの浄化方法は聖女や聖者が身体に瘴気を吸わせてそれを浄化するっていう結構大変な方法だ。
「……自分で言うのもなんだけど、わたし、浄化に対しては結構な自信を持っているのよ。神に祈ってから浄化すると、かなりの広範囲を浄化できるし、わたし自身でも近くの人の浄化をパパっと出来ちゃう」
ノースモア公爵家でも使った、浄化の古代語。あれは対象の人に対してだけ出来る浄化だから、使い分けも出来る。瘴気の森で使ったのは、川だけを綺麗にしようと思ってちょっと範囲の広い浄化を使う時に呟く古代語。……そういえば最近古代語を使わなくても浄化出来ているな、と今更気付いた。
「どうしたの、そんな真剣な表情をして」
「……この国に来て、わたしの神力パワーアップしているかも……?」
神を信仰する人たちが多いから……かもしれない。人口がダラム王国とはかなり違うからね。
「……それ、自分でわかるもの?」
「んー、もう感覚的な話になっちゃうのよね……。わたしが使っていた浄化は古代語を使うやり方だったんだけど……。……というか神官長からそのやり方しか教わってなかったんだけど……、古代語を使う方法だと、範囲を選べるんだよね。……でも、この国に来てから古代語を使わなくても浄化出来たし……」
うーん、と腕を組んで唸ってみた。すると、スーザンが驚いたように目を丸くする。どうしたの? と声を掛ける前に、スーザンが言葉を紡いだ。
「……まるで、ステラさまのようですね……」
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「どういうこと?」
「ステラさまは浄化をする時、なにも口にしていませんでしたから……」
「……見たことがあるの?」
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