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2章
99話
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「ありがとう。ごめんね、つらいこと、思い出させちゃったね」
「……いえ、こちらこそ、ありがとうございます。生きていてくれて……」
そっとわたしと視線を合わせるスーザン。彼女の目には涙が浮かんでいた。だけど、それをこぼしもせず、耐えるようにゆっくりと上を向く。そして、静かに息を吐くともう一度わたしを見た。
「……このことを、奥さまは気付いているのですか?」
「さぁ? 話してはいないけれど……」
奥さま……って、ディーンのお母さんのことよね。伝えたほうが良かったりするのかな? 会ったのってあの一回きりだけど……。
「いえ、必要ならルーカス陛下が手筈を整えるでしょう。不思議な気持ち、ですね。ステラさまの子よりも、孫であるリネットさまのほうが強い力を秘めているの……」
「別にわたし、力を隠したことはないけどね?」
それにわたしにだって苦手な部類はある。土魔法とかおばけとか。……本当、なんで土魔法だけは小さいゴーレムしか作れないんだろう、謎だ。
「アクアの力は大聖女ステラよりも強いようだし……。確かに、不思議だね」
「力が遺伝するなら、血の繋がりが濃いほうに行きそうだけどな……」
ぽつりぽつりとそんな会話を繰り返すわたしたち。その日は結局、別のことの話題になってしまい、結局ステラとシャーリーの関係がどのようなものだったのかは、よくわからなかった……いや、過保護気味だということはわかったけど!
「ディーン、スーザンを送って行ってね。スーザン、今日は来てくれてありがとう。話せて嬉しかったわ」
「こちらこそ、ありがとうございました。……また、訪問してもよろしいですか?」
「歓迎するわ。そしたら、今度はスーザンとお母さまのことを聞かせてね」
こくりとうなずくスーザンを見送る。玄関まで見送ろうかと思ったら、スーザンに「名残惜しくなるので」と止められた。そういわれちゃったら、応接間で別れるしかない。バイバイ、と手を振ってスーザンを見送った。
パタン、と扉が閉まる。それと同時に、わたしは「はぁぁああ~」と大きな息を吐いた。
「……おい、大丈夫か?」
「わたしのキャパ不足を感じるわ……!」
記憶を取り戻して、ディーンのことを聞いたり、リリィにステラのことを聞いたりと中々に情報量が多くてわたしの頭の中は混乱中だ。結婚相手って親が決めるもの? いや、確かに王族ならあれだ、政略結婚があるだろうけど、わざわざひとりひとりと話すか? 普通はないよね、多分。
「……俺、よくわからないけど……。お前の家族ってどうなってんの……?」
「わたしが知りたい。ねぇ、貴族って結婚相手選ぶときってどんな風に選ぶの?」
「……家柄が釣り合うとか、互いに利益をもたらすとか……」
「夢がない……」
「貴族で恋愛結婚しているヤツラなんざ一握りだぞ……」
「ひ、一握り……」
……神殿で暮らしていたからかな、わたし、多分、いやきっと、そういうことに対して疎いとは思うけれど……、結婚してから恋愛するって考え方がよくわからない……!
「……でも、一握りでも最初から好きな人と結ばれるのね……」
貴族の結婚が義務なら、王族の結婚はもっと強い義務だろう。誰がどこに嫁ぐか、迎え入れるかで国としての矜持を保つのだから。
「……なんか複雑ね……、結婚って……」
「王族ともなればさらに複雑だろうけど……。ステラの溺愛の理由がわからないな」
首を縦に動かして同意した。本当にわからない。ステラには未来でも見えていたんだろうか。わたしが希望ってどういう意味なのかさっぱりだ。
「……気にはなるけど、気にしすぎちゃダメだよね」
「そうだな。考え出すと止まらないだろうし、今は目の前のことから考えればいいと思う。……陛下の誕生日までは、陛下のことを考えていればいいさ」
「……そうね、そうする……。あ、でも今日はちょっとひとりになりたいから、このまま部屋に戻るわ……。ごはんも要らないって、伝えておいて」
「……わかった、伝えておく」
「ありがとう」
わたしはそれだけいうと、応接間から自室まで戻った。自室まで戻り、混乱する頭を整理するためにベッドに横になる。目を閉じて浮かんできたのは、幼い頃の記憶だった。幸せそうに笑うお父さまとお母さまの姿を思い出して、深呼吸を数度繰り返した。
――絶対に、あの場所に行こう。あの場所に行って、気持ちの整理をするんだ。
そう決意した途端に、睡魔が襲ってきた。……わたしはそのまま眠ってしまい、気が付けば早朝になっていた。
「……今日からルーカス陛下の誕生日までは、誕生日プレゼントを完成させることだけを考えよう……!」
起き上がってぐっと拳を握り、自分に言い聞かせるようにそう口にする。
その日からは延々と刺繍を始めた。……そのおかげで、ルーカス陛下の誕生日までには納得のいく刺繍が出来た。たまにリリィが来てくれた。そのたびに、アドバイスをしてくれたから、より上手に出来たのかもしれない。
――そして、ついにルーカス陛下の誕生日当日となった。
誘われているので、わたしも出席する。まぁ、主役はルーカス陛下だからわたしは添えるだけの存在になるはず。セシリーたちは張り切ってメイクしてくれているけど、ね。
「……いえ、こちらこそ、ありがとうございます。生きていてくれて……」
そっとわたしと視線を合わせるスーザン。彼女の目には涙が浮かんでいた。だけど、それをこぼしもせず、耐えるようにゆっくりと上を向く。そして、静かに息を吐くともう一度わたしを見た。
「……このことを、奥さまは気付いているのですか?」
「さぁ? 話してはいないけれど……」
奥さま……って、ディーンのお母さんのことよね。伝えたほうが良かったりするのかな? 会ったのってあの一回きりだけど……。
「いえ、必要ならルーカス陛下が手筈を整えるでしょう。不思議な気持ち、ですね。ステラさまの子よりも、孫であるリネットさまのほうが強い力を秘めているの……」
「別にわたし、力を隠したことはないけどね?」
それにわたしにだって苦手な部類はある。土魔法とかおばけとか。……本当、なんで土魔法だけは小さいゴーレムしか作れないんだろう、謎だ。
「アクアの力は大聖女ステラよりも強いようだし……。確かに、不思議だね」
「力が遺伝するなら、血の繋がりが濃いほうに行きそうだけどな……」
ぽつりぽつりとそんな会話を繰り返すわたしたち。その日は結局、別のことの話題になってしまい、結局ステラとシャーリーの関係がどのようなものだったのかは、よくわからなかった……いや、過保護気味だということはわかったけど!
「ディーン、スーザンを送って行ってね。スーザン、今日は来てくれてありがとう。話せて嬉しかったわ」
「こちらこそ、ありがとうございました。……また、訪問してもよろしいですか?」
「歓迎するわ。そしたら、今度はスーザンとお母さまのことを聞かせてね」
こくりとうなずくスーザンを見送る。玄関まで見送ろうかと思ったら、スーザンに「名残惜しくなるので」と止められた。そういわれちゃったら、応接間で別れるしかない。バイバイ、と手を振ってスーザンを見送った。
パタン、と扉が閉まる。それと同時に、わたしは「はぁぁああ~」と大きな息を吐いた。
「……おい、大丈夫か?」
「わたしのキャパ不足を感じるわ……!」
記憶を取り戻して、ディーンのことを聞いたり、リリィにステラのことを聞いたりと中々に情報量が多くてわたしの頭の中は混乱中だ。結婚相手って親が決めるもの? いや、確かに王族ならあれだ、政略結婚があるだろうけど、わざわざひとりひとりと話すか? 普通はないよね、多分。
「……俺、よくわからないけど……。お前の家族ってどうなってんの……?」
「わたしが知りたい。ねぇ、貴族って結婚相手選ぶときってどんな風に選ぶの?」
「……家柄が釣り合うとか、互いに利益をもたらすとか……」
「夢がない……」
「貴族で恋愛結婚しているヤツラなんざ一握りだぞ……」
「ひ、一握り……」
……神殿で暮らしていたからかな、わたし、多分、いやきっと、そういうことに対して疎いとは思うけれど……、結婚してから恋愛するって考え方がよくわからない……!
「……でも、一握りでも最初から好きな人と結ばれるのね……」
貴族の結婚が義務なら、王族の結婚はもっと強い義務だろう。誰がどこに嫁ぐか、迎え入れるかで国としての矜持を保つのだから。
「……なんか複雑ね……、結婚って……」
「王族ともなればさらに複雑だろうけど……。ステラの溺愛の理由がわからないな」
首を縦に動かして同意した。本当にわからない。ステラには未来でも見えていたんだろうか。わたしが希望ってどういう意味なのかさっぱりだ。
「……気にはなるけど、気にしすぎちゃダメだよね」
「そうだな。考え出すと止まらないだろうし、今は目の前のことから考えればいいと思う。……陛下の誕生日までは、陛下のことを考えていればいいさ」
「……そうね、そうする……。あ、でも今日はちょっとひとりになりたいから、このまま部屋に戻るわ……。ごはんも要らないって、伝えておいて」
「……わかった、伝えておく」
「ありがとう」
わたしはそれだけいうと、応接間から自室まで戻った。自室まで戻り、混乱する頭を整理するためにベッドに横になる。目を閉じて浮かんできたのは、幼い頃の記憶だった。幸せそうに笑うお父さまとお母さまの姿を思い出して、深呼吸を数度繰り返した。
――絶対に、あの場所に行こう。あの場所に行って、気持ちの整理をするんだ。
そう決意した途端に、睡魔が襲ってきた。……わたしはそのまま眠ってしまい、気が付けば早朝になっていた。
「……今日からルーカス陛下の誕生日までは、誕生日プレゼントを完成させることだけを考えよう……!」
起き上がってぐっと拳を握り、自分に言い聞かせるようにそう口にする。
その日からは延々と刺繍を始めた。……そのおかげで、ルーカス陛下の誕生日までには納得のいく刺繍が出来た。たまにリリィが来てくれた。そのたびに、アドバイスをしてくれたから、より上手に出来たのかもしれない。
――そして、ついにルーカス陛下の誕生日当日となった。
誘われているので、わたしも出席する。まぁ、主役はルーカス陛下だからわたしは添えるだけの存在になるはず。セシリーたちは張り切ってメイクしてくれているけど、ね。
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