104 / 153
2章
104話:ルーカス陛下の誕生日パーティー 5
神官長にさっきの会話を教えると、目をパチパチと瞬かせて、それからゆっくり息を吐いて「なるほど」と呟いた。
それからリリィとロバートに対して話し掛ける。ディーンに、神官長のフォローをお願いして、わたしとバーナードは料理を取りに向かった。……今のダラム王国は帝国の領地になっているし、まぁ大丈夫だろう。
「いいのか、ディーンを置いて行って」
「さっき飲み物持って来てくれたからね、料理持っていこう。……そういえば、ディーンの好きな食べ物知らないや」
「食べられればなんでもいいと思うぞ。俺ら遠征慣れしているし」
「遠征慣れと料理の好みがどう関係あるのよ……」
美味しそうな料理を眺めながらそんな会話をしていると、周りからの視線を感じた。こっちに視線を刺さるくらい寄こすなら、話し掛けてくれればいいのに。そう思いつつも、話し掛けにくいのかもしれないな、とちょっと考えた。わたしが一通り見渡すと、みんな視線を逸らした。……なんというか、珍獣を見るように見ないで欲しい……。
「アクアさま、楽しんでいらっしゃいますか?」
「フィロメナ! ……あれ、旦那さんは?」
「録音した音楽を魔力で流しています」
フィロメナがいるのならと思って辺りを見渡したけど、探していた姿が見えなかったので尋ねてみた。……あの音楽、魔力で流しているのか……。ううん、よくわからない。
「どういうこと?」
「録音魔石に音楽を録音して、夫の魔力で再生しているんです」
「……そんなことも出来るんだ。音楽って生演奏しか知らなかった」
「生演奏には生演奏の、録音には録音の良さがありますわ」
ふふ、と笑うフィロメナに対して、バーナードは「そうだな」と同意のうなずきをしていた。
「フィロメナたちも呼ばれていたんだね」
「ええ。……伝えていませんでしたっけ?」
どうやら伝えていたつもりになっていたみたいだ。聞いていなかった……よね? 多分。そもそも、こんなにたくさんの人がいる中で会えるとは……。神さまも粋なことをしてくれる。
「ああ、そろそろダンスが始まりますね」
「そうなの?」
「はい、音楽が変わりますよ」
フィロメナの言葉と同時に、音楽が変わった。……コボルト音楽隊の演奏って、日によってバラバラだから、たくさん録音してイメージに合うのを使っているのかなぁ? と考えていたら、プレゼントを受け取っていたルーカス陛下がなにかしたのか、一気に会場がざわざわと賑やかになった。
ルーカス陛下が真っ直ぐにこっちに向かって来ている。……今はダンスの時間。つまり……。
「アクア、一曲踊ってくれないか?」
やっぱり! わたしはちくちくと刺さる視線を感じつつ、手を差し伸べてきたルーカス陛下をじっと見て……その手を取った。
パーティー会場の中央に向かう。中央についたら、周りの灯りが消えて代わりにわたしたちにスポットライトが当たった。……絶対リハーサルしていただろ、これ……!
「ルーカス陛下、言っておきますけど、わたし……ダンス下手ですからね……!」
「大丈夫だ、私がリードする」
手を離してこそこそと話してから、改めてルーカス陛下の手を取り、肩に手を置く。ルーカス陛下もきゅっと手を握って、わたしの腰に手を回した。
そして、音楽に合わせるように身体が動き出す。ふわっとわたしのドレスが舞うように動く。……セシリーたち、こうなることを理解してこのドレスを選んでいた……?
貴族教育のひとつに確かにダンスはあったけど、まだ数回しかやったことがないのよね……。そんなわたしでも、驚くくらい踊れた。
きっとルーカス陛下のリードが良いのだろう。うーん、なんだか不思議な感じ。どのくらいふたりで踊っていたのかわからないくらい、わたしたちはパーティー会場の真ん中で踊っていた。
曲が終わるのと同時に、ステップも終わる。ちょっと息が上がってしまった気がするけれど、それよりもルーカス陛下と踊っていて『楽しい』と思った。
互いの顔を見て、微笑みながら踊る……なんてかなり高難易度なんだけど、ルーカス陛下のおかげできちんと最後まで踊れた。ひとりで練習していた時は躓いてばかりいたのに!
手を離して、わたしはカーテシー、ルーカス陛下は胸元に手を置いて頭を下げる。
わぁぁああっ、と歓声が聞こえた。周りを見渡すと、みんなわたしたちを見ていたようで、頬を赤らめる令嬢や、微笑みを浮かべている人たちが視界に飛び込んできた。
「――楽しかったか?」
「……はい、ルーカス兄さまのおかげで」
「それは良かった」
ふわっと優しそうにルーカス陛下。その笑みを見た人たちが「ルーカス陛下が、微笑んだ……!」や、「あの子は一体……?」などと話しているのが聞こえた。
……あ、もしかして、この流れは……。ちょっと冷や汗が出てきた気がする。
「……皆に、紹介しよう」
デスヨネーっ! 知ってた! こうなると思ってた!
それからリリィとロバートに対して話し掛ける。ディーンに、神官長のフォローをお願いして、わたしとバーナードは料理を取りに向かった。……今のダラム王国は帝国の領地になっているし、まぁ大丈夫だろう。
「いいのか、ディーンを置いて行って」
「さっき飲み物持って来てくれたからね、料理持っていこう。……そういえば、ディーンの好きな食べ物知らないや」
「食べられればなんでもいいと思うぞ。俺ら遠征慣れしているし」
「遠征慣れと料理の好みがどう関係あるのよ……」
美味しそうな料理を眺めながらそんな会話をしていると、周りからの視線を感じた。こっちに視線を刺さるくらい寄こすなら、話し掛けてくれればいいのに。そう思いつつも、話し掛けにくいのかもしれないな、とちょっと考えた。わたしが一通り見渡すと、みんな視線を逸らした。……なんというか、珍獣を見るように見ないで欲しい……。
「アクアさま、楽しんでいらっしゃいますか?」
「フィロメナ! ……あれ、旦那さんは?」
「録音した音楽を魔力で流しています」
フィロメナがいるのならと思って辺りを見渡したけど、探していた姿が見えなかったので尋ねてみた。……あの音楽、魔力で流しているのか……。ううん、よくわからない。
「どういうこと?」
「録音魔石に音楽を録音して、夫の魔力で再生しているんです」
「……そんなことも出来るんだ。音楽って生演奏しか知らなかった」
「生演奏には生演奏の、録音には録音の良さがありますわ」
ふふ、と笑うフィロメナに対して、バーナードは「そうだな」と同意のうなずきをしていた。
「フィロメナたちも呼ばれていたんだね」
「ええ。……伝えていませんでしたっけ?」
どうやら伝えていたつもりになっていたみたいだ。聞いていなかった……よね? 多分。そもそも、こんなにたくさんの人がいる中で会えるとは……。神さまも粋なことをしてくれる。
「ああ、そろそろダンスが始まりますね」
「そうなの?」
「はい、音楽が変わりますよ」
フィロメナの言葉と同時に、音楽が変わった。……コボルト音楽隊の演奏って、日によってバラバラだから、たくさん録音してイメージに合うのを使っているのかなぁ? と考えていたら、プレゼントを受け取っていたルーカス陛下がなにかしたのか、一気に会場がざわざわと賑やかになった。
ルーカス陛下が真っ直ぐにこっちに向かって来ている。……今はダンスの時間。つまり……。
「アクア、一曲踊ってくれないか?」
やっぱり! わたしはちくちくと刺さる視線を感じつつ、手を差し伸べてきたルーカス陛下をじっと見て……その手を取った。
パーティー会場の中央に向かう。中央についたら、周りの灯りが消えて代わりにわたしたちにスポットライトが当たった。……絶対リハーサルしていただろ、これ……!
「ルーカス陛下、言っておきますけど、わたし……ダンス下手ですからね……!」
「大丈夫だ、私がリードする」
手を離してこそこそと話してから、改めてルーカス陛下の手を取り、肩に手を置く。ルーカス陛下もきゅっと手を握って、わたしの腰に手を回した。
そして、音楽に合わせるように身体が動き出す。ふわっとわたしのドレスが舞うように動く。……セシリーたち、こうなることを理解してこのドレスを選んでいた……?
貴族教育のひとつに確かにダンスはあったけど、まだ数回しかやったことがないのよね……。そんなわたしでも、驚くくらい踊れた。
きっとルーカス陛下のリードが良いのだろう。うーん、なんだか不思議な感じ。どのくらいふたりで踊っていたのかわからないくらい、わたしたちはパーティー会場の真ん中で踊っていた。
曲が終わるのと同時に、ステップも終わる。ちょっと息が上がってしまった気がするけれど、それよりもルーカス陛下と踊っていて『楽しい』と思った。
互いの顔を見て、微笑みながら踊る……なんてかなり高難易度なんだけど、ルーカス陛下のおかげできちんと最後まで踊れた。ひとりで練習していた時は躓いてばかりいたのに!
手を離して、わたしはカーテシー、ルーカス陛下は胸元に手を置いて頭を下げる。
わぁぁああっ、と歓声が聞こえた。周りを見渡すと、みんなわたしたちを見ていたようで、頬を赤らめる令嬢や、微笑みを浮かべている人たちが視界に飛び込んできた。
「――楽しかったか?」
「……はい、ルーカス兄さまのおかげで」
「それは良かった」
ふわっと優しそうにルーカス陛下。その笑みを見た人たちが「ルーカス陛下が、微笑んだ……!」や、「あの子は一体……?」などと話しているのが聞こえた。
……あ、もしかして、この流れは……。ちょっと冷や汗が出てきた気がする。
「……皆に、紹介しよう」
デスヨネーっ! 知ってた! こうなると思ってた!
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
売られたケンカは高く買いましょう《完結》
アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。
それが今の私の名前です。
半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。
ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。
他社でも公開中
結構グロいであろう内容があります。
ご注意ください。
☆構成
本章:9話
(うん、性格と口が悪い。けど理由あり)
番外編1:4話
(まあまあ残酷。一部救いあり)
番外編2:5話
(めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
婚約破棄の日の夜に
夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。
ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。
そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。