106 / 153
2章
106話
ルーカス陛下の誕生日パーティーから数日が経過した。その間に、わたしが住んでいる屋敷に大量のお茶会の招待状が届いた。
山のように重なっているお茶会の招待状を見て、わたしは重々しく息を吐く。仲良くしてくださいね、といったのは自分だ。どれかには参加しないといけないだろう。
「どこに行くべきか……」
正直貴族のお茶会ってなにをするのかよく知らないのよね……。招待状を一枚一枚確認していると、自室の扉がノックされた。
「はーい」
「アクア、入るよ~」
ディーンの声が聞こえた。それから、扉が開く音。ディーンの手には、追加の招待状が大量に……。……まさかこんなに一気に来るとは思わなくて、思わず眉を顰めた。それを見たディーンが小さく笑う。
「選ぶのも大変だねぇ……」
「本当にね……」
「行きたいところはあるの?」
「いや、そもそも貴族たちのことあんまり知らないし……」
わたしが知っているのはディーンの家とバーナードの家くらい――……って思ったけど、バーナードの苗字知らないや。
この国では苗字を持っている人が貴族だ。あと、商人も苗字を持っているね。平民は名前のみ。コボルトたちはどうかわからない。ココとかララ、としか聞いてないもんね。
「それじゃあ、貴族を知っている人たちで選出しようか?」
「う~ん、それはありがたいんだけど……、最初くらいは自分で選びたくて。もしも選んだところが注意したほうが良い場所なら、教えて欲しい」
「わかった。あんまり深く考えずに決めたほうがいいよ」
確かに知恵熱出そうなくらい多いけどね! こくりとうなずいて、ディーンが机に招待状を置いて出て行った。扉が閉まる音が聞こえて、わたしは椅子に寄りかかりグーンと腕を伸ばした。午前中からずっと招待状とにらめっこ状態だったから、目が疲れているなぁと目を閉じてマッサージする。
ルーカス陛下の誕生日パーティーは、聖剣セイリオスが一気に場の雰囲気を飲み込んでいったように見えた。……あれだけ光り輝いていたら、まぁ、そうなるだろう。
そこから、聖剣セイリオスについての質問が始まったりして、ルーカス陛下は忙しそうにしていた。わたしの元にも多くの令嬢が現れて、取り囲んで一斉に挨拶をしてくれたけど、全然覚えられなかった……。でも、それも仕方ないと思う。あんなに一気に大量の人物を覚えられる自信は全くといっていいほどない!
「顔と名前が一致しないわ……」
マッサージをやめて、椅子に座り直して姿勢を正す。それからまた招待状に視線を向けた。……うーん、覚えている人たちもうろ覚えだからなぁ……。いっそ勘に頼ってみようかな。お茶会にも、ディーンとバーナードはついて来てくれるだろうから、安心だしね。
招待状に記載されている名前を見てもピンと来ないし、とりあえずこの人にしようかなぁと目を閉じて手をうろうろ招待状の上をうろつかせ、この人! と決めて招待状を手に取る。ええと、この人は誰かな~? と目を開けて名前を確認。
「エメライン・サラ・マクファーソン?」
……覚えがあるようなないような。とりあえず、最初のお茶会はこの人のところに決めた。椅子から立ち上がって、急いで部屋を出る。すると、すぐにセシリーが見つかった。
「あら、アクアさま。誰かをお探しですか?」
「うん、ディーンかバーナードがどこにいるか、知らない?」
「この時間でしたら訓練場でしょう。ササとセセに稽古をつけていると思います」
「ありがとう、行ってみる!」
短くお礼を伝えてから、訓練場に向かう。使っていない部屋を大改造した結果、室内にも訓練場が出来た。外にもあるけれど、どっちかな。とりあえず、近い室内のほうから見てみよう。足を速めて歩いていると、あっという間に訓練場についた。
「アクアさま、どうしてこんな場所に?」
「ディーンかバーナードに用事があって。こっちにいる?」
「白熱していますよ。……というか、連絡鳥を使えば良かったのでは……?」
「あ。そっか、そういう手もあったね……!」
ぽんと手を叩く。それを見た騎士が、小さく笑った。
「見学しますか?」
「うん、折角だから見てみようかな」
騎士が扉を開けてくれた。こっそりと中に入って、稽古の様子を見学する。
ディーンとササ、バーナードとセセが戦っていた。訓練用の剣を使い、目で追うのが大変なくらいのスピードでコボルたちが攻撃を繰り返している。それを避けるふたりもすごい。避けるだけではなくて、「もっと素早く! 遅い!」とか、「それで当たっても痛くねぇぞ!」とか聞こえてくる。……訓練ってこんな感じなんだ……。
ササとセセが疲れからか一瞬動きが止まる。それを狙ったかのようにディーンとバーナードの反撃が始まった。なんとも鈍い音を響かせて、剣と剣がぶつかり合う。力比べのようにぐぐぐ、と身体を前のめりにしたコボルトたちは、すいっと身体を後ろに引いたディーンとバーナードに驚いてそのままこけた。こけた顔の近くに、ざんっ
と剣を突き付けて「はい、訓練終了」とディーンがいった。
「うーん、強い」
「ディーン隊長とバーナードの強さは、魔物討伐隊でも秀でていましたからねぇ」
そうだったのか……。そしてそのふたりよりも強いルーカス陛下。……強い人がいっぱいいるなぁ、アルストル帝国。
「……あれ? アクア?」
「どうしたんだよ、こんなところに来るなんて」
……強さもだけど、息が上がっていないところが不思議だわ……。
「ちょっとふたりに用事があって。初めてのお茶会参加、ここにしようと思ってね」
人差し指と中指で招待状を挟んでふたりに見せる。彼らは顔を見合わせて、それからわたしのところに来て、招待状の差出人を確認した。
山のように重なっているお茶会の招待状を見て、わたしは重々しく息を吐く。仲良くしてくださいね、といったのは自分だ。どれかには参加しないといけないだろう。
「どこに行くべきか……」
正直貴族のお茶会ってなにをするのかよく知らないのよね……。招待状を一枚一枚確認していると、自室の扉がノックされた。
「はーい」
「アクア、入るよ~」
ディーンの声が聞こえた。それから、扉が開く音。ディーンの手には、追加の招待状が大量に……。……まさかこんなに一気に来るとは思わなくて、思わず眉を顰めた。それを見たディーンが小さく笑う。
「選ぶのも大変だねぇ……」
「本当にね……」
「行きたいところはあるの?」
「いや、そもそも貴族たちのことあんまり知らないし……」
わたしが知っているのはディーンの家とバーナードの家くらい――……って思ったけど、バーナードの苗字知らないや。
この国では苗字を持っている人が貴族だ。あと、商人も苗字を持っているね。平民は名前のみ。コボルトたちはどうかわからない。ココとかララ、としか聞いてないもんね。
「それじゃあ、貴族を知っている人たちで選出しようか?」
「う~ん、それはありがたいんだけど……、最初くらいは自分で選びたくて。もしも選んだところが注意したほうが良い場所なら、教えて欲しい」
「わかった。あんまり深く考えずに決めたほうがいいよ」
確かに知恵熱出そうなくらい多いけどね! こくりとうなずいて、ディーンが机に招待状を置いて出て行った。扉が閉まる音が聞こえて、わたしは椅子に寄りかかりグーンと腕を伸ばした。午前中からずっと招待状とにらめっこ状態だったから、目が疲れているなぁと目を閉じてマッサージする。
ルーカス陛下の誕生日パーティーは、聖剣セイリオスが一気に場の雰囲気を飲み込んでいったように見えた。……あれだけ光り輝いていたら、まぁ、そうなるだろう。
そこから、聖剣セイリオスについての質問が始まったりして、ルーカス陛下は忙しそうにしていた。わたしの元にも多くの令嬢が現れて、取り囲んで一斉に挨拶をしてくれたけど、全然覚えられなかった……。でも、それも仕方ないと思う。あんなに一気に大量の人物を覚えられる自信は全くといっていいほどない!
「顔と名前が一致しないわ……」
マッサージをやめて、椅子に座り直して姿勢を正す。それからまた招待状に視線を向けた。……うーん、覚えている人たちもうろ覚えだからなぁ……。いっそ勘に頼ってみようかな。お茶会にも、ディーンとバーナードはついて来てくれるだろうから、安心だしね。
招待状に記載されている名前を見てもピンと来ないし、とりあえずこの人にしようかなぁと目を閉じて手をうろうろ招待状の上をうろつかせ、この人! と決めて招待状を手に取る。ええと、この人は誰かな~? と目を開けて名前を確認。
「エメライン・サラ・マクファーソン?」
……覚えがあるようなないような。とりあえず、最初のお茶会はこの人のところに決めた。椅子から立ち上がって、急いで部屋を出る。すると、すぐにセシリーが見つかった。
「あら、アクアさま。誰かをお探しですか?」
「うん、ディーンかバーナードがどこにいるか、知らない?」
「この時間でしたら訓練場でしょう。ササとセセに稽古をつけていると思います」
「ありがとう、行ってみる!」
短くお礼を伝えてから、訓練場に向かう。使っていない部屋を大改造した結果、室内にも訓練場が出来た。外にもあるけれど、どっちかな。とりあえず、近い室内のほうから見てみよう。足を速めて歩いていると、あっという間に訓練場についた。
「アクアさま、どうしてこんな場所に?」
「ディーンかバーナードに用事があって。こっちにいる?」
「白熱していますよ。……というか、連絡鳥を使えば良かったのでは……?」
「あ。そっか、そういう手もあったね……!」
ぽんと手を叩く。それを見た騎士が、小さく笑った。
「見学しますか?」
「うん、折角だから見てみようかな」
騎士が扉を開けてくれた。こっそりと中に入って、稽古の様子を見学する。
ディーンとササ、バーナードとセセが戦っていた。訓練用の剣を使い、目で追うのが大変なくらいのスピードでコボルたちが攻撃を繰り返している。それを避けるふたりもすごい。避けるだけではなくて、「もっと素早く! 遅い!」とか、「それで当たっても痛くねぇぞ!」とか聞こえてくる。……訓練ってこんな感じなんだ……。
ササとセセが疲れからか一瞬動きが止まる。それを狙ったかのようにディーンとバーナードの反撃が始まった。なんとも鈍い音を響かせて、剣と剣がぶつかり合う。力比べのようにぐぐぐ、と身体を前のめりにしたコボルトたちは、すいっと身体を後ろに引いたディーンとバーナードに驚いてそのままこけた。こけた顔の近くに、ざんっ
と剣を突き付けて「はい、訓練終了」とディーンがいった。
「うーん、強い」
「ディーン隊長とバーナードの強さは、魔物討伐隊でも秀でていましたからねぇ」
そうだったのか……。そしてそのふたりよりも強いルーカス陛下。……強い人がいっぱいいるなぁ、アルストル帝国。
「……あれ? アクア?」
「どうしたんだよ、こんなところに来るなんて」
……強さもだけど、息が上がっていないところが不思議だわ……。
「ちょっとふたりに用事があって。初めてのお茶会参加、ここにしようと思ってね」
人差し指と中指で招待状を挟んでふたりに見せる。彼らは顔を見合わせて、それからわたしのところに来て、招待状の差出人を確認した。
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
売られたケンカは高く買いましょう《完結》
アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。
それが今の私の名前です。
半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。
ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。
他社でも公開中
結構グロいであろう内容があります。
ご注意ください。
☆構成
本章:9話
(うん、性格と口が悪い。けど理由あり)
番外編1:4話
(まあまあ残酷。一部救いあり)
番外編2:5話
(めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
婚約破棄の日の夜に
夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。
ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。
そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。