110 / 153
2章
110話
「……アクアさま、私もご一緒してもよろしいですか?」
「え?」
「お茶会ということは、他の令嬢たちも来るでしょうから」
……多分、男性は参加しないから、ディーンたちはなにかあった時に対応が遅れるとは思う。わたしはじっと彼女を見つめる。彼女もわたしの目を見つめた。ユーニスはそのままにこっと微笑みを浮かべて、目を伏せてもう一度お茶を飲んだ。
「あのね、ユーニス。わたし、今回は『王族』として、ではなく、参加しようと思っていたの」
「と、言うと?」
「マクファーソン家は、元ダラム王国の国境近くでしょう?」
聞いたのはディーンたちからだけど……。それを聞いた時に、わたしは今回、『王族』としての姿ではなく、聖職者のローブを着て行こうと思っていたのだ。わたしの今の身分は聖職者ではないけれど……、お母さまたちを祈るのには、ぴったりな格好だと思うし……、なにより、聖職者のローブを着ると、気持ちが強くなれる気がした。
ドレス姿も優雅だな、とは思うけど……。
「……それは、ますますついて行きたくなりましたわ」
「へ?」
「私は『王族』としてのアクアさまは知っておりますが、聖職者としてのアクアさまは存じておりませんから」
楽しそうにいわれて、びっくりした。……王族としてのわたし? と首を傾げた。確かに貴族教育を受けている時はドレス姿だ。ドレスとハイヒールに慣れるために。ダンスもハイヒールで踊らないと、慣れないし……。
ああ、でもルーカス陛下がリードしてくれたダンスはとても踊りやすかった。
「……まぁ、別に構いませんが……。あ、待って。ルーカス兄さまに聞いてみます」
「そうですね、お許しが頂けたら……」
わたしがすいすいと空中に文字を書いてそっと手の中に閉じ込める。手を広げると連絡鳥が飛んでいく。返事はすぐに来た。大丈夫みたい。
「……アクアさまは本当に、ルーカス陛下に特別扱いされていますね」
「そう?」
「ええ、こんなにすぐに返事が来るのですから」
「……ははは……」
判断基準そこなのかな? ……でも、確かに返事が来るの早いよね……。ルーカス陛下も忙しいだろうから、あんまり負担掛けないようにしなくちゃなぁ……。
「えっと、では、お茶会の日付なのですが――……」
そこからはとんとん拍子に話が進んだ。転移石を使えばあっという間に辿り着くけれど、ササとセセに外の世界を見せるという目的もあるし、わたしもこの国のことを知りたいからのんびりと馬車の旅になる。楽しみだ。
「……ユーニス、本当について来て良いの?」
「構いませんよ。アクアさまの教育も、週に一回ですし……」
本当はもっと来たいのですが……と頬に手を添えるユーニスに、わたしは肩をすくめた。
「そんなにわたしに会いたいの?」
なんて、思わず自意識過剰なことを口にしてみると、ユーニスは一瞬目を丸くしてそれから、「そうですね」と優雅に笑う。
「アクアさまに教えたいことが、山のようにありますから」
「……ほ、ほどほどでお願いしまーす……」
「それはアクアさま次第ですわ」
確かに貴族の教育は受けていないけどね、覚えることが大量で先に覚えた内容から抜けて行っちゃいそう……。
……それにしても、本当に優雅だ。カップを持つ角度から始まって、口のつけ方、クッキーを摘む仕草でさえ……。わたしが見惚れていると、「アクアさまも出来るようになりますよ」と優しくいわれた。
「ユーニスは……どうしてわたしの家庭教師になろうと思ったの?」
「ルーカス陛下に頼まれたのもありますが……、個人的に、シャーリーさまとの交友関係もありましたから」
「え、そうだったの?」
わたしの記憶には全然ない……。
「はい。シャーリーさまはいつも優しく接してくれました。私のことを、友人だと言ってくれましたし……。ただ、アクアさまが産まれた頃に私も出産しまして、中々会えなくなってしまいました」
膝の上で手を組んで目を閉じた。……どこか、後悔しているように見えた。
「ユーニス……?」
「旅行のこと、聞いていたのです。少しの間、家族で旅行してくるから、お土産とお土産話を待っていて、と……」
「……そっか」
訃報を聞いた時、とても驚いただろう。そして、悲しみに暮れたのだろう。……それにしても、ユーニスもお母さまと仲が良かったのか……。……一体どうやって知り合ったんだろうなぁ……。
「……わたしにも、友人が出来ますかね?」
「出来ると思いますよ。……どのような令嬢が集まっているかでも、変わりますが……」
「まぁ、そうだよね……」
でも、友人が出来るのならとっても嬉しい。女友達いないもの……。屋敷で一緒に暮らしているメイドたちは、どちらかといえば家族のようなものだし。
わたしは期待と不安で胸がドキドキし始めた。……お茶会はまだ先だというのに、気が早いかもしれないね。
「え?」
「お茶会ということは、他の令嬢たちも来るでしょうから」
……多分、男性は参加しないから、ディーンたちはなにかあった時に対応が遅れるとは思う。わたしはじっと彼女を見つめる。彼女もわたしの目を見つめた。ユーニスはそのままにこっと微笑みを浮かべて、目を伏せてもう一度お茶を飲んだ。
「あのね、ユーニス。わたし、今回は『王族』として、ではなく、参加しようと思っていたの」
「と、言うと?」
「マクファーソン家は、元ダラム王国の国境近くでしょう?」
聞いたのはディーンたちからだけど……。それを聞いた時に、わたしは今回、『王族』としての姿ではなく、聖職者のローブを着て行こうと思っていたのだ。わたしの今の身分は聖職者ではないけれど……、お母さまたちを祈るのには、ぴったりな格好だと思うし……、なにより、聖職者のローブを着ると、気持ちが強くなれる気がした。
ドレス姿も優雅だな、とは思うけど……。
「……それは、ますますついて行きたくなりましたわ」
「へ?」
「私は『王族』としてのアクアさまは知っておりますが、聖職者としてのアクアさまは存じておりませんから」
楽しそうにいわれて、びっくりした。……王族としてのわたし? と首を傾げた。確かに貴族教育を受けている時はドレス姿だ。ドレスとハイヒールに慣れるために。ダンスもハイヒールで踊らないと、慣れないし……。
ああ、でもルーカス陛下がリードしてくれたダンスはとても踊りやすかった。
「……まぁ、別に構いませんが……。あ、待って。ルーカス兄さまに聞いてみます」
「そうですね、お許しが頂けたら……」
わたしがすいすいと空中に文字を書いてそっと手の中に閉じ込める。手を広げると連絡鳥が飛んでいく。返事はすぐに来た。大丈夫みたい。
「……アクアさまは本当に、ルーカス陛下に特別扱いされていますね」
「そう?」
「ええ、こんなにすぐに返事が来るのですから」
「……ははは……」
判断基準そこなのかな? ……でも、確かに返事が来るの早いよね……。ルーカス陛下も忙しいだろうから、あんまり負担掛けないようにしなくちゃなぁ……。
「えっと、では、お茶会の日付なのですが――……」
そこからはとんとん拍子に話が進んだ。転移石を使えばあっという間に辿り着くけれど、ササとセセに外の世界を見せるという目的もあるし、わたしもこの国のことを知りたいからのんびりと馬車の旅になる。楽しみだ。
「……ユーニス、本当について来て良いの?」
「構いませんよ。アクアさまの教育も、週に一回ですし……」
本当はもっと来たいのですが……と頬に手を添えるユーニスに、わたしは肩をすくめた。
「そんなにわたしに会いたいの?」
なんて、思わず自意識過剰なことを口にしてみると、ユーニスは一瞬目を丸くしてそれから、「そうですね」と優雅に笑う。
「アクアさまに教えたいことが、山のようにありますから」
「……ほ、ほどほどでお願いしまーす……」
「それはアクアさま次第ですわ」
確かに貴族の教育は受けていないけどね、覚えることが大量で先に覚えた内容から抜けて行っちゃいそう……。
……それにしても、本当に優雅だ。カップを持つ角度から始まって、口のつけ方、クッキーを摘む仕草でさえ……。わたしが見惚れていると、「アクアさまも出来るようになりますよ」と優しくいわれた。
「ユーニスは……どうしてわたしの家庭教師になろうと思ったの?」
「ルーカス陛下に頼まれたのもありますが……、個人的に、シャーリーさまとの交友関係もありましたから」
「え、そうだったの?」
わたしの記憶には全然ない……。
「はい。シャーリーさまはいつも優しく接してくれました。私のことを、友人だと言ってくれましたし……。ただ、アクアさまが産まれた頃に私も出産しまして、中々会えなくなってしまいました」
膝の上で手を組んで目を閉じた。……どこか、後悔しているように見えた。
「ユーニス……?」
「旅行のこと、聞いていたのです。少しの間、家族で旅行してくるから、お土産とお土産話を待っていて、と……」
「……そっか」
訃報を聞いた時、とても驚いただろう。そして、悲しみに暮れたのだろう。……それにしても、ユーニスもお母さまと仲が良かったのか……。……一体どうやって知り合ったんだろうなぁ……。
「……わたしにも、友人が出来ますかね?」
「出来ると思いますよ。……どのような令嬢が集まっているかでも、変わりますが……」
「まぁ、そうだよね……」
でも、友人が出来るのならとっても嬉しい。女友達いないもの……。屋敷で一緒に暮らしているメイドたちは、どちらかといえば家族のようなものだし。
わたしは期待と不安で胸がドキドキし始めた。……お茶会はまだ先だというのに、気が早いかもしれないね。
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
売られたケンカは高く買いましょう《完結》
アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。
それが今の私の名前です。
半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。
ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。
他社でも公開中
結構グロいであろう内容があります。
ご注意ください。
☆構成
本章:9話
(うん、性格と口が悪い。けど理由あり)
番外編1:4話
(まあまあ残酷。一部救いあり)
番外編2:5話
(めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
婚約破棄の日の夜に
夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。
ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。
そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。