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2章
116話
それからわたしたちは、コーディの案内で美味しい屋台までたどり着いた。屋台で売られていたのは串焼きだった。お肉が連なっていて、食欲をそそる香りが鼻腔をくすぐる。馬車で移動しただけ、だけど……お腹は空いた!
「……食べてみます?」
「うん!」
コーディに尋ねられて勢いよくうなずく。すると、先にバーナードが串焼きを買うことにしたのか、店主と話して人数分の串焼きを手にして戻ってきた。コーディの分もきちんとあることに優しさを感じる。
「熱いから気をつけろよ」
「ありがとう」
串焼きを受け取ってお礼を伝えると、バーナードは「ああ」とだけいって、他の人にも渡しにいった。全員に串焼きを渡し終えたら、ササとセセが尻尾を嬉しそうにブンブン振っているのに気付いて、
「食っていいぞ」
と、声を掛けていた。ササとセセはピンと尻尾を上に伸ばして、「食べる!」と元気にバーナードに伝えた。よほど食べたかったらしい。……そういえば、こういうのは初めて見るのかもしれないね。わたしも食べようと串焼きにかぶりつく。
「……美味しい!」
噛んだ瞬間にじゅわっと肉汁が溢れた。味付けは塩のみのシンプルなものなんだけど、それがまたお肉の味を引き立たせている。……それに食べ歩きなんて滅多にしないから、ちょっとした背徳感を感じて余計に美味しいのかも。
「相変わらずここら辺の屋台は腕良いよな」
「本当にね」
「ディーンたちは食べたことあるんだ?」
ふたりともうなずいた。そっか、美味しい屋台他にもあるんだろうなぁと思いながら、みんなで歩く。屋台にはいろんなものがあった。食べたことのない料理も多く、気になりつつも全部食べられるわけじゃないから、ほんっとうに吟味に吟味を重ねて胃袋が許す限りの食べ物を食べた。……それでも食べ過ぎたような気がしたけど、ディーンとバーナードがどこかホッとしたような表情をしていたから首を傾げる。
「美味しかった~」
「それは良かった」
「お前、ちゃんと腹いっぱい食えたんだな……」
「食べられるよ、なんで?」
「……いや、あまり食事を摂ってないように見えたから」
結構食べていると思うんだけどなぁ……。こっちの国に来てからは余計に。他の人たちが食べているところを思い出して、「うーん」と唸る。……確かにみんなわたしよりも食べていたかもしれないけど……。
「食べる量は昔より増えているんだけどなぁ……」
「そうだったのか……」
空腹を満たすために食べているわけで……。あ、でも美味しい食事は大好きよ。……それに、ルーカス陛下に誘われて食事を一緒に食べていた最初のほうは緊張していて中々喉を通らなかった。最近と比べると、結構わたしも慣れてきたなぁって気はするね、うん。
「アクアさまは少食だったのですか?」
「そうでもないと思うけど……」
「オレらよりは食べないよね」
「……そりゃ、あなたたちとは胃袋の容量が違うわよ……」
ディーンもバーナードも屋敷に居る時は稽古だといって、他の人たちを鍛えている肉体労働。そういう人たちはいっぱい食べないと身体がもたないだろう。わたしは屋敷に居る時、肉体労働しないもの……。ええ、やろうと思ったらダメっていわれたわ……。料理も掃除も出来るんだけどなぁ……。たまにこういうの食べたい! ってワガママをいう時はあるけど……そのくらい?
それに間食もしているし……うん、結構食べているんじゃないかな。
「身体を動かしたい時はどうすれば良いかなぁ……」
……なんか、このままだと太っちゃう気がしてきた。きちんと身体を動かして適度に運動しないといけないよね……。
「屋敷の周りを走るとか? 中を歩くだけでもかなりの運動量になりそうだけど」
「ああ、なるほど……。ダンスの練習も週に一回だし、走るのは良いかも」
わたしが起きるのは日の出と共に、だからその時間に歩くのは他の人を起こしちゃいそうだし、日中はみんな仕事しているから邪魔しちゃ悪いし……。うん、時間を見つけて屋敷の周り走ってみようかな。
「アクアさまが良ければダンスの練習日を増やしますが?」
「勘弁してください」
「ふふ」
さっと両手を上げて降参のポーズを取ると、ユーニスが可笑しそうに笑った。
ちなみに屋台の中で一番美味しかったのはクレープだ。薄いのにモチモチしている皮と、中の果物とクリームの甘さが絶妙だった。ササとセセはやはり最初に食べた串焼きが美味しかったみたいで、再度注文して食べていた。
「コボルトってお肉が好きなの?」
「お肉、美味しいから、好きだ!」
「でも、多分、コボルトによる!」
コボルトにも好みってあるんだろうな。ココやララならクレープのほうが好きかもしれないね。
「腹ごしらえも済んだし、宿屋に行くか」
「はーい」
そうして屋台通りから宿屋へと戻る。わたしとユーニスはひとり部屋、他のみんなはふたり部屋らしく、ディーンとササ、バーナードとセセの組み合わせで泊まるらしい。
「それじゃあ、また明日ね」
「うん、おやすみ」
「おやすみ~!」
そういってそれぞれの部屋に入った。部屋の中はシンプルだった。わたしは部屋の鍵を掛けてから、荷物を置いてベッドに座る。お風呂も備え付けられていたから、今日は夜にお風呂に入ろうと思い水魔法を使った。浴槽に水をためて、火魔法で温める!
簡単で良いね。ついでに着ていた服も一緒に洗っちゃう。あー、この感じ懐かしい!
髪も身体も服もピカピカになって満足した。パジャマに着替えて風魔法と火魔法を組み合わせて髪を乾かしたり服を乾かしたりしてから、ベッドに飛び込んでそのまま眠りについた。
「……食べてみます?」
「うん!」
コーディに尋ねられて勢いよくうなずく。すると、先にバーナードが串焼きを買うことにしたのか、店主と話して人数分の串焼きを手にして戻ってきた。コーディの分もきちんとあることに優しさを感じる。
「熱いから気をつけろよ」
「ありがとう」
串焼きを受け取ってお礼を伝えると、バーナードは「ああ」とだけいって、他の人にも渡しにいった。全員に串焼きを渡し終えたら、ササとセセが尻尾を嬉しそうにブンブン振っているのに気付いて、
「食っていいぞ」
と、声を掛けていた。ササとセセはピンと尻尾を上に伸ばして、「食べる!」と元気にバーナードに伝えた。よほど食べたかったらしい。……そういえば、こういうのは初めて見るのかもしれないね。わたしも食べようと串焼きにかぶりつく。
「……美味しい!」
噛んだ瞬間にじゅわっと肉汁が溢れた。味付けは塩のみのシンプルなものなんだけど、それがまたお肉の味を引き立たせている。……それに食べ歩きなんて滅多にしないから、ちょっとした背徳感を感じて余計に美味しいのかも。
「相変わらずここら辺の屋台は腕良いよな」
「本当にね」
「ディーンたちは食べたことあるんだ?」
ふたりともうなずいた。そっか、美味しい屋台他にもあるんだろうなぁと思いながら、みんなで歩く。屋台にはいろんなものがあった。食べたことのない料理も多く、気になりつつも全部食べられるわけじゃないから、ほんっとうに吟味に吟味を重ねて胃袋が許す限りの食べ物を食べた。……それでも食べ過ぎたような気がしたけど、ディーンとバーナードがどこかホッとしたような表情をしていたから首を傾げる。
「美味しかった~」
「それは良かった」
「お前、ちゃんと腹いっぱい食えたんだな……」
「食べられるよ、なんで?」
「……いや、あまり食事を摂ってないように見えたから」
結構食べていると思うんだけどなぁ……。こっちの国に来てからは余計に。他の人たちが食べているところを思い出して、「うーん」と唸る。……確かにみんなわたしよりも食べていたかもしれないけど……。
「食べる量は昔より増えているんだけどなぁ……」
「そうだったのか……」
空腹を満たすために食べているわけで……。あ、でも美味しい食事は大好きよ。……それに、ルーカス陛下に誘われて食事を一緒に食べていた最初のほうは緊張していて中々喉を通らなかった。最近と比べると、結構わたしも慣れてきたなぁって気はするね、うん。
「アクアさまは少食だったのですか?」
「そうでもないと思うけど……」
「オレらよりは食べないよね」
「……そりゃ、あなたたちとは胃袋の容量が違うわよ……」
ディーンもバーナードも屋敷に居る時は稽古だといって、他の人たちを鍛えている肉体労働。そういう人たちはいっぱい食べないと身体がもたないだろう。わたしは屋敷に居る時、肉体労働しないもの……。ええ、やろうと思ったらダメっていわれたわ……。料理も掃除も出来るんだけどなぁ……。たまにこういうの食べたい! ってワガママをいう時はあるけど……そのくらい?
それに間食もしているし……うん、結構食べているんじゃないかな。
「身体を動かしたい時はどうすれば良いかなぁ……」
……なんか、このままだと太っちゃう気がしてきた。きちんと身体を動かして適度に運動しないといけないよね……。
「屋敷の周りを走るとか? 中を歩くだけでもかなりの運動量になりそうだけど」
「ああ、なるほど……。ダンスの練習も週に一回だし、走るのは良いかも」
わたしが起きるのは日の出と共に、だからその時間に歩くのは他の人を起こしちゃいそうだし、日中はみんな仕事しているから邪魔しちゃ悪いし……。うん、時間を見つけて屋敷の周り走ってみようかな。
「アクアさまが良ければダンスの練習日を増やしますが?」
「勘弁してください」
「ふふ」
さっと両手を上げて降参のポーズを取ると、ユーニスが可笑しそうに笑った。
ちなみに屋台の中で一番美味しかったのはクレープだ。薄いのにモチモチしている皮と、中の果物とクリームの甘さが絶妙だった。ササとセセはやはり最初に食べた串焼きが美味しかったみたいで、再度注文して食べていた。
「コボルトってお肉が好きなの?」
「お肉、美味しいから、好きだ!」
「でも、多分、コボルトによる!」
コボルトにも好みってあるんだろうな。ココやララならクレープのほうが好きかもしれないね。
「腹ごしらえも済んだし、宿屋に行くか」
「はーい」
そうして屋台通りから宿屋へと戻る。わたしとユーニスはひとり部屋、他のみんなはふたり部屋らしく、ディーンとササ、バーナードとセセの組み合わせで泊まるらしい。
「それじゃあ、また明日ね」
「うん、おやすみ」
「おやすみ~!」
そういってそれぞれの部屋に入った。部屋の中はシンプルだった。わたしは部屋の鍵を掛けてから、荷物を置いてベッドに座る。お風呂も備え付けられていたから、今日は夜にお風呂に入ろうと思い水魔法を使った。浴槽に水をためて、火魔法で温める!
簡単で良いね。ついでに着ていた服も一緒に洗っちゃう。あー、この感じ懐かしい!
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