恩を返して欲しいのはこっちのほうだ!

秋月一花

文字の大きさ
120 / 153
2章

120話

しおりを挟む
 そんな衝撃の事実を聞きつつ、わたしたちの旅路は順調に進んでいた。次に向かった村では火事が起きて森が焼けてしまった後だったので、燃えてしまった木々や動物の魂を鎮めるために浄化をしたり、村人たちに少しでも希望が残せるようにと使わないお金を渡した。お金はあって困るようなものじゃないしね。少しでも村人たちの役に立てるなら、そちらのほうが良いに決まっている。
 その次に訪れた町は、怪我人で溢れていた。どうやら、魔物が襲ってきたらしい。警備隊が戦ったが深手を負い、このままこの町は滅びるのか……というところでわたしたちが辿り着き、ディーンはササとセセを連れてその魔物を討伐。町は一気に賑わいを取り戻した。
 もちろん、わたしは怪我人を治療した。とても人数が多かったから、複数にわけて回復させた。……しっかし、警備隊がダメだったからって町の人たちが立ち上がるとは……。血気盛んというか、それだけ追い詰められていたのね……。もちろん、浄化もした。
 目的地につくまでに、そんなことをしていたらディーンたちに「休まなくて平気?」と聞かれた。平気平気、といったけれど、さすがにこうも立て続けに様々なことが起こるは思わなかったから、ちょっと疲労している気はする。

「……行く先行く先、問題だらけなのはなぜなの……」
「……陛下が即位してから五年……あ、六年か。しか経っていないからね、まだ国全体を把握できないさ」
「そうかもしれないけどさ……。あ、違うな。把握できないというか、自分が信頼できる人が少ないんだわ」
「アクアさま、それはどういう……?」
「だって、自分が信頼できる人に任せていれば、安心できるじゃない?」

 陛下には安心して使える人がいないってこと。十五歳で即位したということは、恐らくいろいろな人の腹芸を見せられただろうし……。

「……それに、今の領主たちは前王陛下の頃からの人でしょ?」
「そうだろうね。陛下が決めたのって、元ダラム王国の領主だけかも」
「……そういえば、その人ってどんな人なのか知らないわ」
「オレも詳しくは知らないや。会ったこともないかも……」
「ディーンでも?」

 公爵家の令息としていろんな場所に顔が広いかと思ったけど、そうでもないみたい?
 そしてユーニスがなにかを考えるように顎に手を掛けていた。「ユーニス?」と声を掛けると、ユーニスはハッとしたように顔を上げて、

「すみません、考え事をしていました」

 と、謝った。……別に謝らなくてもいいのだけど……。

「なにを考えていたのか、聞いても良いかしら?」
「あ、はい。アクアさまなら、国中どこに向かわれても歓迎されるだろうな、と考えてしまって……」
「わたしが?」
「ええ、アクアさまは回復魔法も浄化も他の魔法だってお得意でしょう?」

 土魔法以外はまぁ、そういえるのかな? ……どうして土魔法だけああなのだろう……。いいけどね、ミニゴーレム、可愛いし。

「アクアさまがいれば、いろんなことが解決しそうで……」
「……わたしにそんな能力ないよ……」
「ふふ。きっと、そう思われているのはアクアさまだけですわ」

 ……わたしで出来ることなら協力はしたいけどね、わたしだって王族の血が流れているわけだし……。……そうか、そういう手もあるのかな……?
 わたしが、ルーカス陛下に出来ることも限られていると思っていたけれど、こうやって各地を回ってそこでなにが起きたのかをルーカス陛下に報告出来れば……!

「――ありがとう、ユーニス! なんだかアイディアが湧いて来たわ!」
「え、ど、どういたしまして……?」

 目を丸くしてぱちくりと瞬かせるユーニスに、わたしはぐっと拳を握って気合を入れた。許可されるかどうかはわからないけれど、考えることは自由よね!
 そんな会話をしていると、馬車が停止した。どうやらやっと、お茶会の会場に辿り着いたらしい。町に入り馬車から降りると、ふわりと花の甘い香りが鼻腔をくすぐった。

「どうやら、花祭りの真っ最中のようね」
「そのようですね」
「こんにちは、旅の方々ですか?」

 少女が話し掛けてきた。わたしたちが首を縦に振ると、すっと花を差し出す。

「今日は花祭りの日です。お花をどうぞ!」
「あ、ありがとう」

 みんなに一本ずつお花をくれた。にこっと笑って、少女は去って行った。

「……まずは、お世話になるところから向かおうか」
「そうだね」

 まずはマクファーソン男爵家に向かわなくては。……それにしても、ここは今まで見てきたどの町や村よりも活気が溢れている気がするなぁ。領主であるマクファーソン男爵の手腕なのかしら?
 マクファーソン男爵家に向かいながら、町の様子を眺めてそう思ったのだ。……あと、一番瘴気が薄い気がする。きっとここに暮らしている人たちは、今の暮らしに満足している人が多いのだと思う。とっても素敵よね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。

亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。 だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。 婚約破棄をされたアニエル。 だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。 ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。 その相手とはレオニードヴァイオルード。 好青年で素敵な男性だ。 婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。 一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。 元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...