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2章
123話
アルマに連れられて、ドレッサーの前にすとんと座らされた。それから、櫛を取り出したアルマがせっせとわたしの髪を梳く。鏡越しに見えるその表情はとても楽しそうだ。ユーニスもドレッサーの前に立って、アルマが髪を梳くのを見つめていた。
「人の髪の毛を弄るの、得意だったりするのかしら?」
「ええ。こっそりメイドたちに協力してもらっているのです。アクアさまの髪は真っ直ぐで羨ましいですわ」
「確かに、いつも真っ直ぐですよね」
「そう? あんまり気にしたことなかった」
そういえばお母さまも真っ直ぐだったような気がする。遺伝かな? お父さまの髪はどうだったんだろう。いつもオールバックにしていたような気がする。だから、お父さまの髪はチクチクしていた記憶がある。ヘアワックスを使っていたのだろう。
「ポニーテールにして、花を飾りましょう」
「花祭りですものね」
「……髪に花を飾る……?」
どうやって? と思っていたら、素早くわたしの髪をまとめた。ポニーテールになったわたしの髪に、器用に花が刺さっていく。縛ったところ隠すように花で飾られていく。……本当に器用ね。と感心していると、「出来ましたわ」とアルマが満足げに告げた。
鏡の中の自分を見てみると、そこには確かに花で飾られたわたしがいた。
「すごいなぁ……」
「ふふ、慣れたら誰でも出来ますわ」
「ユーニスもやってもらおう?」
「……そうですね、お願いできますか?」
「もちろんです!」
腕が鳴りますわ、と嬉しそうに笑うアルマ。ユーニスと場所を交換して、今度はわたしが眺める。
ユーニスの髪を下ろして、毛先のほうから櫛で梳いていく。結んでいたからかちょっと癖がついている気がする。それを直すように水の魔法と火の魔法を組み合わせているように見えた。真っ直ぐになったところを乾かすように風の魔法も使っている。ごくごく弱い魔法を組み合わせているようだ。
「……器用ね」
「……わたくしがなにをしているのか、見ただけでわかるのですか?」
「え? うん。水と火の魔法で髪の毛を真っ直ぐに直して、濡れたところを風魔法で乾かしたでしょ?」
「……これを最初に見た人は、なにをやっているのかさっぱりわからない、と言われておりましたのに……」
感心されてしまった。
「わたくし、あまり魔法は得意ではありませんの。威力のある魔法は出せないのですが、このように微力な魔法ならなんとかコントロール出来るのです」
「へぇ……」
「実はお父さまも魔法、苦手なんですよ」
内緒ですけど、と付け足した。……男爵も魔法苦手なんだ。
「それは意外ですわね。確か、魔物を倒して男爵になったと……」
「はい。お父さまは元々傭兵だったそうです。この地で魔物を倒していたらしくて……、とても強い魔物と遭遇して、なんとか勝てた、と。そしたら男爵になっちゃったとお茶目に話してくださいました」
――傭兵。聞いたことはある。騎士とは違い、お金で動く人。自分に不利なことはしないイメージがあるけれど、強い魔物を倒してくれたのは、住民に被害が及ぶと考えたから?
「お母さまはここから近い町の領主の娘だったそうです。歳が近いからという理由で嫁がされたそうですが、お父さまはそれだとお母さまが可哀想だ、と言ったそうです」
「政略結婚ってことだもんね」
「そしたら、お母さまがキョトンとして、『なら、あなたがわたくしを幸せにしてくださいな』って!」
思わず三人でキャーっと騒いだ。ラブロマンスって身近にあるものなのね……!
「貴族の結婚は政略結婚が主でしょう? わたくしもいつか嫁がないといけません。その時は、父と母のように愛せたら良いなぁと思いますの」
頬を赤く染めてそういうアルマはとても可愛かった。……結婚の考え方って色々あるんだなぁ。
「ユーニスはどうだったの?」
「幼い頃からの婚約者でしたので、普通に結婚しましたねぇ……」
ラブロマンスというよりはその人がいて当たり前というか……と言葉を続けるのを聞いて、愛って人それぞれなんだなぁとしみじみ思った。
ユーニスの髪型は三つ編みをお団子にしたような髪型になり、やっぱり花で飾られた。最後にアルマが自らの髪型を弄り、横に流す三つ編みにすると網目に花を飾っていく。
「――さぁ、花祭りに行きましょう!」
アルマの準備が終わり、すくっと立ち上がって微笑むのを見て、わたしたちはこくりとうなずいた。
部屋から出て行き玄関に向かうと、既にディーンたちが待機していた。そして、わたしたちの髪型が花で飾られているのを見て、
「似合っているよ」
といってくれたのがディーン。
「……花祭りってそういうことなのか……?」
と、ちょっと不思議そうに口にしたのがバーナード。
「お花!」
「きれい!」
ササとセセはキャッキャとはしゃいだ。男爵と男爵夫人は屋敷に残るとのことなので、わたしたちは挨拶をしてから屋敷を出た。町の中央広場に向かうと、至る所に花が飾られているのが綺麗だった。店の看板や外灯にも花が飾られている。
「花がたくさんって見応えがあるわね……!」
「本当に……」
「あ、こちらでフラワーシャワーをやっていますよ」
アルマの案内で、町の中央広場に用意されたステージの前へと向かう。みんな楽しそうに降り注ぐ花を取ろうとしていた。
「落ちて来る花を受け取れたら、良いことがあるって伝えられているのです」
「そうなんだ……じゃあ、チャレンジしてみよう!」
「はい!」
アルマとユーニスと一緒に落ちて来る花を取ろうと、集まっている人たちの元へ駆け寄った。
「人の髪の毛を弄るの、得意だったりするのかしら?」
「ええ。こっそりメイドたちに協力してもらっているのです。アクアさまの髪は真っ直ぐで羨ましいですわ」
「確かに、いつも真っ直ぐですよね」
「そう? あんまり気にしたことなかった」
そういえばお母さまも真っ直ぐだったような気がする。遺伝かな? お父さまの髪はどうだったんだろう。いつもオールバックにしていたような気がする。だから、お父さまの髪はチクチクしていた記憶がある。ヘアワックスを使っていたのだろう。
「ポニーテールにして、花を飾りましょう」
「花祭りですものね」
「……髪に花を飾る……?」
どうやって? と思っていたら、素早くわたしの髪をまとめた。ポニーテールになったわたしの髪に、器用に花が刺さっていく。縛ったところ隠すように花で飾られていく。……本当に器用ね。と感心していると、「出来ましたわ」とアルマが満足げに告げた。
鏡の中の自分を見てみると、そこには確かに花で飾られたわたしがいた。
「すごいなぁ……」
「ふふ、慣れたら誰でも出来ますわ」
「ユーニスもやってもらおう?」
「……そうですね、お願いできますか?」
「もちろんです!」
腕が鳴りますわ、と嬉しそうに笑うアルマ。ユーニスと場所を交換して、今度はわたしが眺める。
ユーニスの髪を下ろして、毛先のほうから櫛で梳いていく。結んでいたからかちょっと癖がついている気がする。それを直すように水の魔法と火の魔法を組み合わせているように見えた。真っ直ぐになったところを乾かすように風の魔法も使っている。ごくごく弱い魔法を組み合わせているようだ。
「……器用ね」
「……わたくしがなにをしているのか、見ただけでわかるのですか?」
「え? うん。水と火の魔法で髪の毛を真っ直ぐに直して、濡れたところを風魔法で乾かしたでしょ?」
「……これを最初に見た人は、なにをやっているのかさっぱりわからない、と言われておりましたのに……」
感心されてしまった。
「わたくし、あまり魔法は得意ではありませんの。威力のある魔法は出せないのですが、このように微力な魔法ならなんとかコントロール出来るのです」
「へぇ……」
「実はお父さまも魔法、苦手なんですよ」
内緒ですけど、と付け足した。……男爵も魔法苦手なんだ。
「それは意外ですわね。確か、魔物を倒して男爵になったと……」
「はい。お父さまは元々傭兵だったそうです。この地で魔物を倒していたらしくて……、とても強い魔物と遭遇して、なんとか勝てた、と。そしたら男爵になっちゃったとお茶目に話してくださいました」
――傭兵。聞いたことはある。騎士とは違い、お金で動く人。自分に不利なことはしないイメージがあるけれど、強い魔物を倒してくれたのは、住民に被害が及ぶと考えたから?
「お母さまはここから近い町の領主の娘だったそうです。歳が近いからという理由で嫁がされたそうですが、お父さまはそれだとお母さまが可哀想だ、と言ったそうです」
「政略結婚ってことだもんね」
「そしたら、お母さまがキョトンとして、『なら、あなたがわたくしを幸せにしてくださいな』って!」
思わず三人でキャーっと騒いだ。ラブロマンスって身近にあるものなのね……!
「貴族の結婚は政略結婚が主でしょう? わたくしもいつか嫁がないといけません。その時は、父と母のように愛せたら良いなぁと思いますの」
頬を赤く染めてそういうアルマはとても可愛かった。……結婚の考え方って色々あるんだなぁ。
「ユーニスはどうだったの?」
「幼い頃からの婚約者でしたので、普通に結婚しましたねぇ……」
ラブロマンスというよりはその人がいて当たり前というか……と言葉を続けるのを聞いて、愛って人それぞれなんだなぁとしみじみ思った。
ユーニスの髪型は三つ編みをお団子にしたような髪型になり、やっぱり花で飾られた。最後にアルマが自らの髪型を弄り、横に流す三つ編みにすると網目に花を飾っていく。
「――さぁ、花祭りに行きましょう!」
アルマの準備が終わり、すくっと立ち上がって微笑むのを見て、わたしたちはこくりとうなずいた。
部屋から出て行き玄関に向かうと、既にディーンたちが待機していた。そして、わたしたちの髪型が花で飾られているのを見て、
「似合っているよ」
といってくれたのがディーン。
「……花祭りってそういうことなのか……?」
と、ちょっと不思議そうに口にしたのがバーナード。
「お花!」
「きれい!」
ササとセセはキャッキャとはしゃいだ。男爵と男爵夫人は屋敷に残るとのことなので、わたしたちは挨拶をしてから屋敷を出た。町の中央広場に向かうと、至る所に花が飾られているのが綺麗だった。店の看板や外灯にも花が飾られている。
「花がたくさんって見応えがあるわね……!」
「本当に……」
「あ、こちらでフラワーシャワーをやっていますよ」
アルマの案内で、町の中央広場に用意されたステージの前へと向かう。みんな楽しそうに降り注ぐ花を取ろうとしていた。
「落ちて来る花を受け取れたら、良いことがあるって伝えられているのです」
「そうなんだ……じゃあ、チャレンジしてみよう!」
「はい!」
アルマとユーニスと一緒に落ちて来る花を取ろうと、集まっている人たちの元へ駆け寄った。
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