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3章
139話
――まあ、過去は過去、現在は現在。わたしが考えても仕方ないことは、考えないようにしよう。
誰が王城内部のゴシップを知りたいというのか……。
……いや、知りたそうな人は結構いるかな、噂好きの人とか、新聞記者とか……。
「アクア? 大丈夫?」
ディーンが心配そうにわたしを見た。
「ちょっといろいろ複雑な気持ちになっただけ……」
「だろうな、私もその話を聞いて最初にそうなった」
身内のことだからだろうか、それとも、ここの王族もいろいろ狂っていることに気付いてしまったからだろうか……、ほんっとうに複雑なんですけど!
「……とりあえず、礼拝堂に向かっても良いですか? 落ち着きたい……」
「では、こちらへ……」
モーリスさんがわたしたちを礼拝堂へと案内しようとしてくれた時、人影が見えた。
「すみません、こちらにアクアさまがいらっしゃると聞いたのですが……」
――と、ひょっこりと顔を覗かせたのはアルマだった。
わざわざわたしを探してここまで来てくれたんだ! とぱぁっと表情を明るくして、彼女の元へ向かった。
「アルマ! 久しぶり!」
アルマはわたしの姿に気付いて、同じように表情を明るくさせた。
顔を見るのは本当に久しぶりで、以前会った時よりももっと綺麗になっていた気がした。
「アクアさま、お久しぶりございます。お元気でしたか?」
「元気元気! すっごく元気! アルマは?」
「はい、私も元気でした!」
きゃっきゃとはしゃぐわたしたちを、微笑ましそうに見る人たち……。
「……礼拝堂は良いのか?」
ぼそっとバーナードが呟くのを聞いて、わたしはハッとしたように目を見開いた。
アルマに会えたのが嬉しくて、つい……。
「もちろん、行くわ」
「では、行きましょうか」
今度こそモーリスさんが歩き出した。
わたしたちは、その後に続く。
……やっぱり注目を浴びたけれど、こればかりはね……。
「結構早めに出たのですが、やはりアクアさまたちのほうが早かったですね」
「近いからね」
そんな会話をしながら、礼拝堂へ向かう。
「――ここが、神殿の大聖堂となります」
――大聖堂?
「礼拝堂と大聖堂があるの?」
モーリスさんはうなずいた。
「一般の方には礼拝堂、聖職者の方々は大聖堂に案内しております」
リリィがフォローのように教えてくれた。
……もしかしたら、わたしのことを考えてくれたのかな。
一般の人たちと同じように礼拝堂へ行ったら、かなり注目を浴びると思って……?
……それにしても、礼拝堂と大聖堂をわけているって普通なのかしら……?
「大聖堂は『大聖女ステラ』が作り上げました」
「……そうなんだ……」
……作り上げたってどういうことだろう……?
とりあえず、大聖堂に来たのなら、お祈りをしないとね!
わたしはスタスタと前へ行って神の像を見上げる。
そして、目を閉じて胸元で手を組む。
――『大聖女ステラ』の肖像画が自分と似ていることに、本気で驚きました……。
……水色に近い銀髪に、アメジストの瞳。
――わたしとルーカス兄さま、ディーンは似たような色だ。
でも、わたしだけ、彼らと違うところがある。
それは目の色。わたしの目だけ、色が濃い。
記憶を受け入れた時に出会った『リネット』の瞳は、ルーカス兄さまに近かった。
――なぜ――……?
それを知ったところで、どうにかなるってわけじゃないと思うけど……。
気になる、よねぇ……。
――神よ、これは試練ですか――……?
って、聞いたところで、神さまも困惑するよね、きっと。
ただ――神さまは、見守ってくれてはいると思うから。
――どうか、わたしたちのことを見守っていてください――……。
心の中でそう呟くと、返事のように身体が温かくな――……うん?
温かい、けれど……これは……。ばっとみんなのほうを見ると、キラキラと淡く輝いていた……。
今日も絶好調なんですね、神よ!
ディーンとバーナードはもう何度も神の祝福を受けているから、慣れた様子で受け止めているけれど……。
ルーカス兄さまは少し呆れたように。
リリィは困惑して、モーリスさんは呆然とわたしを見ていた。
「――これは、神の祝福……? 姉さんが祈っただけではこんなことはなかったのに……」
うそでしょ!?
アルマは初めて神の祝福を受けたからか、混乱しているように見えた。
……なんか、ごめん……。
「……アクアの場合、神力のコントロールが必要そうだな……」
「……あはは」
……いや、笑い事じゃないよね、これ……。
そういえば、ダラム王国で聖女をやっていた時はこんなことなかったのになぁ?
謎だわ……!
「あの、すみません。少し、アクアさまとお話しさせてくれませんか?」
混乱から立ち直ったアルマが、すっと手を上げた。
「――良いだろう」
ルーカス兄さまが許可を出し、わたしとアルマ以外は大聖堂から出ていった。
わたしになにか、用事でもあるのかな?
アルマは真剣な表情を浮かべて、わたしをみた。
そして――……
「アクアさま、どうか私を、侍女にしてください」
――と、いったのだ――……。
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