140 / 153
3章
140話
アルマの言葉に、私は目を大きく見開いた。
「じ、侍女?」
「はい。私はアクアさまのもとで働きたいのです」
ちょっと頭が混乱してきた。
どうしてわたしのもとで働きたいと思ったのだろう?
「文通をして、アクアさまの人柄がよくわかったつもりです。それに、アクアさまに女性の護衛が必要だとも思いました」
女性の、護衛?
――って、まさか、アルマがその護衛になろうとしている!?
「ディーンさまやバーナードさまよりも弱いことは自覚しております。ですが、どうか、私を使っていただきたいのです」
「え、えええ……?」
わたしは困惑した。
そりゃあこんな提案されるとは思っていなかったからね!
アルマの真剣な表情に、どう答えれば良いのかわからない。
……でも、きちんと彼女と向き合って、答えを出さなくては。
「……いつから、考えていたの?」
「アクアさまの手紙が二回目に届いたときには……」
ってことは、結構前から考えていたってことだよね。
「アルマのご両親はそのことを……」
「存じております。両親からは、『あなたの好きなようになさい』と」
良いのかマクファーソンのご両親!
断る理由はないけれど、わたしは結構危険な立ち位置にいる、と思う。
「危ないことがあるかもしれないよ?」
できるだけ、そういう危険からは遠ざけたいとは思う。でも、わたしの侍女ってことは、きっとずっと一緒にいるつもりなのだろう。
――巻き込むことになるのが、怖い。
「そのときは、必ずお守りします。……私たちで」
「え?」
アルマの服から、ぴょこんとスライムが飛び出た。
つるつるボディのスライム。マクファーソン家で見た魔物。一緒に来ていたんだ。
「……ん? たちっていった?」
「はい。私はこの子を従魔にしました」
あまり聞かない言葉を聞いてきょとんとした顔をすると、アルマは簡単に説明してくれた。
魔物と契約を交わすことで、自分と一緒に戦ってくれるらしい。
で、その契約を交わした魔物のことを従魔と呼ぶそうだ。契約を交わした人間のことは魔物使いと呼ぶらしい。
……わたしたちとコボルトとは関係性が違うみたいね。
「そっかぁ……。はぐれスライムがアルマの仲間になったのね」
「はい」
つるつるぷにぷにのスライムを愛しそうに撫でて、アルマは笑う。
「そして、出来ればアクアさまに真名の誓いをしたいと考えております」
「ええっ!?」
まさかアルマに真名の誓いといわれるとは思わなくて、大きな声を上げてしまった。
同性同士の真名の誓い。
それは決して裏切りませんというか……親友になりましょう、って感じだったハズ……!
わ、わたしとアルマが親友に?
「……ダメ、でしょうか……?」
「えっと、待って。混乱しているの。嬉しいけれど、真名の誓いはもうちょっとあとでもいいのでは……?」
「いえ、是非、いまここで。この神聖な場所で誓いたいと思い、ここまで来たのです」
アルマはにっこりと微笑んでそういった。
彼女は、どんな気持ちでここまで来たのだろう……?
「ええと……、わたしと親友になりたいって考えてくれたんだよね?」
こくり、と彼女の首が動く。
「……嬉しいけれど、困惑が勝っているの。文通をして、アルマの人柄はわかっているつもりだけど、本当につもりだから……。でも、ええと、本当にアルマがそれを望むのなら、――いいよ」
ぱぁっとアルマの表情が明るくなった。心なしか、スライムも。ぴょんと跳ねて、着地する。弾力のある体がぷるるんと揺れた。
――どうやらスライムも一緒に真名の誓いをするみたいだ。
アルマはわたしに向かい、カーテシーをした。
「アルマ・エメライン・サラ・マクファーソン。我が真名に掛けて、アクア・ルックスさまの良き友になることを誓います」
それに同調するようにスライムが跳ねた。
「シオンもアクアさまのことが好きになったようです」
「……そっかぁ。よろしくね、シオン。そして、アルマ」
「はい」
わたしはそっと手を差し出した。
ぎゅっと握り返されて、ぴょんとスライム――シオンが跳ねて、わたしたちの手に乗った。ぷにぷにのボディはひんやりとしていて、心地よかった。
「それでは今日から、アクアさまの侍女になりますね」
「今日から!?」
もしかして、アルマが大きな荷物を持っているのは、そのためだったの? と目を丸くして驚いていると、アルマはくすくすと笑った。
その姿を見て、まあいいか、なんて思っちゃったりもして。
「……でも、本当に良かったの?」
「はい。アクアさまのお役に立ちたくて、ここまで来たのですから。それに、……アクアさまなら、シオンを受け入れてくれるでしょう?」
スライムがじっとこっちを見ている……気がする。
「……受け入れるというか、敵意がないなら魔物とも戦う理由はないし……」
人間を襲う魔物たちは瘴気を纏っている。
見ればすぐにわかるほどに。
でも、このスライムにも、コボルトたちにもそれは見えない。
――人間を襲う魔物と、共存を求める魔物の違いって、なんだろう……?
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
売られたケンカは高く買いましょう《完結》
アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。
それが今の私の名前です。
半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。
ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。
他社でも公開中
結構グロいであろう内容があります。
ご注意ください。
☆構成
本章:9話
(うん、性格と口が悪い。けど理由あり)
番外編1:4話
(まあまあ残酷。一部救いあり)
番外編2:5話
(めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
婚約破棄の日の夜に
夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。
ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。
そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」