恩を返して欲しいのはこっちのほうだ!

秋月一花

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3章

142話


「ララとの話って、面白い?」
「ああ、とても。それに――……」
「それに?」

 ルーカス兄さまが口を開きそうになったとき、ドカンッと大きな音がした。それに馬が驚いて、御者が制御できずに馬車があちらこちらに揺れた!

「な、なに!?」

 滅茶苦茶に揺れてる!

 ガシッとルーカス兄さまがわたしの手を掴み、抱き寄せて馬車を蹴破る。どうやら魔法を使っているみたいだ。身体が浮いている。

「る、ルーカス兄さま……」
「大丈夫だ、アクア。心配することはない」

 優しい口調でそういうと、ルーカス兄さまは暴れている馬に近付いて一言、

「止まれ!」

 と口にした。

 すると、馬が本当に止まった……。暴れていた馬を落ち着かせて、他の馬車の馬たちも落ち着かせた。

 ……ルーカス兄さま、こんな特技が……?

 馬が落ち着きを取り戻したことを確認すると、わたしたちは馬車に戻らずに大きな音がしたほうへと向かう。

 あの音、一体なんだったの……?

 ルーカス陛下も気になるようで、飛んでいるスピードが速い。

 そして、爆発音のところにたどり着くと、周りの人たちがおろおろとしているのが見えた。

「――火事?」
「レストランが爆発したようだな……。アクア、魔法で水は?」
「得意です!」
「土魔法は?」
「……苦手です!」
「わかった、まずは水魔法だ」

 こくり、とうなずく。空中に浮いているわたしたちに気付いている人はいないみたい。……まあ、これだけの火事……爆発? なら、そっちに目がいっちゃうか、納得!

「神よ、我に力を貸したまえ――」

 ルーカス兄さまと手は繋いだまま、目を閉じて神に祈る。

「あの火事の炎を消して!」

 わたしの願いに応えるように、身体が温かくなる。いつもの水魔法よりも強力な水魔法が使えそうだ。

 私は意識を集中させて、燃えている場所にめがけて水魔法を使う。

 思っていた以上の威力で、水魔法がレストランを包み込み消火していく。

「そのままを維持できるか?」
「はい」

 ルーカス兄さまの問いにうなずくと、ルーカス兄さまはパチンと指を鳴らした。

 すると、土が浮いて、どんどんと炎を消火していく。

 わたしの水魔法と、ルーカス兄さまの土魔法の合体技だ。

 周りの被害が少ないうちに消火できたみたい。

「……降りるぞ」
「うん」

 みんな、わたしたちが空から降りてきたことに驚いているようだった。

 そんなに驚かなくても、浮遊魔法を使える人なら飛べるんだし……。

「あ、あれは……まさか……」
「へ、陛下……!?」
「一緒にいる子は……?」
「あ、コボルト音楽隊の……」

 わたし、コボルト音楽隊が音楽を奏でる日には必ず行ってるからね!

 なるほど、そこで顔が覚えられたのか……。

 ……もしかして、ルーカス陛下、それも目的だったり……した?

「怪我人はいるか? 周りの者たちの安否を!」
「は、はいっ」

 レストランの中から、バリアで守られた人たちがふわふわと浮いて来た。逃げ遅れた人たちだろう。

 ……いつの間にこんな魔法を使っていたんだろう、ルーカス兄さま。

 逃げ遅れた人数は五人。火傷を負っているように見えた。

「怪我人はわたしの元に集まって! ついでに古傷が痛む人たちも!」

 せっかくだから、わたしもやれることをしよう!

 少し遅れて、騎士団が到着したみたい。わたしたちを見て驚いていた。

 ディーンとバーナードも追いついた。

「アクア! 陛下!」
「この騒ぎは一体……?」

 ……まあ、そりゃこの状況を見たら驚くよね。

 レストランだった建物は大破され、火傷を負っている人たちや怪我をしている人たちを見たら……。それに、野次馬も多いし。

「ルーカス陛下、ご指示を」
「周りの者たちの安否の確認と、他に異常がないかを確認、それと交通整備だな」
「かしこまりました」

 どの騎士団の人かわからないけれど、ルーカス陛下より年上だということはわかる。

「アクア、あちらに空き店舗がある。人を集めるのなら、そこに向かったほうが良いだろう」
「わかったわ、ルーカス兄さま。ディーン、バーナード、お願いがあるの」

 小さくうなずき、わたしはパッとディーンとバーナードに声を掛けた。

 すると、ふたりは状況を察したのかすぐにうなずいてくれた。

 ルーカス兄さまの言葉どおり、空いている店舗が見えた。結構広いから、みんな中に入れそうね。わたしが先導するように歩き、ついて来る人たちの真ん中をディーンが、最後尾をバーナードが見守ってくれている。

「中に入って、一気に治療するから!」

 空き店舗の扉は簡単に開いた。……普通、鍵が掛かっているのでは? と、考えたけれど、そういえば前に空き店舗は王族が管理するから、王族の魔力で鍵が開くって、お母さまに聞いたことがあるような……。

 ……何歳の頃だったかはちょっと覚えていないけどね!

 次々と中に入る人たち。……一体、レストランでなにがあったのかしら……?

「全員、いるかな? それじゃあ、早速治療するね!」

 きょろきょろと辺りを見渡して、わたしは大きく手を振って自分の存在をアピールした。

 ……だって、予想以上の人数だったのだもの。

 みんなわたしの存在に気付いて、ちょっと戸惑いながらも視線を向けてくれた。

「――神よ、彼の者たちの傷を癒したまえ――」

 わたしの願いに応えるように、辺りが癒しの光で真っ白になった。

 ……前々から思っていたけど、どうしてこんなに力を貸してくださるんだろう?

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