恩を返して欲しいのはこっちのほうだ!

秋月一花

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3章

145話


 次に目を開けると、早朝だった。夢も見なかった。ベッドから起き上がり、窓へ近付く。カーテンを開けて外の景色を眺めると、昨日の頭痛はなんだったんだってくらい、穏やかに起きられた。

「うーん、謎が深まっていく……」

 昨日見た夢は一体……? あれは、誰視点の夢だったのかしら。それに……、どうしてそんな夢を、わたしが見たのだろう? まあ、夢なのだから作り上げてしまったのかもしれないけど。

 ……それにしては、肖像画で見たステラよりもちょっと老けていたような……。

「気にしていても、仕方ない、か」

 わたしは気合を入れるように頬を両手で軽く叩いて、身支度を整えた。そして、礼拝堂に向かう。

 まだ早朝だけど、屋敷の中はそこそこ賑やかだ。屋敷の主人であるわたしが早起きなせいでもある。わたしに合わせてくれているのが、ありがたいような申し訳ないような……。

 まあ、朝が早いだけあって、夜も早いのだけど。

 礼拝堂に入ると誰も居なかった。

 私は一番前まで行くと、いつものように祈りを捧げる。ぽわぽわと身体が温かくなる感覚に、小さく笑みを浮かべた。

 ――よし、今日もがんばろう!

 と、意気込んだものの、なにを頑張ろうか悩んだ。……あ。そうだ、アルマが来ているはずだから、みんなに紹介しないと……。って、アルマがどこの部屋で休んでいるのかわからないや……。

 と、とりあえず食堂に行こう。そう思って礼拝堂から出ると、ココがわたしのことを待っていたみたいで、顔を見るとぱぁっと表情を明るくさせた。

「アクア!」
「おはよう、ココ。早いね」
「おはよう! ココ、早起きした! アクア、寝込んだって聞いて、心配した!」

 じーん。胸の中に温かさが沁みわたる。しゃがんで両腕を広げると、ココは迷うことなくわたしの胸に飛び込んできた。ぎゅっと抱きしめて、ココのふわふわもこもこさを堪能する。

「心配かけてごめんね、大丈夫だよ」
「本当に? 本当に?」
「うん、本当。そうだ、ココたちに紹介したい人がいるんだけど……」
「スライムの人?」

 スライムの人……いや、間違ってはいないか、間違っては……。

「うん。わたしの侍女だよ」
「そーなんだ~」

 わかっているのかいないのか、よくわからないけれど、ココは納得したようにうなずいた。

「さてと、食堂に行こうか」
「うん! ココ、ご飯、食べる!」

 元気いっぱいの返事に、わたしはふふっと笑みを浮かべた。

 立ち上がって、食堂に向かう。

 食堂にはすでにメイドたちが朝食のセッティングをしてくれていた。

「アクアさま! お身体は大丈夫ですか?」

 わたしに気付くと、みんなが近付いて来た。ああ、心配かけちゃった。

「うん、平気。心配かけてごめんね。ありがとう」
「アクアさま……」

 みんなに心配を掛けてしまったみたい。それにしても、ちょっと寝込んだくらいでこんなに心配してくれるなんて、みんな本当に良い人たちだなぁ。

「胃に負担のない料理をお持ちしますね」
「あ、うん。ありがとう。みんなは普段通り食べてね」

 わたしに合わせなくていいよ、と伝えると、複雑そうな表情を浮かべた。ここの主人は確かにわたしだけど、なにからなにまでわたしに合わせる必要はないと思うのよ。だって、一通りのことは自分で出来るのだし。聖職者のローブなら自分でも着られるしね。

 ドレスは手伝ってもらわなきゃ無理だけど!

 わたしが椅子に座ると、ココはぴょんと別の椅子に座った。そして、メイドが食べやすいようにと用意してくれた食事を摂る。

 うーん、しみじみ温かい……。

 用意されたのはコンソメスープだった。野菜がとても柔らかく煮込まれている。かなり時間を掛けて作ってくれているのだろうな、と思った。白いふかふかのパンと一緒に、ゆっくり食べた。

 ココは朝からステーキを頬張っていた。コボルトって肉食なのかしら? そんなことを考えながら、ココと一緒に朝食を摂った。

 すべて食べ終わり、アルマを探しに行こうとすると、食堂の扉がバンッと開かれた。

「あれ、どうしたの、そんなに血相を変えて……」
「アクア、具合は大丈夫なのか?」

 ディーンとバーナードだった。……ああ、彼らにも心配を掛けたままだったと気付き、わたしはへらりと笑う。

「平気平気。鎮静剤のおかげで頭痛も良くなったし。ありがとね」

 ぱたぱた手を振りながらそう言うと、ふたりはまだ心配そうにわたしを見る。

「昨日の今日だから、今日はゆっくり休むようにと陛下が」
「今日は屋敷から出ないように」

 ディーンとバーナードは真剣な表情でそう言った。……ので、思わずうなずいた。

「わ、わかったわ……」

 まあ、確かに昨日の今日だもんね。あれだけの人数を一気に回復させたから、多少の疲労感はまだ残っている。お言葉に甘えて、今日は静かに、のんびーりと過ごさせてもらおう。

「あ、そういえばアルマは?」
「ああ、昨日のうちに紹介したよ。みんなスライムに興味津々だった」

 ディーンがふふっと笑う。……ちょっと見てみたかった、スライムに興味津々のみんな。

「たぶん、そろそろ来ると思う」
「そうなの? っていうか紹介も終わっていたのね……」

 昨日は目まぐるしく過ごしていたからなぁ。神殿に行った帰りにレストランが爆発するとか、本当に……なんというか、驚く出来事だった。

「そっかぁ。アルマも早くここに慣れてくれるといいね」
「そうだね」

 ディーンが同意を示してくれた。やっぱり優しいな、ディーン。

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