恩を返して欲しいのはこっちのほうだ!

秋月一花

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3章

149話


 わたしの考えを伝えると、アルマは真剣な表情で黙り込んでしまった。心配そうにアルマを見上げて……いるであろうシオンに、彼女は視線を落してゆっくりと息を吐いた。

「アクアさま、私、頑張ります。頑張って魔物使いテイマーとしての腕を上げて、魔物の言葉を理解出来るようになります!」
「ええっ?」

 決意を瞳に宿してそういうアルマに、目を瞬かせた。いや、頑張ることはいいことだよ、うん。でも、魔物使いテイマーの腕を上げるってどうやって? とシオンとアルマを交互に見る。

「シオンのことも、もっと理解したいですしね」

 シオンは嬉しそうにぴょんと跳ねた。アルマはシオンを撫でる。シオンはすりすりとアルマに擦りついていた。

「……そうだね。互いに知ることから始まるのかも」

 人間関係だって、そうだしね。知ることから始めないと、前にも後にもいけないもん。

「まあ、とりあえず、この屋敷にいる間にいろいろ試してみよう?」
「はい!」

 ――そして、その日からアルマはぴったりと私にくっついて来るようになった。専属侍女だから当然といえば当然なのかもしれないけれど、ここまで誰かと一緒に過ごすことってなかったから、なんだか新鮮。

「アクア! 遊ぼ!」
「ココ! うん、遊ぼう!」

 わたしとココが外に出てボールで遊んでいる時も、混ざることなくただ見守るように私たちを眺めている。誘ってみたけれど、少し困惑気味に断られた。シオンも一緒に、と思ったけれど、スライムがボールで遊ぶのは大変かなとも考えて、ためらった。

 近くに来ていたディーンとバーナードは巻き込んだ。ふたりは顔を見合わせて、ササとセセも連れてきて「ボールを使って訓練だ!」と遊んでいるんだか、訓練しているんだかわからないことになった。

 まあ、それはそれで楽しかったからいいけど!

 コボルトたちの反射神経はかなりのもので、最終的にはササとセセ、ココがボールを取り合っていた。ココ、身体が小さいからか、素早いのよね。ササとセセは反対に身体が大きいから、ココよりは素早さが劣るみたい。でも、力は強い!

「うーん、コボルトたちにも個性がたくさんよね……」
「同じ人間だっていないだろ」
「確かに」

 バーナードがわたしの呟きを拾った。ちらりとディーンを見ると、彼はコボルトたちを楽しそうに眺めていた。

 先王陛下が作らせた『ディーン』という存在。ディーンはそのことを知らないから、自分のことをノースモア公爵家の次男だと思っているだろう。彼に植えられた(?)記憶がどんなものなのか、少し気になるところ。

「どうしたの、アクア。変な顔して」
「わたし、そんなに変な顔をしていた?」

 こくりと首を縦に動かすディーンに、わたしは自分の頬を両手でむにむにと揉んだ。そのうちに、遊び疲れたのかココがころんと横になったので、ココの元に向かう。

「ココ、大丈夫?」
「だいじょーぶ! でも、うごけない!」
「たくさん動いたもんね。おいで」
「わーい!」

 しゃがんだわたしが手を伸ばすと、ココはむくりと起き上がって抱きついて来た。ひょいとココを抱き上げると、ぎゅうっとしがみつく。ああ、ふわふわ……。この感覚が心地よいのよね。

「アクアさま、私が運びますよ」
「いいのいいの。わたしにやらせて」

 ココの毛並みを堪能できるから、こうやって抱っこするのは役得でもあると思う!

 ココを抱っこしたまま、屋敷の中へ戻り、ココの使っている部屋まで歩いた。

 ココをベッドに横にさせると、いつの間にか眠っていたようで、すやすやと寝息を立てていた。起こさないように、そうっと汗を拭くとくすぐったそうにごろんと寝返りをした。可愛いなぁ。

 ココの頭を撫でてから、風邪をひかないようにブランケットを掛ける。お昼寝を邪魔するのもなんだから、音を立てないように静かに静かにココの部屋から出ていく。

 ふと、戸棚を見るとわたしがあげたミニゴーレムがちょこんと座っていて、なんだか和んだ。

 ゆっくりと扉を閉めて、わたしはアルマと一緒に自室へと戻った。

「アルマたちは本当に参加しなくてよかったの?」
「ええと、その、なんというか、まだどう接したらいいのかわからなくて……」

 しょんぼり、という言葉がぴったりなくらい、アルマの気分が沈んでいるのが見えた。

「まあ、いきなり仲良くっていうのは難しいだろうね」

 シオンは心配そうにアルマにくっついている。この屋敷で暮らしているコボルトたちはみんないいコボルトたちだと思っているけれど、あまり接したことのないアルマには未知の生物だろうし。

 ……そう考えると、よくみんなあっさり受け入れていてくれたな、と思った。今じゃあ、屋敷の人気者なのよね、コボルトたち。

 最初は怖がっていた、元魔物討伐部隊の家族の人たちも、一ヶ月くらい一緒に生活することであっさりとコボルトを受け入れてくれたし、コボルトたちも自分たちを受け入れてくれるのを待っていたように思う。

 やっぱり『知る』って重要だなぁ。

「ま、そのうち慣れるよ、きっと」
「そうですね、きっと」

 スライムのシオンを受け入れたくらいだもの。コボルトに慣れるのも、きっとすぐだろう。

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