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3章
150話
あれから、のんびりとした日々が続いた。なにも起きないっていうのがとても怖い。
だってあれだけ派手なことが起きたんだよ? ちなみにそのレストランはルーカス兄さまが指揮を執ってさくっと新しいレストランに生まれ変わった。
わたしは新しくなったレストランにミニゴーレムを贈った。少しでも役に立ってくれるといいな。……なんの役に立つのかは、まだよくわからないけどね。
「一週間ですっかり馴染んだなぁ」
ディーンにダンスの練習相手をしてもらいながら、ちらりとアルマたちの様子を眺める。ココと楽しそうに話しているのが見えて、思わず呟いた。
「まぁ、一週間あれだけ一緒にいればねぇ……」
ディーンのしみじみとした声に、一週間のことを振り返り「あはは」と小さく笑った。
アルマはココだけではなく、ササやセセとも話すようになった。いや、自ら進んで話しかけにいったのだ。
最初はちょっと怯えたようにプルプルしていたシオンだったけれど、今ではすっかり仲良しになったみたいで、ココたちと一緒に遊んでいるのを目撃することもあった。
「アクアも、だいぶ慣れたんじゃない?」
「本当?」
「うん、動きがスムーズだよ」
くるり、と一回転しながらも、わたしの目は輝いていただろう。だって、ハイヒールでダンスをするのが様になってきているってことでしょ?
「ディーンはさすがに慣れているよね……」
「そりゃあね」
公爵家の次男として育ったからだろう。ディーンのダンスはとても綺麗だ。リードもしてくれるし、とても踊りやすい。
ちなみにバーナードも踊れるそうだ。滅多には踊らないけれど、踊る時はちゃんと踊るって聞いた。彼の妹のフィロメナから教えてもらった。
しっかりと貴族の教育は受けているらしい。
「みんな苦労しているのねぇ」
「苦労していない人がいると思う?」
ふるふると首を横に振る。現在、苦労していない人でもこれから苦労するかもしれないしね。
「……それにそれが苦労かどうか、決めるのは自分だしね」
「おお、いいね、その考え方」
もう一回転してから、ダンスのステップを踏む。音楽が切れる寸前で手を離してお辞儀。ぱちぱちぱち、とアルマたちが拍手をしてくれた。
「足は大丈夫?」
「うん、この靴にもだいぶ慣れたみたい」
ハイヒールをちらりと見せると、よかった、と安堵したように微笑むディーン。
アルマとココがわたしたちに近付いてきた。
「とても綺麗なダンスでしたわ、アクアさま!」
「アクア、お姫さまみたいだった!」
「ありがとう」
目をキラキラと輝かせるアルマとココに、わたしは肩をすくめた。もしかしたら、ココはこういうドレスに憧れたりしているのかな? そうだとしたら、着させてあげたいなぁ。
自分のことでいっぱいいっぱいだったわたしだけど、ようやく周りのことも見えるようになってきた、と思う。
「ねえ、ココ。ココもお姫さまみたいになりたくない?」
なるべくココに顔を近付けて問うと、ココはもじもじと手を動かした。興味はあり、っぽいね。
「わたし、ココとお揃いのドレス着てみたいなぁ」
「ココ、ドレス!?」
「うん、絶対可愛いと思うよ!」
別にお揃いじゃなくてもいいのだけど、こういったほうがココの歓心を得られるかな、と思っていってみた。その効果は絶大のようだ。
ココは目をまぁるくして、何度もコクコクとうなずいた。
「アクアとお揃い! 着たい!」
「じゃあ、今度作ってもらおうね」
「うん!」
ココに似合うドレスってどんなのかなぁ。考える楽しみが増えた。いいことだ。
「アクアとココがお揃いか。なんだか想像すると微笑ましいね」
「そう? ……とりあえず、ダンスのレッスン終わったから、着替えてもいい?」
「いいよ、お疲れさま。アルマ、アクアをお願いできる?」
「もちろんです、ディーンさま」
任せてください、とばかりに胸をドンと叩くアルマ。
「それじゃ、また後でね」
「ああ」
ディーンを残して、わたしとアルマ、ココはわたしの部屋に向かう。
ココが「ドレス~、ドレス~」と歌いながら歩いているのを見て、もっと早く提案すればよかったなぁと思った。
「アルマもお揃いで作る?」
「お心遣いは嬉しいのですが、今回はやめておきます」
眉を下げて微笑むアルマに、わたしは首を傾げた。
「ココはきっと、アクアさまとお揃いだから、嬉しいのだと思います」
「……そう?」
「ええ」
わたしたちの前を歩いていたココがぴたりと止まって、くるっとこっちを向いた。
「アクア、抱っこ!」
そういってわたしに駆け寄ってくる。ぴょん、とジャンプして抱きついてきたココを、
「おっと!」とキャッチすると、ココは「えへへ」と笑う。こういう顔を見ると、可愛いなぁと思っちゃう。
「危ないですよ、ココ」
「アクアなら、受け止めてくれる!」
「でもドレス姿では確かに危ないかな?」
「……ごめんなさい……」
しゅんとしてしまったココの頭を撫でて、尻尾がパタパタと動いているのを確認してから声をかけた。
「今度からは、聖職者のローブを着ているときに抱きついてね」
「はーい!」
元気いっぱいな返事が返ってきた。
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