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3章
152話
集団行動に必要なことを話し合っただけじゃなかった……? と首を捻っていると、セシリーがくすくすと鈴を転がすように笑った。
ココがクッキーを手にして、ぱくりと食べた。サクサクと音を立てて食べるココの尻尾が嬉しそうにブンブンと振っていた。うーん、ずっと見ていられるくらい可愛い。
「ところで、私になにか用があったのではないのですか?」
セシリーに尋ねられて、わたしはこくりとうなずいた。そして、ココの頭にぽんと手を置いて、
「わたしとココで、お揃いのドレスを作ろうと思うの。コボルトのドレスを作ってくれそうなデザイナー、いないかなぁ?」
と、いいながらココの頭を撫でた。セシリーはココに視線を向けてから、わたしへ視線を移動させた。
「探してみます。コボルト音楽隊は評判がよいので、きっと引き受けてくれるデザイナーがいると思います」
セシリーからコボルト音楽隊のことを聞いて、わたしは「そっか」と呟いてからもう一度紅茶を飲む。
コボルト音楽隊は、王都の人たちに受け入れられているみたいで、最近ではフィロメナと一緒に買い物に行ったらしい。バーナードが教えてくれた。彼は『……なんか、人気者みたいだぞ』とどこか遠い目をしながら話していた。
人気者でなによりだ。コボルト可愛いからね、人気者にもなるよね!
「引き受けてくれるデザイナーがいましたら、呼びますか?」
「ううん、こっちが向かうよ。ココと一緒に」
「わぁい!」
外に出る機会が滅多にないココは、両手を上げて喜んだ。ササとセセはディーンとバーナードの元で訓練を受けているから、たまに四人で出歩いているらしい。
ララはルーカス兄さまと一緒にいる時間が長いから、そんなには王都を見ていないと思う。たまーに、ふらっとルーカス兄さまが王都に足を運ぶらしいのだけど、そのときは一緒みたい。
……この屋敷にはコボルトが五人いる。最後のひとりは、頑なに王都を見に行くつもりはないと言い張り、部屋に引きこもっているのだけど、一体なにをしているんだろう……。
おっと、考えていることが脱線した。
「かしこまりました、探しますね」
「お願いするね」
わたしは王都のことにまだ明るくないからなぁ。頻繁に外に出ているわけではないし、今のところ貴族レッスン(?)が忙しいもの。
わたしの誕生日に、正式に、貴族に紹介するってルーカス兄さまが誕生日パーティーの計画を立てていた。一体どれだけ盛大なパーティーになるのだろうか……想像するとちょっと怖い。
「アクアさまの誕生日まで、もう少しですね」
「うん。なんか不思議な気分。ルーカス兄さまがすっごく張り切っているし」
「それだけ、妹のような存在が戻ってきたことが嬉しかったのでしょう」
今のルーカス兄さまには『絶対的な味方』が少ないからね。わたしでもきっと力になれるだろう。
たぶん、誕生日パーティーでわたしの役割が決まるのだと思う。王族の血が流れているものとして生きるのか、聖女として生きていくのか、それともまったく違うことをいわれるのか。
「ルーカス兄さまと敵対……というのも変かな? まあ、対立している人たちが元老院?」
大聖女ステラの弟、には会った。司祭をしているモーリスさん。悪い人には見えなかったけれど、少し話しただけだから、それだけで言い切ることは出来ない。
「元老院だから対立しているわけではないですよ。元老院の中でも、陛下派の方もいらっしゃいますし」
「そうなの?」
それはちょっと意外だった。元老院の人たちはルーカス兄さまのことをどう思っているんだろう? 目の上のたん瘤? それとも……?
って、わたしが考えたところで、解決もしないのだけど。ただ、恐らくわたしの命を狙ったのは元老院の誰かだと思うのよね。浄化が効かなった人がいるのも気になる。
「はい。どちらかといえば、元老院で意見が割れているような気がします。……とはいえ、これも王宮のメイドから聞いた話ですけれど」
「セシリーは友達が多いのね」
「それなりに顔は広いつもりです」
にこっと微笑むセシリー。上の人には恵まれなくても、同僚には恵まれたということかな?
「そっか。じゃあ、情報収集もお願いしようかな。わたしが探るとボロ出しちゃいそうだし」
隠れて情報を集める、なんてわたしに出来る気がしない。
「かしこまりました。有益な情報を入手しましたら、お伝えしますね」
「うん」
慣れている人に頼むが一番早い気がするから、彼女に任せよう。アルマがちょっと残念そうに見えたのは、気のせいかな?
「アルマ、アクアさまを守ってね」
「はい、セシリーさま」
力強くうなずくアルマに、出来れば敵襲には遭遇したくないなって思った。アルマに怪我をしてほしくないし、わたしも痛いのはごめんだ。もちろん、命を狙われるのもいやだけど。
「狙うのなら、アクアさまの誕生日パーティーでしょうね」
「わたしもそう思う。人がたくさん集まるだろうからね。毒の耐性でもつけておくべき?」
「ココ、匂いでわかるよ!」
クッキーを夢中で食べていたココが片手を上げた。
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