あなたにはこの謎に秘められた真実が見抜けるか? 読者への挑戦状!

雨色銀水

文字の大きさ
3 / 4

解答編

しおりを挟む
「……以上がそれぞれの人物の証言内容だが……実際、この中に犯人はいるのかよ? どうにもいまいちしっくりこないというか。人が死んでるんだから、誰かがやったのは確かなんだろうが」

 雪見荘の一室を借り受けて、僕と暮月は事件資料に目を通していた。

 裏庭に面した窓からはちょうど、離れへ続く道が見渡せる。午後を過ぎ、晴れ渡った空の下で雪は見事に溶けてしまっていた。規制線の黄色いテープが揺れる様は、なにもかもが終わってしまった後のようにすら見える。

 だが、実際のところ、事件は暗礁に乗り上げていた。証言から犯人をさぐり出そうと、調書を読み返してみても、暮月のいうとおり何かがしっくりこない。

「どうなんでしょう。……もう、源蔵氏が自殺したでいいような気も」
「おいおい、栗澤。それだと俺たちがバカみたいだろ。一応の方針は、殺人事件として捜査してるんだから……そこをブレちまったら意味ないだろ」
「全くもってその通り。なら、少々面倒でも、証言を一つ一つ検証してみましょうか」

 Q1「被害者の死亡推定時刻になにをしていたか?」

 ・如月 琴音は部屋で休んでいた。
 ・如月 正樹は部屋で寝ていた。
 ・如月 奈帆は部屋で本を読んでいた。
 ・岡本 はじめは厨房で仕込みをしていた。

 白い紙を広げ、証言を抜粋してみるとこうなる。書き込まれた文字をじっと見つめた暮月は、自身もペンを手に取ると、その横に続きを書き込んでいく。

 Q2「アリバイを証明する人間の有無」について

 ・琴音→いない
 ・正樹→岡元
 ・奈帆→いない
 ・岡元→正樹

「こうして見ると、岡元と正樹は除外できるんじゃないのかね。一番怪しそうな時間帯に、この二人だけはアリバイがあることになる」
「まだ分からない。二人が共犯で、口裏を合わせている可能性もあります。とにかく、証言におかしな点がないか検証を続けましょう」

 Q3「事件前後の時間帯で気になったこと」について

 ・琴音
 明け方に一度目覚めている。その時に窓から裏庭を見て、雪が一面に積もっているのを確認した。(午前5時頃)
 ・正樹
 眠っていたが、扉が大きな音を立てて閉まったような音を聞いた。(午前5時か6時頃?)
 ・奈帆
 一度厨房に降りたが、誰にも会わなかった。(午前5時頃)
 ・岡元
 源蔵氏と内線で会話。人が来るから離れに近づくなという内容だった。(午前4時)
 厨房で奈帆には会っていない?(午前5時)

「うーむ。バラバラではっきりしないな。どれがどう関連しているのか……そもそも関係あるのかね?」

 暮月のボヤキを聞き流しながら、僕は紙に目を落とした。書き連ねて見たものの、事件と関連しているのかはっきりしないことが多い。

「岡元が源蔵氏と内線で会話した……その証言が確かなら、午前4時頃にはまだ、源蔵氏は生きていたことになる。そうすると、死亡推定時刻午前4時以降から7時の間に間違いないことがわかりますね」
「岡元の証言が正しい場合だと、源蔵は訪ねてきた誰かに殺されたことになるが……そいつは一体、いつ離れに移動したんだ? 琴音の証言じゃ、午前5時ごろの裏庭は、一面に雪が降り積もってたんだろ?」

 暮月が紙を睨みながら、指先をテーブルに打ち付ける。苛立ちを表す指先を見るともなく見て、僕は一度目を閉じた。問題は、『いつ』離れを訪ねたかだが……。

「……正樹の証言はどうだろう。扉が閉まるような大きな音がした……これはその時間帯に、誰かが外に出た、あるいは中に戻ってきた、ということを表しているのでは?」
「もしそうだとすると、正樹と岡元が厨房であったのは午前6時ってことになる。琴音の証言も正しいなら、午前5時に犯人は外に出ていないってことだろ?」
「そうすると、奈帆が午前5時に厨房で岡元に出会わなかったのはたまたま……なのでしょうか」

 Q4「離れへと続く道の足跡」について

 ・琴音
 午前7時頃、離れに向かった。その時に気になるものはなかったと証言。
 ・正樹
 そもそも見ていないので分からない。
 ・奈帆
 足跡は見ていない? 足跡が琴音のものしかないことについて言及。(雪の降っている間が犯行時間では?)
 ・岡元
 近づくなと言われていたため、確認していない。

「……はい? どういうことだこれ」

 琴音の証言によって、犯行が雪の止んだ後である午前4時以降という説が崩れてしまった。僕と暮月は顔を見合わせ、同時に首を横に振った。あり得ない。これでは、そもそもの犯行が不可能という話になってしまう。

「どういうこと……なんでしょうね。琴音嬢の証言の意味は……?」
「これで最初に戻るわけだな。足跡は一往復分だけ。離れへ行ったのは、琴音だけだってことになるんだから……こりゃ、アレじゃねえか?」

 ニヤリと暮月は笑い、紙に指を突きつける。そこにはある人物の名前。今までの流れから考えれば、その人物以外に犯行は不可能なのだ……。

「さぁて、犯人を呼び出して、真相を聞き出してやろうぜ!」

 そう、犯人である彼女——如月 琴音を。

 ※ここまでで、解答編は終了だ。
 僕たちがたどり着いた犯人に、あなたは納得するだろうか。
 それとも——本当の意味での解決編である真相に、気付けただろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...