継ぐマホウ 〜曇り所により片頭痛、気がついたら異世界〜

パキ・パキ

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来る征戦の騎士、明かされる聖剣の未知

33話 ロベルタでの朝

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「……これはどういうことだ?」

 サーク王国の跡地で1人の騎士が長髪の男を責めるように問い詰めていた。2人に漂う剣呑な雰囲気は周りにいる騎士達に口を挟ませない。

「どうやら、ザドが召喚した転移者のしわざのようです。その者たちはわたしが駆けつけたときにはすでに逃走しておりました」そう話す口には薄く笑みが浮かんでいる。「我が国自慢の尖兵隊長も敵わなかったようですね」

 金髪の男の脳に赤いマントの自信に満ちた騎士が浮かぶ。

 長髪の男は余裕のある落ち着いた口調で話すが、一方の男の声は怒りに震えている。それは目の前の男の態度か、同僚の無様な敗北か、仲間を襲撃された義憤によるものか。

「ステルゥ、貴様はもう喋るな。その声を聞くと腹の底が煮えるようなのだ」
「それは失敬した……」

 どうやら長髪の男はステルゥというらしい。彼は黙るが、口元の薄い笑みは消えない。

「マナオオカミを召喚しろ」
「おや、何をされるおつもりで?」
「黙っていろと言ったはずだ」

 金髪の男は拳を強く握る。彼の整った顔には今、仲間を襲われ国の誇りを傷つけられたことによる怒りが滲んでいる。

「……連合軍で決めたとおりなら、異世界人たちはロベルタに送られているはずだ。エウレナ様の下まで行き奴らを引き渡していただく」

 腰に携えていた、金色が眩しい剣を抜く。

「そしてこの手で断罪する。それがこの世界のためになるのだろう?」

 ステルゥは頷く。

「これからの、そしてこれまでの天変地異は異世界人がこの世界に来たことによるものなのだから」

 男が言い終えた頃、ステルゥの笑みは一層深くなっていた。


――――――



――胸が重い? 苦しい。何かが俺の上に乗っている?

 コウトの目を覆っていた瞼の上から光が届く。覚醒した意識が息苦しさをうったえる。
 見ると、胸の上で見覚えのある生き物が丸まっていた。陽の光に照らされた金色に透き通る毛と、背中にある輪と羽のような不思議な模様。ダンザブローだ。

「ダンザブロー。なんでここに」
「あ、起きた?おはよう」

 聞こえた声はコウトが寝ているベッドの横で楽しそうに笑む七篠のものだ。コウトは上体を起こしたことで胸から転がり落ちかけたダンザブローを慌てて支えた。

「もう朝だよ。タートンさんに起こしてこいって言われたの」
「そうだったんだ。すいません、わざわざ」

 コウトは支度を済ませ、七篠とタートンに与えられている部屋を出る。一階へと続く階段を降りると、ロビーのようになっており、カウンターやいくつかの長い机とソファやイスが置かれている。
  そこでコウトの他にも数人いる宿泊客は思い思いの朝を過ごしていた。

「おお! おはよう、コウト、ミオ」

 2人に声をかけたのはガタイのいいスキンヘッドの男性。タートンだ。彼はカウンターでの話を終えて2人のもとへ来る。

「ここに来て初めての朝だな。どうだ眠れたか?」
「はい。疲れていたのもあってぐっすりでした」
「コウト君、私が部屋に入っても起きなくて、ダンザブローを乗せてようやく起きたんですよ」
「ハハハそうかい。よく眠れたようで良かったよ」

 彼は七篠の話にブレイグとそっくりの顔で笑ったあと、すぐに真面目な顔を作った。

「ありがとうな。ブレイグあいつのこと、俺もあいつも本当に感謝しているんだ」

 タートンの家族、そして家族の家族を助けたコウトに感謝し感激した彼は、2人に宿の部屋を使わせたのだった。

 しかし、谷嶋の死を望んだ自分を受け入れることができていないコウトとしては、ここに来てから何度かかけられている感謝の言葉を素直に聞き入れられない。いたたまれなさからつい話を逸らす。

「……なんかお腹空いちゃいました」
「なら“ベイク”に行こう! さあ早く!」

 1階の奥にある扉。その先には夜の間のみ利用できる酒場がある。朝は基本的に閉まっているが朝食を用意しそこねた客のために簡単な食事も用意されていて、タートンは朝の間、酒場をベイクという名前で呼ぶ。

 コウトはそこでパンを2,3切れ食べそれを朝食とした。

「柳葉君はどうしているんだろう」

 部屋に戻っている途中コウトはふと、王城で治療を受けているはずの仲間のことが気になった。

「もう目を覚ましてると思います?」

 そばにいた七篠を見ると彼女は少し考えてから言った。

「どうだろう……行ってみる?」

 自分と同じ異世界に召喚されてしまった仲間を気にかける彼の気持ちを汲み、そう提案してみた七篠。
 だが彼女はその実、コウトに王城に近づいてほしくなかった。というのもエウレナがいるからである。

 ウォークの第3王女エウレナ。この世界に召喚されたコウトが自分の力に戸惑いながらも命を救った女性。彼女はあの一件以来コウトに恋する乙女のような眼差しを向けており、同じくコウトに想いを寄せる七篠はそのことに危機感を覚えていた。

「そうしましょう。彼1人だと目を覚ました時に混乱しちゃうかもしれないしね」

 コウトはそんな七篠の気も知らずにそう言ってのけた。
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