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来る征戦の騎士、明かされる聖剣の未知
34話 覚醒めは近く
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2人は柳葉の様子を見に行くため街へ出た。ロベルタの人々はすでに新しい1日を始めており、店の周りを掃除している人や眠そうな顔で巡回する騎士がちらほら見える。
「そういえば。すいません、わざわざ起こしてもらっちゃって」
コウトが七篠にわざわざ朝起こさせてしまったことを謝ると、彼女は気にしないでと笑った。
今の2人はフードだけは外してしまっている。ローブを羽織ってアロンダイト館を出たが、顔が見えないせいかかえって怪しまれていたようだったので外したのだ。
コウトの寝顔を思い出して、ローブの上に咲いた七篠の笑顔は一際眩しい。
「……コウト君って朝起きるの苦手だったりする?」
「そうかもしれないです」
七篠が聞いてくるので申し訳なく感じながら答えると、彼女は嬉しそうに「じゃあさ」とコウトと向き合った。
「明日から私が起こしてあげよっか?」
当然、コウトは悪いからと断ろうとするが、七篠が言葉を被せるほうが早い。
「大丈夫だよ。仲間なんだし気にしないで、ね?」
なんでもないことのように言う彼女を見ていると、ついお願いしますと言いたくなってしまう。揺れる心をなんとか正す。
「保留で……」
「えぇー」
七篠は残念そうに肩を落とした。その後、無言で腕を組んでくるようになってしまった彼女にされるがままの状態で2人は王城まで来た。
城門にいる騎士に要件を伝えると待つように言われる。しばらくして門が開くとメイドのような格好をした女性が2人を出迎えた。
顔立ちが少し幼く見える彼女は高い位置で腕を組む2人を見て顔を赤らめ、途端に緊張した様子を見せる。
「っ! え、えっと……その、医務室まで案内させていただきます。シャーリーです。もしご用がおありでしたら私にお申し付けください」
こちらです、と城に入っていく女性の後をついていく。何やら満足したらしい七篠はニコニコと笑顔を浮かべながらコウトの隣を歩いている。
2人はある部屋に案内された。置かれた白いベッドに柳葉が横たわっている。
「この方はまだ目を覚まされておりません。容態は安定しているのですが、なにぶん、異世界の方のことなので我々もどうしていいか分からず……」
目を閉じている柳葉を前にシャーリーが申し訳無さそうに説明した。
「シャーリーさんは僕たちが異世界から来た人間だってことを知っているんですね」
コウトから伝えた覚えはないし、七篠もシャーリーとは話したことはないはずだ。一体どれほどの人がコウトたちが異世界人であると知っているのだろう。
コウトと七篠が抱いた疑問は、すぐに解消された。
「はい。この街にいる騎士の皆さんと、城に仕える使用人はサラ様から直接知らされました。街の人たちには伝えられていないようです。私たちも口外しないように言われています」
「……」
ロベルタの人々は異世界人の存在を知らされていない。騎士たちだけには伝えられた。連合軍の騎士たちも自分たちのことは知っているだろう。
「――僕たちはこれからどうなるんだろうな」
コウトには連合軍の騎士たちが、この世界が自分たちをどうしたいと考えているのかわからない。
少し不健康そうな、痩せ気味の体をベッドに沈ませ目を瞑っている柳葉にひとり呟いた。
コウトは自分のこの先、転移者のこの先、そしてなかなか目を覚まさない彼のことすらも不安なのだ。
“アロンダイト館に居る”という書き置きを残しておき、部屋をあとにする。
城から出る前に、シャーリーが七篠を呼び止めた。
「あの! ナナシノ様……であっていますでしょうか。その、話したいことがあって……」
「?」
「できれば、私と2人きりで……」
オドオドと七篠の様子を窺いながら話すシャーリー。七篠はコウトに困ったような表情を向ける。
それを受けて頷いたコウトは先に帰っておくことにした。
「じゃあ僕は先に帰ってる。適当に街を見ながら帰るから、僕のことは気にしないでいいよ」
「す、すいません! のけものにしてしまうような形になってしまって……」
謝るシャーリーにもう一度気にしないよう言ってからコウトは城から出て行ってしまった。
「その、立ち話もなんですので、中庭に行きませんか?」
「? いいけど……」
「それじゃあ行きましょう!」
シャーリーは首を傾げる七篠をやや強引に中庭へと連れて行った。
七篠が背中を押され連れてこられた場所は、庭園のようになっていて、植木や噴水、ベンチなどがあり居心地の良さそうな場所だった。
テーブルを挟んで向かい合うように2つ置かれているベンチにそれぞれ座り、シャーリーが口を開くのを待つ。
「……」
「……」
「……」
「あの……」
「ひゃいっ!!」
「顔がすごく赤いけど大丈夫ですか? 具合悪いところとか、ない?」
なかなか始まらない会話。続ける訳にはいかない“間”と、目の前の赤く茹だる彼女の両方をどうにかするため、七篠は自分から声をかけることにした。
シャーリーは体を跳ねさせ、不自然に伸ばした背筋をさらに張った
「し、心配はいりませんっ! それより敬語はやめていただけないでしょうかっ……サラ様とエウレナ様のお客様に気を使っていただくのは恐れ多くて……」
頼み込むような言い方。彼女に対しては改まらないほうがかえっていいのかもしれないと考え、言葉を崩して、ついでに人懐っこく相好も崩す。
「じゃあ友達みたいに喋りましょう。で、話って何?」
友達みたいにというわけにはいかないとまたも恐縮していたシャーリーだが、やがて意を決したように真剣な表情を作った。
「七篠さんとコウトさんはその……恋人同士なのですか!!」
彼女が改まって見当違いの質問をぶつけた。だがそれも無理はないだろう。七篠と腕を組むコウトは、傍から見たら付き合いたてのカップルのようだった。
「おふたりがそういった関係であるのは別にいいのです。ですがその場合、コウトさんのことをお慕いしているエウレナ様の初恋が、相手がいる方との悲恋になってしまうかもしれないことが不憫で……」
続いた「私としては略奪愛というのもアリなのですが……」という言葉には触れずに、七篠は目の前のメイドの危惧を否定する。
「……心配しなくても、私とコウト君は、そういう関係じゃないよ」
そう言って、解いてしまうには惜しい誤解を寂しい目をして解いてしまう。
事実ではないし、彼女に嘘をつくのは気が引けたのだ。と頭で考える。
「そ、そうなんですね~。……!? じゃあなんで腕を組んでいたんですか!」
「いやー、アレは、その……」
シャーリーの至極真っ当な疑問。身を乗り出して、大げさな動作で詰め寄ってくる彼女に目を泳がせる七篠。あの行為は朝起こしにいく提案を断ったコウトへのちょっとした当て付け半分、自分の素直な欲望半分の、我が事ながら子供っぽい意地悪だった。
彼女はふと、自分が城に来たときよりも騎士たちの出入りが激しく、皆慌ただしくしていることに気付く。
七篠だけじゃなくシャーリーもそれに気づいたようで、不思議そうにしている。
「皆さん、どうしたんでしょう? ……すいません、私ちょっと失礼します」
彼女は席を離れると、近くにいた1人の騎士の元へ行き、何やら話を始めた。1人残された七篠は騎士と話すシャーリーの背中を見ていた。
「……?」
「――! ――?」
2人の会話がかすかにだが聞こえてくる。無意識に耳をすませると、「転移者」という単語が不穏な言葉とともに聞こえてきた。
「なんでも、――が転移者を渡せって。――門を突破された!」
シャーリーが騎士に事情を聞いている最中、自分が座っていたベンチがある方向からカタンという音がした。
音につられ、なんの気無しに振り返ってみる。
そこからは先程自分と話していたはずの人の姿が消えていた。
「……七篠さん?」
「そういえば。すいません、わざわざ起こしてもらっちゃって」
コウトが七篠にわざわざ朝起こさせてしまったことを謝ると、彼女は気にしないでと笑った。
今の2人はフードだけは外してしまっている。ローブを羽織ってアロンダイト館を出たが、顔が見えないせいかかえって怪しまれていたようだったので外したのだ。
コウトの寝顔を思い出して、ローブの上に咲いた七篠の笑顔は一際眩しい。
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「そうかもしれないです」
七篠が聞いてくるので申し訳なく感じながら答えると、彼女は嬉しそうに「じゃあさ」とコウトと向き合った。
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当然、コウトは悪いからと断ろうとするが、七篠が言葉を被せるほうが早い。
「大丈夫だよ。仲間なんだし気にしないで、ね?」
なんでもないことのように言う彼女を見ていると、ついお願いしますと言いたくなってしまう。揺れる心をなんとか正す。
「保留で……」
「えぇー」
七篠は残念そうに肩を落とした。その後、無言で腕を組んでくるようになってしまった彼女にされるがままの状態で2人は王城まで来た。
城門にいる騎士に要件を伝えると待つように言われる。しばらくして門が開くとメイドのような格好をした女性が2人を出迎えた。
顔立ちが少し幼く見える彼女は高い位置で腕を組む2人を見て顔を赤らめ、途端に緊張した様子を見せる。
「っ! え、えっと……その、医務室まで案内させていただきます。シャーリーです。もしご用がおありでしたら私にお申し付けください」
こちらです、と城に入っていく女性の後をついていく。何やら満足したらしい七篠はニコニコと笑顔を浮かべながらコウトの隣を歩いている。
2人はある部屋に案内された。置かれた白いベッドに柳葉が横たわっている。
「この方はまだ目を覚まされておりません。容態は安定しているのですが、なにぶん、異世界の方のことなので我々もどうしていいか分からず……」
目を閉じている柳葉を前にシャーリーが申し訳無さそうに説明した。
「シャーリーさんは僕たちが異世界から来た人間だってことを知っているんですね」
コウトから伝えた覚えはないし、七篠もシャーリーとは話したことはないはずだ。一体どれほどの人がコウトたちが異世界人であると知っているのだろう。
コウトと七篠が抱いた疑問は、すぐに解消された。
「はい。この街にいる騎士の皆さんと、城に仕える使用人はサラ様から直接知らされました。街の人たちには伝えられていないようです。私たちも口外しないように言われています」
「……」
ロベルタの人々は異世界人の存在を知らされていない。騎士たちだけには伝えられた。連合軍の騎士たちも自分たちのことは知っているだろう。
「――僕たちはこれからどうなるんだろうな」
コウトには連合軍の騎士たちが、この世界が自分たちをどうしたいと考えているのかわからない。
少し不健康そうな、痩せ気味の体をベッドに沈ませ目を瞑っている柳葉にひとり呟いた。
コウトは自分のこの先、転移者のこの先、そしてなかなか目を覚まさない彼のことすらも不安なのだ。
“アロンダイト館に居る”という書き置きを残しておき、部屋をあとにする。
城から出る前に、シャーリーが七篠を呼び止めた。
「あの! ナナシノ様……であっていますでしょうか。その、話したいことがあって……」
「?」
「できれば、私と2人きりで……」
オドオドと七篠の様子を窺いながら話すシャーリー。七篠はコウトに困ったような表情を向ける。
それを受けて頷いたコウトは先に帰っておくことにした。
「じゃあ僕は先に帰ってる。適当に街を見ながら帰るから、僕のことは気にしないでいいよ」
「す、すいません! のけものにしてしまうような形になってしまって……」
謝るシャーリーにもう一度気にしないよう言ってからコウトは城から出て行ってしまった。
「その、立ち話もなんですので、中庭に行きませんか?」
「? いいけど……」
「それじゃあ行きましょう!」
シャーリーは首を傾げる七篠をやや強引に中庭へと連れて行った。
七篠が背中を押され連れてこられた場所は、庭園のようになっていて、植木や噴水、ベンチなどがあり居心地の良さそうな場所だった。
テーブルを挟んで向かい合うように2つ置かれているベンチにそれぞれ座り、シャーリーが口を開くのを待つ。
「……」
「……」
「……」
「あの……」
「ひゃいっ!!」
「顔がすごく赤いけど大丈夫ですか? 具合悪いところとか、ない?」
なかなか始まらない会話。続ける訳にはいかない“間”と、目の前の赤く茹だる彼女の両方をどうにかするため、七篠は自分から声をかけることにした。
シャーリーは体を跳ねさせ、不自然に伸ばした背筋をさらに張った
「し、心配はいりませんっ! それより敬語はやめていただけないでしょうかっ……サラ様とエウレナ様のお客様に気を使っていただくのは恐れ多くて……」
頼み込むような言い方。彼女に対しては改まらないほうがかえっていいのかもしれないと考え、言葉を崩して、ついでに人懐っこく相好も崩す。
「じゃあ友達みたいに喋りましょう。で、話って何?」
友達みたいにというわけにはいかないとまたも恐縮していたシャーリーだが、やがて意を決したように真剣な表情を作った。
「七篠さんとコウトさんはその……恋人同士なのですか!!」
彼女が改まって見当違いの質問をぶつけた。だがそれも無理はないだろう。七篠と腕を組むコウトは、傍から見たら付き合いたてのカップルのようだった。
「おふたりがそういった関係であるのは別にいいのです。ですがその場合、コウトさんのことをお慕いしているエウレナ様の初恋が、相手がいる方との悲恋になってしまうかもしれないことが不憫で……」
続いた「私としては略奪愛というのもアリなのですが……」という言葉には触れずに、七篠は目の前のメイドの危惧を否定する。
「……心配しなくても、私とコウト君は、そういう関係じゃないよ」
そう言って、解いてしまうには惜しい誤解を寂しい目をして解いてしまう。
事実ではないし、彼女に嘘をつくのは気が引けたのだ。と頭で考える。
「そ、そうなんですね~。……!? じゃあなんで腕を組んでいたんですか!」
「いやー、アレは、その……」
シャーリーの至極真っ当な疑問。身を乗り出して、大げさな動作で詰め寄ってくる彼女に目を泳がせる七篠。あの行為は朝起こしにいく提案を断ったコウトへのちょっとした当て付け半分、自分の素直な欲望半分の、我が事ながら子供っぽい意地悪だった。
彼女はふと、自分が城に来たときよりも騎士たちの出入りが激しく、皆慌ただしくしていることに気付く。
七篠だけじゃなくシャーリーもそれに気づいたようで、不思議そうにしている。
「皆さん、どうしたんでしょう? ……すいません、私ちょっと失礼します」
彼女は席を離れると、近くにいた1人の騎士の元へ行き、何やら話を始めた。1人残された七篠は騎士と話すシャーリーの背中を見ていた。
「……?」
「――! ――?」
2人の会話がかすかにだが聞こえてくる。無意識に耳をすませると、「転移者」という単語が不穏な言葉とともに聞こえてきた。
「なんでも、――が転移者を渡せって。――門を突破された!」
シャーリーが騎士に事情を聞いている最中、自分が座っていたベンチがある方向からカタンという音がした。
音につられ、なんの気無しに振り返ってみる。
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「……七篠さん?」
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