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来る征戦の騎士、明かされる聖剣の未知
35話 現実
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王城で七篠とシャーリーの2人と別れたコウトはロベルタの街を歩いていた。特に目的の場所があるわけではない彼はなんの気無しに街の外側に向かっている。
自分が住んでいた場所とは違う、RPGで見たような建物や、時折見かける耳と尻尾を持つ人々を見ていると異世界にいるという実感が湧いてくる。
「これは夢じゃないんだよな……」
自然、彼が今まで魔法を使用した時の記憶が思い起こされる。エウレナを助け、ブレイグ夫妻を助け、ユーリを助けた。その時同じ世界から来た谷嶋を殺した。……ブレイグ夫妻を助けるとき、盗賊はどうしたのだったか。
「殺した……のだったか」
途端に、自分がどうしょうもなく恐ろしいことをしてしまったのではないかと考えた。大した実感もないままに、いやだからこそだろうか。知らぬ間に宿っていた魔法という力によって、今までしたことがないような方法で人を助け、そして危機を退けた。
その折に木に叩きつけた頭と呼ばれていた男は?
自分に剣を振り下ろそうとしていた盗賊は?
――わからない。実感がない。
コウトの手には盗賊たちを殺したときの実感も、感触も伝わってこなかった。谷嶋も同様に彼ではなく彼の魔法が殺したのだ。
実感できないくせに、そこにある現実。
この世界は夢ではない。でももし現実でもなかったのなら。夢でも現実でもない何かを彼はなんと呼びどう生きればいいのか。
「……帰ろう」
暗い思考に引っ張られるそれに見切りをつけて、アロンダイト館に戻るため来た道を引き返した。
七篠さんが戻ってきたら少し相談をしてみよう。そんなことを考えていた時、遠くで音がした。振り返ると、街を覆う壁の門が開けられている最中だった。
「なんだ?」
門のある方に急ぐコウト。
ただ門が開いただけ。それだけなら散策がてらに行ってみるのもいいかもしれないと考えるのみだっただろう。しかし、彼が今そこへ向かっている時の心境は穏やかではなかった。
少しの間をおいて、門の方から悲鳴や怒号が聞こえてきたからだ。
走っていると、向こうから騎士がやってくるのがわかった。コウトはその騎士に声をかける。
「何かあったんですか?」
「あぁ!? 今忙しいんだよ……。ッ! あんたは――」
騎士の男は一瞬声を荒らげたが、コウトの姿を認めるとばつが悪そうに説明を始めた。
「レッドの騎士が転移者を渡せって言ってきた。それも、なんの連絡もなく急にだ」
「なんでそんなことを……」
「さぁな俺も詳しいことは知らねぇが、寄越されてきたのは征戦騎士とその私設部隊だぜ。従わねぇと何をされるか……」
そこまで言って騎士は口をつぐむ。“征戦騎士”という言葉が出てくると、騎士が纏っていた剣呑な雰囲気がより濃くなった。
「とにかく、俺はこのことを伝えなきゃなんねぇ!! あと、俺は聞かれたから答えただけだからな! 余計なことを口走ったわけじゃねぇからな!」
騎士の男は確認するようにそう言うと走って行ってしまった。
「征戦騎士だって!?」
「そんな、なんであいつがッ! 私たちはどうすれば……ヤイル王国の追討のこともありエウレナ様もお疲れだというのに!」
今の会話を聞いていたのだろう。近くにいた男女が征戦騎士の名に反応している。悔しさを吐き出している彼らにコウトは尋ねた。
「すいません、その征戦騎士っていうのは?」
「知らないのか? 征戦騎士ってのはレッドにおいて最高とされる騎士の名だよ。その強さはエウレナ様にも劣らないほどと言われてる」
「今まであいつはエウレナ様に婚姻を申し込みに来ることがあったんだ。きっと今回も懲りずにやってきたに違いない」
男がそう言うと、女性が「ほんとーにレッドの騎士はしつこい!」と罵った。どうやら彼らは征戦騎士の来訪の理由を勘違いしているようだ。転移者のくだりは聞かれてなかったらしい。
――目的は僕たち転移者みたいだな……とりあえず行ってみるか。レッドの騎士たちが暴れていたとして、転移者である僕が行けば何か変わるかもしれない。
コウトは逸る心のままにお礼をそこそこにすませ、また走り出した。
自分が住んでいた場所とは違う、RPGで見たような建物や、時折見かける耳と尻尾を持つ人々を見ていると異世界にいるという実感が湧いてくる。
「これは夢じゃないんだよな……」
自然、彼が今まで魔法を使用した時の記憶が思い起こされる。エウレナを助け、ブレイグ夫妻を助け、ユーリを助けた。その時同じ世界から来た谷嶋を殺した。……ブレイグ夫妻を助けるとき、盗賊はどうしたのだったか。
「殺した……のだったか」
途端に、自分がどうしょうもなく恐ろしいことをしてしまったのではないかと考えた。大した実感もないままに、いやだからこそだろうか。知らぬ間に宿っていた魔法という力によって、今までしたことがないような方法で人を助け、そして危機を退けた。
その折に木に叩きつけた頭と呼ばれていた男は?
自分に剣を振り下ろそうとしていた盗賊は?
――わからない。実感がない。
コウトの手には盗賊たちを殺したときの実感も、感触も伝わってこなかった。谷嶋も同様に彼ではなく彼の魔法が殺したのだ。
実感できないくせに、そこにある現実。
この世界は夢ではない。でももし現実でもなかったのなら。夢でも現実でもない何かを彼はなんと呼びどう生きればいいのか。
「……帰ろう」
暗い思考に引っ張られるそれに見切りをつけて、アロンダイト館に戻るため来た道を引き返した。
七篠さんが戻ってきたら少し相談をしてみよう。そんなことを考えていた時、遠くで音がした。振り返ると、街を覆う壁の門が開けられている最中だった。
「なんだ?」
門のある方に急ぐコウト。
ただ門が開いただけ。それだけなら散策がてらに行ってみるのもいいかもしれないと考えるのみだっただろう。しかし、彼が今そこへ向かっている時の心境は穏やかではなかった。
少しの間をおいて、門の方から悲鳴や怒号が聞こえてきたからだ。
走っていると、向こうから騎士がやってくるのがわかった。コウトはその騎士に声をかける。
「何かあったんですか?」
「あぁ!? 今忙しいんだよ……。ッ! あんたは――」
騎士の男は一瞬声を荒らげたが、コウトの姿を認めるとばつが悪そうに説明を始めた。
「レッドの騎士が転移者を渡せって言ってきた。それも、なんの連絡もなく急にだ」
「なんでそんなことを……」
「さぁな俺も詳しいことは知らねぇが、寄越されてきたのは征戦騎士とその私設部隊だぜ。従わねぇと何をされるか……」
そこまで言って騎士は口をつぐむ。“征戦騎士”という言葉が出てくると、騎士が纏っていた剣呑な雰囲気がより濃くなった。
「とにかく、俺はこのことを伝えなきゃなんねぇ!! あと、俺は聞かれたから答えただけだからな! 余計なことを口走ったわけじゃねぇからな!」
騎士の男は確認するようにそう言うと走って行ってしまった。
「征戦騎士だって!?」
「そんな、なんであいつがッ! 私たちはどうすれば……ヤイル王国の追討のこともありエウレナ様もお疲れだというのに!」
今の会話を聞いていたのだろう。近くにいた男女が征戦騎士の名に反応している。悔しさを吐き出している彼らにコウトは尋ねた。
「すいません、その征戦騎士っていうのは?」
「知らないのか? 征戦騎士ってのはレッドにおいて最高とされる騎士の名だよ。その強さはエウレナ様にも劣らないほどと言われてる」
「今まであいつはエウレナ様に婚姻を申し込みに来ることがあったんだ。きっと今回も懲りずにやってきたに違いない」
男がそう言うと、女性が「ほんとーにレッドの騎士はしつこい!」と罵った。どうやら彼らは征戦騎士の来訪の理由を勘違いしているようだ。転移者のくだりは聞かれてなかったらしい。
――目的は僕たち転移者みたいだな……とりあえず行ってみるか。レッドの騎士たちが暴れていたとして、転移者である僕が行けば何か変わるかもしれない。
コウトは逸る心のままにお礼をそこそこにすませ、また走り出した。
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