継ぐマホウ 〜曇り所により片頭痛、気がついたら異世界〜

パキ・パキ

文字の大きさ
35 / 47
来る征戦の騎士、明かされる聖剣の未知

35話 現実

しおりを挟む
 王城で七篠とシャーリーの2人と別れたコウトはロベルタの街を歩いていた。特に目的の場所があるわけではない彼はなんの気無しに街の外側に向かっている。

 自分が住んでいた場所とは違う、RPGで見たような建物や、時折見かける耳と尻尾を持つ人々を見ていると異世界にいるという実感が湧いてくる。

「これは夢じゃないんだよな……」

 自然、彼が今まで魔法を使用した時の記憶が思い起こされる。エウレナを助け、ブレイグ夫妻を助け、ユーリを助けた。その時同じ世界から来た谷嶋を殺した。……ブレイグ夫妻を助けるとき、盗賊はどうしたのだったか。

「殺した……のだったか」

 途端に、自分がどうしょうもなく恐ろしいことをしてしまったのではないかと考えた。大した実感もないままに、いやだからこそだろうか。知らぬ間に宿っていた魔法という力によって、今までしたことがないような方法で人を助け、そして危機を退けた。

 その折に木に叩きつけたかしらと呼ばれていた男は?
 自分に剣を振り下ろそうとしていた盗賊は?

――わからない。実感がない。

 コウトの手には盗賊たちを殺したときの実感も、感触も伝わってこなかった。谷嶋も同様に彼ではなく彼の魔法が殺したのだ。

 実感できないくせに、そこにある現実。
 この世界は夢ではない。でももし現実でもなかったのなら。夢でも現実でもない何かを彼はなんと呼びどう生きればいいのか。

「……帰ろう」

 暗い思考に引っ張られるそれに見切りをつけて、アロンダイト館に戻るため来た道を引き返した。
 七篠さんが戻ってきたら少し相談をしてみよう。そんなことを考えていた時、遠くで音がした。振り返ると、街を覆う壁の門が開けられている最中だった。

「なんだ?」

 門のある方に急ぐコウト。
 ただ門が開いただけ。それだけなら散策がてらに行ってみるのもいいかもしれないと考えるのみだっただろう。しかし、彼が今そこへ向かっている時の心境は穏やかではなかった。
 少しの間をおいて、門の方から悲鳴や怒号が聞こえてきたからだ。

 走っていると、向こうから騎士がやってくるのがわかった。コウトはその騎士に声をかける。

「何かあったんですか?」
「あぁ!? 今忙しいんだよ……。ッ! あんたは――」

 騎士の男は一瞬声を荒らげたが、コウトの姿を認めるとばつが悪そうに説明を始めた。

「レッドの騎士が転移者を渡せって言ってきた。それも、なんの連絡もなく急にだ」
「なんでそんなことを……」
「さぁな俺も詳しいことは知らねぇが、寄越されてきたのは征戦騎士せいせんきしとその私設部隊だぜ。従わねぇと何をされるか……」

 そこまで言って騎士は口をつぐむ。“征戦騎士”という言葉が出てくると、騎士が纏っていた剣呑な雰囲気がより濃くなった。

「とにかく、俺はこのことを伝えなきゃなんねぇ!! あと、俺は聞かれたから答えただけだからな! 余計なことを口走ったわけじゃねぇからな!」

 騎士の男は確認するようにそう言うと走って行ってしまった。

「征戦騎士だって!?」
「そんな、なんであいつがッ! 私たちはどうすれば……ヤイル王国の追討のこともありエウレナ様もお疲れだというのに!」

 今の会話を聞いていたのだろう。近くにいた男女が征戦騎士の名に反応している。悔しさを吐き出している彼らにコウトは尋ねた。

「すいません、その征戦騎士っていうのは?」
「知らないのか? 征戦騎士ってのはレッドにおいて最高とされる騎士の名だよ。その強さはエウレナ様にも劣らないほどと言われてる」

「今まであいつはエウレナ様に婚姻を申し込みに来ることがあったんだ。きっと今回も懲りずにやってきたに違いない」

 男がそう言うと、女性が「ほんとーにレッドの騎士はしつこい!」と罵った。どうやら彼らは征戦騎士の来訪の理由を勘違いしているようだ。転移者のくだりは聞かれてなかったらしい。

――目的は僕たち転移者みたいだな……とりあえず行ってみるか。レッドの騎士たちが暴れていたとして、転移者である僕が行けば何か変わるかもしれない。

 コウトははやる心のままにお礼をそこそこにすませ、また走り出した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...