召喚されたら幼女になってしまいました

くろねこ

文字の大きさ
2 / 8

2  どうやら異世界みたいです

しおりを挟む
「∇□×○※◆∀?」

部屋に誰かが入ってきた。

男性みたいだがやたらいい声だ。何を言っているのか、布団を被っているからかよくわからない。

びくびくしながら布団にくるまっていると、足音が近付いてきた。ベッドを覗き込まれている気配がする。

「○×◆□※∇」

男がまた何か言って俺の布団を剥がした。

しまった!目と目が合ってしまった。

ああ、やっぱり。

どう見ても外国人だ。

白い肌にウェーブのかかった栗色の髪、茶色がかった金色の瞳。鼻筋は高く俳優ばりの濃い顔立ちのめっさ男前だ。欧米人の年齢はよくわからないが、アラサーぐらいだろうか。

何かのコスプレなのか、いや、それともやはり俳優だから撮影なのか、少々変わった服を着ている。中世の騎士っぽい鈍色の甲冑だ。あちこちに傷がある。

その男前がにっこり笑った。女なら即ノックダウンだ。

とりあえず寝ているのは失礼かと思い、起き上がろうとすれば男が手を添えてくれる。う~ん、やっぱ紳士だ。

そして優しい手つきで、小さい子供にするように頭を撫でてくれた。体はごつくて威圧感があるのに優しいんだなあ。あ、今の俺は小さい子供なんだった。

とりあえずここがどこなのか聞こうと男を見ると、彼は優しげな笑顔のまま俺を見て言った。

「○※×◆∀>∇?■×◆□∇※∀?」

何を言っているのかさっぱりわからない。ラノベにありがちな言葉が通じるチートな能力が、夢の中だからか俺にはないようだった。不親切だなあ、俺の夢。

「※∀○×□>◆?」

もう一度何か聞かれたがやはりわからない。

俺が困っているのに気付いて、言葉が通じていないのがわかったようだ。今度は身ぶり手振りで教えてくれようとする。

「×■○◆∀>∇ライアン」

自分を指差していたので、どうやら彼の名前らしい。見た目の通りの名前だ。ジロウとかだったら笑ってしまう。

彼はそれから俺の方を示した。どうやら名前を聞かれているらしい。

そこではたと気付いた。自分の名前がわからない。もちろん今の姿ではなく、俺の元の姿の名前をだ。

顔も性別も、どこに住んでたとか、何をしてたとか、家族や友達のことまで思い出せるのに、なぜか自分の名前だけが思い出せない。

俺は誰だったんだろう。

頭を抱えながら唸っていると、また誰かが入ってきた。先程までは気付かなかったが、飾り棚の横に扉があり、そこから二つの人影が現れた。一人はモデルか何かですかって思う程の高長身。そしてライアンとはまた違ったタイプのイケメンだ。

白いズルズルした服を着ていて、長い金髪を後ろで縛っている。

そしてその後ろから現れたもう一人を見て驚愕した。

その人物?のおかげで、ここが海外のどこかではなく、地球がある俺がいた世界ではない、所謂トリップ物でよくあるファンタジーな異世界であることはよくわかった。そんなに現実逃避したかったのか、俺よ!

金髪の男に続いて現れたのは、超絶好みなダイナマイトなナイスバディ。あの、不○子ちゃ~んすらも凌駕する、ボン・キュッ・ボンの赤い髪の綺麗なお姉さま?だった。

ただし……ただしどう見ても人間ではない姿をしている。額にはピンク色のキラキラ光る石が埋め込まれ、頭からは角のような三角の乳白色の物体が刺さっていた。尻から蜥蜴のようなワニのような、赤くて大きい尻尾が生えている。どう見ても特殊メイクと呼べるレベルじゃない。

こんなに巨乳で美人なのに~。夢の癖に!

「なんてもったいない!!」

俺は思わずベッドに突っ伏した。

急に臥せった俺に、彼らは慌てているように口々に何か言っている。心配してくれているようだが、やっぱり何を言っているのかさっぱりだ。

そこにまた違う声が聞こえた。

「大丈夫?」

「まだイタイ?」

子供の声だ。不思議なことにその言葉は理解出来た。

「フリン、フラム、○×◆※∇?」

先程のお姉さまのだろう声が何か言った。最初の聞き取れた言葉は名前だろうか。

「わかったー」

子供の声がそれに応える。やはり子供の声は理解できるな、と不思議に思っていると、突然体が暖かくなるのを感じた。外からではなく体の内側からの熱だ。

思わず顔を上げると、目の前に二つの小さな顔があった。

思わずぎょっとした。あまりにもそっくりな顔が二つ。それはまあいい。ただ二人の顔が、顔の色が、人間とは全く違っていた。肌の色が薄い灰色なのだ。おまけに耳は尖っている。

明らかに人間じゃない。顔の作りはは可愛いけど。でも正直恐い。

恐らく子供だろうが、人間じゃない存在に目の前まで近付かれて、びびらない訳はない。思わず壁際まで寄ってしまった。

そんな俺を見て、二人は顔を見合わせる。

「これで言葉がわかるよ」

「わかる?わかるよね!」

二人の子供がにこりと笑う。その顔がなんだか年の離れた従弟たちに似ていて、ようやく落ち着いた。

「あ、ありがとう」


俺がそう言うと、二人はぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。

可愛い。なんか凄い可愛いぞ。

俺の今の体よりかは年上だろうが、それでも十歳くらいだろう。無性にぎゅうと抱き締めたくなった。

ショタコンとかロリコンの気はないはずだけどな……俺。

とりあえず恐怖は消えたので、おずおずと元の場所に戻れば、ライアン手を差し出してきた。

「改めまして、俺はライアン・オニール。よろしく」

握手を求められた。ゴツゴツした男らしい手だ。羨ましい。

「僕はルアン・ケリー。普段はルーイって呼ばれてる。君もそう呼んで。王宮で魔法使いをしてるんだ」

次にベッドサイドに腰をかけて話し掛けてくれたのは、金髪長身のイケメンさん。二十代半ばくらいだろうか、ライアンより背は高そうだか線が細いから威圧感がない。

それにしても変な格好だと思ったら、魔法使いだったのか。納得だ。

しかし魔法使いかあ、いよいよ異世界って感じだな。俺も使えるのかな?

ちょっとだけワクワクしていたら、今度はあの色っぽいけど人間じゃないお姉さまが近付いてきた。ああ、その胸にダイブ、いや、ぱふぱふしたい。

「私はブリギッド。サラマンダーの精霊よ。一応高位の精霊なの」

妖艶なお姉さまはなんと精霊だった。精霊がどんな存在か、サラマンダーが何か、色々よくわからないけれど、うふんと色気たっぷりな微笑みを投げ掛けられて、どうでもよくなってしまった。俺ってつくづくアホだな。

サラマンダーだけど巨乳のお姉さまがベッドを離れ、先程の子供たちを自分の前に立たせる。二人の顔はやっぱりそっくりだった。けれど髪型は少し違う。一人は襟足が長めのショーットカット。もう一人はそれより少しだけ全体的長く、後ろの髪は肩まであった。おそらく女の子だろう。

「この子たちはフリンとフラム。双子のエルフなの」

「名前、名前教えて!ボク、フラム」

「ワタシ、フリン、なまえは、なまえは?」

エルフの双子がベッドに乗って近付いてくる。

「ごめんなさい。お、いや、わたし…名前わかんない」

一応この体に見合う話し方にした。男性で、まして二十歳過ぎた大人だなんて知られたくない。それに話しても信じてもらえないかもしれないし。

ま、一番はこのまま可愛い幼女を演じた方が親切にしてくれそうだ、という打算的な考えのもと、俺は幼女キャラになりきることにした。

ちょっと、いや、かなりキモいな、俺。



その後も色々聞かれたが、もちろん俺は何一つまともに答えることが出来なかった。

どこの誰か、ここがどこかもわからない俺に、三人の大人プラス二人の子供はとても親切だった。

三人の説明によれば、ここはティルナ・ノーグ国の王宮で、近衛騎士団の宿舎の中らしい。

ライアンはその近衛騎士団のなんと団長だそうだ。カッコいいなあ。

それにしても……。宿舎とはいえ、さすが王宮。どうりで広いはずだ。調度品も高そう。汚さないようにしよう……。

改めて部屋を眺めていると、今度は俺を見付けた時の話になった。

「どこから来たのもわからないとは不思議よねえ…あなた王宮の裏庭で倒れてたのよ。しかも血塗れで」

なんだそれ?

何も覚えていない。全く記憶にない。血塗れ?どういうことだ!?

「何か竜巻にでも巻き込まれたみたいな感じだったわ。服が破れてて、切り傷がたくさんあったの」

竜巻と言われてもピンと来ない。

「そうか……。それもわからないのか……。痛かったろうに」

ライアンが痛ましげに俺を見る。

俺は視線を逸らした。そんな顔してもらっても覚えてないし、だいたい傷も治っている。たぶん魔法で治してくれたんだろう。身に覚えもないことでかわいそがられてもな……。

「もしかして何か辛い目に遭って、記憶をなくしたのかもしれないね。大丈夫。大事なことならきっと思い出すよ」

ルーイが笑って、慰めるように頭を撫でてくれた。

ブリギッド姉さまもぎゅっと抱き締めてくれる。

豊満な胸が!ダイナマイトなお胸があぁ!柔らかいのにこのなんとも言えない弾力。これは神だ!神が与えたもうた奇跡だ!

ああ、サイコーの感触!もっとお願いします!!

アホなことを思っていると、ライアンにも頭をくしゃりと撫でられた。男はいらねえ!

「そうだな、何か思い出すまでここにいればいいさ」

「そうそ。ここは安全だしね。あ、警備隊には僕から通しておくよ。近衛騎士団のみんなにはライアンから言ってくれるだろう?」

「ああ。あ、いや、その前に陛下だな。それとルーリー殿下にも言わないと……」

「殿下にはもう言ってある」

「お前仕事はえーなあ。あ、だからこの部屋なのか……」

三人が真剣に話しているのに、だんだんと目蓋が重くなってくる。聞かないといけないのに……。

うつらうつら船を漕ぐ俺を、双子がベッドに運んでくれる。

「ネムイの?ねていいよ」

「ボクたちがそばにいてあげるから」

その言葉になぜか安心して、俺は眠ってしまった。

夢の中なのに寝るって……夢じゃないのか!?

いや、きっと目が覚めたら俺の部屋なはず。

きっとそうだ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...