乙女ゲームに迷い込んだみたいです

青井りか

文字の大きさ
11 / 16

事件です!生まれて初めて告白されました

しおりを挟む
SIDE-L
 冬休みも終わって3学期になりました。今更なのですが、毎日、放課後はラフと生徒会室で待ち合わせすることになりました。活動のある日もない日も。恋人同士っぽいことしてるじゃん、と思われた方、残念でした違います。12月のテストで順位が落ちたので、勉強です。それでもラフが私の勉強を気にしてくれてることや毎日会えるのは嬉しいことです。

 浮かれ気分で生徒会室に向かってると
「リリー嬢」
 ガブに声をかけられた。いつも共用棟で待ち伏せされてる気がする。
「先日送ったショール、ラファエル殿下から返却されました。悲しかったです。」
「申し訳ありません。やはり、婚約者のいる身ですから、頂戴するわけにはまいりません。」
「縛り付けられているのですね。可哀想に。」
「そんなことありませんわ。お気持ちはありがたくいただきますね。では、失礼します。」

 立ち去ろうとしたら
「待ってください。今、生徒会室に行っても、ミュー嬢と鉢合わせですよ。さっき、彼女が生徒会室に入っていくところを見ましたよ。」
 彼女がなんで生徒会室に?誰かが招いた?それは・・・・・・ラフ?逢引中なら邪魔しない方がいいよね。

 私が下を向いてると
「リリー嬢、可愛らしい顔が見えませんよ。顔を上げてください。」
 口説き文句みたいで戸惑う。
「ラファエル殿下はミュー嬢と仲がよろしいようですね。」
「・・・・・・私達は親の決めた婚約ですから、ラファエル殿下が他の方に心を寄せても仕方ありませんわ。」
 うん。シナリオ通りなら卒業式で私はふられるのよね。あのゲームのラフルート、何回もしたから大丈夫。間違えないわ。

「秋頃はラファエル殿下とケンカされてたようで、私が入り込むスキがあるかと期待していましたよ。」
「お騒がせしました。いろいろとデリケートになってまして、たくさんの方にご迷惑をかけてしまいました。」
 うん、あれは一人で突っ走ってた。今思い出しても恥ずかしい。
 ん?入り込むスキ?ラフに嫌がらせしたいの?ん?ラフは私と別れたいはずだから・・・・・・

「リリー嬢、帝国に来ませんか?」
 ?どういうこと?返答に詰まっていたら、ガブは優しい笑みを浮かべて、
「私はあなたのことが好きです。大事にしますよ。」
 さらりと告白された。

 えっえっえっ!いま、なんて言った?
 告白だよね。初めて告白された。でもなんで?ラフに嫌がらせ?
「申し訳ありません。私、婚約して」
「ラファエルは許婚でしょ?ラファエルがミュー嬢を選んで婚約解消を言い渡される前に、私から、帝国から婚約解消を申し出ませんか?」
 そう言われ、うつむいた。
 わかってるわよ。これはラフと主人公ミューが結ばれる、シナリオも全部覚えてる。そして私達は親の決めた婚約者。ラフから好きだなんて言われたことないもの。

 なんか嫌な方向に話が向いてるから、話題を変えなきゃ。
「ガブリエル殿下は帰国したら、どのようなお仕事を手伝われる予定ですか?」
「リリー嬢、帝国では上級貴族は働きませんよ。私も。国に帰り、あとは優雅に過ごすだけです。」
「え?でもせっかく勉強しましたから、何か国の為に役に立ちたいと思いませんの?毎日遊ぶのって飽きちゃいそう。」
 私がそういうと、会話がとまった。
 そして、
「あはは、やはり、あなたは賢い。」 
 初めてガブの笑い声を聞いた。
 これがクーデレとかいうものなのかしら。これまでに見たことのない一面で胸きゅんってなる。
 ――でも、ガブとの好感度が上がるとラフとの好感度が下がるのだ。いや、ラフがミューと会って、それでラフと私の好感度が下がったので、ガブと私の好感度が上がったのかもしれない。も一つの顔が見れるくらい。


 生徒会室に着くと、ラフは窓から外を見てた。その背をみせたまま振り向かずに
「遅かったね。」
 あれ?なんか怒ってる?
「お待たせして申し訳ありません。」
 ラフはこちらを見てないけど頭を下げた。
「ガブリエル殿下と一緒にいたんだって?」
 あ、バレてる。
「声をかけられたから少しお話ししました。」
 自分はミューといたくせに。
 ラフが振り返って私を見た。怒ってる。
「リリ、君は私の婚約者だ。面倒見がいいところは美徳だと思うけど、男性との接触は誤った印象を与えかねないから、慎んで欲しい。」
「・・・・・・」
「分かった?」
 黙ったまま頷く。
 お母様の言葉を思い出す。
――好かれるように努力しなきゃ。――
 ここはゲームの中。最後は振られるシナリオ。でも、私がラフのこと好きだから、最後のその日まで好かれるように努力しよう。自分にいい聞かせる。
「申し訳ありません。ガブリエル殿下と言葉を交わさないようにしますね。」
 これでいいのかな。ラフに好かれるように、ラフの言うとうりに。
 悄然としてうつむいてると、ラフが隣りにきて私の手をとった。
「リリ、ごめんね。」
 顔を上げた。目が合うと、いつもの薄い笑みを浮かべてた。何がごめんなのか分からないよ。






SIDE-R
 リリの12月のテスト結果が振るわなかった為、放課後は生徒会室で一緒に勉強することにした。彼女はもっとできる人だから。こうして毎日会える口実ができたことは嬉しい。


 生徒会室のドアを開けたら、室内にミュー嬢がいた。
「ラファエル様!お待ちしてました。」
 身の危険を感じ、廊下に下がる。
「ミュー嬢、ここは役員以外立入禁止だからね。」
 ミュー嬢は私の方に駆け寄ってきた。手をとろうとしたので、更に引き下がった。
「ラファエル様!大事な話があります。お部屋で二人きりでお話したいのですけど。」
「婚姻前の男女が部屋に二人きりでいるのはどうかと思うけどね。話があるならここで聞くよ。」
 いろいろと噂のある彼女とは、怖くて部屋に二人きりになんてなれない。

 ミュー嬢はしおらしさを演じるように口に拳をあてて喋り始めた。
「先程、リリー様がガブリエル殿下と楽しげに話してましたよ。」
 またガブリエルか。癇に障るやつだ。しかし、ミュー嬢を早く追い出したいので、
「それで?」
 短い返事をしたら、こちらが迷惑がってる気配を感じたのか、ふてぶてしい態度になった。
「いいんですかあ?ビッチな彼女をほっといて。二人で倉庫に向かってましたよ。」
 彼女は、リリにあれだけ世話になっているのに、どうしてこういう行動をとるのだろうか。全く分からない。
「こちらはこちらで楽しんだ方がいいと思いますよー。」
 意味深に口角を上げるミュー嬢。

 ため息をついた後、彼女に言った。
「ミュー嬢はこの学園が何を教えてるか、学んでわかってるのかい?身分社会を学ぶ場所でもあるんだよ。いいかい、君は男爵令嬢。リリは公爵令嬢で、そして私の、王太子の大事な婚約者だからね。」
 ミュー嬢は上目遣いで睨んできた。

「リリは何も言わないけど、倉庫に閉じ込めたり、あらぬ噂を流したり、見えていないとでも思ってるのかい。」
 声のトーンを落として話した。彼女はさすがにいたたまれなくなって、何も言わず走って逃げた。
 これで寄り付かなくなってくれればいいが。


 リリを待つ。今、ガブリエルと一緒なのか?あの挑戦的な帝国の王子。
 中庭を見ながら心を落ちつかせる。暫くして、リリが部屋に入ってきた。
「遅かったね。」
 振り向かずに言った。リリの顔を見たら怒ってしまいそうだ。
「ガブリエル殿下と一緒にいたんだって?」
「声をかけられたから少しお話ししました。」
 少しじゃないだろ。大分待ったぞ。
 振り返ってリリを見ると、しゅんとしている。いや、怒りたいわけじゃないのに。
「リリ、君は私の婚約者だ。面倒見がいいところは美徳だと思うけど、男性との接触は誤った印象を与えかねないから、慎んで欲しい。」
 ああ、ダメだ。怒りを収められない。落ちつけ落ちつけ、冷静な行動をとるように躾られただろ。
「申し訳ありません。ガブリエル殿下と言葉を交わさないようにしますね。」
 うん、そうしてくれ。いや、そうじゃないんだ。
 自分の気持ちの整理がつかない。追いつかない。
 
 リリがうつむいてる。なんとなく納得出来てないようだ。
 隣りにいき、リリの手をとった。
「リリ、ごめんね。」
 リリが顔を上げた。目があったので笑いかけた。

 リリを帝国にとられたくないんだ。
 ずっと私のそばにいて欲しいんだ。

 みっともないけど、素直にそう言えば良かったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

ゲームには参加しません! ―悪役を回避して無事逃れたと思ったのに―

冬野月子
恋愛
侯爵令嬢クリスティナは、ここが前世で遊んだ学園ゲームの世界だと気づいた。そして自分がヒロインのライバルで悪役となる立場だと。 のんびり暮らしたいクリスティナはゲームとは関わらないことに決めた。設定通りに王太子の婚約者にはなってしまったけれど、ゲームを回避して婚約も解消。平穏な生活を手に入れたと思っていた。 けれど何故か義弟から求婚され、元婚約者もアプローチしてきて、さらに……。 ※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた

鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。 幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。 焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。 このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。 エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。 「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」 「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」 「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」 ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。 ※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。 ※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

処理中です...