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番外編 ミューの勇気
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目が覚めたら病院にいた。
私、美優は高校2年生の終わりに交通事故にあい、1年以上意識が戻らなかった。
「兄、プレステあったよね。」
足の踏み場もない兄の部屋、足で道を作りながらテレビ付近のゲーム機を探す。あった。ゲームをセットして、兄が寝転んでるベットに背をもたれて座った。
「うぇー、なんだ、この絵ないなあ。」
昔のゲームなので、映像の色数が少なく透明度が全くない。私は主役の名前に「ミュー」といれた。
「なんだあ、乙女ゲームか。お前、ずっと入院してて男日照りだったもんな。そんなんで欲求満たそうなんて可哀想なやつめ。」
兄が茶化してきた。うるさいなー、と言いながら進めていく。
「出た。金髪王子。胡散臭くて気持ち悪いよな。」
「なんでも出来るぼんぼんやねんけど、こいつ、婚約者のこと、めちゃ好きやねん。」
そして、銀色の長い髪の女が腰に手をあてて怒ってる映像が出てきた。リリーだ。
「リリアンヌ『ミュー様、あなたマナーがまるでなってませんね』
うんうん。この女よく分かってんな。」
「こいつが恋敵やねん。」
「いけ好かない女やなあ。」
「でもこいつだけやねん。ミューに話しかける女。」
そう。身分社会の女社会。女で一番権力のある公爵令嬢のこの女が私にかまうから、周りのお嬢達にいじめられることがなかった。自分のテストの順位を落としてまでミューの面倒みてたもんね。
私はスマホをテレビに向けて写真を撮った。
「なにしてんねん。」
「んー。おまもり。」
写真にはテレビ特有の線がはいっていたが、まあいっか、とゲームを進めた。
タオル渡して、タオル渡して、聖書渡して、でもラファエルとうまくいかなくて、ミューは落第した。バッドエンドだ。ラファエルとリリーがどうなったかは、わからなかった。
そこが見たかったのにな。
でも卒業テスト前、毎日ラファエルがリリーの勉強をみて、お互い満点とって、リリーが泣いてたのを思い出した。あの雰囲気のままうまくいってたらいいのにな。
ビービー泣く一歳の息子を連れて公民館にきた。今日は絵本の読み聞かせがある。
「美優~。こっちこっち。」
同じ高校中退ママ達が私を呼ぶ。そう、私は一年留年して、やっと三年になれたのに、卒業寸前に妊娠が発覚して退学、結婚という、あるある人生を歩んでる。
部屋に入ると、隅っこに年輩のママと男の子がポツンと座ってた。
「あいつ、46だって。うちのばばあよりばあちゃんで子供産んでるんや。」
「子供、成人する前に年金もらうんやな。」
「年金なんてないやろー。払ってないでー。」
だははははと笑い、絵本の読み聞かせの人達に子供をまかせて喋くってた。なんとなく気になるから横目でチラチラ見てたが、ずっと一人で寂しそうだった。
「終わったね。マクド行かん?」
「月見バーガー食べたいー。美優は?」
「うーん、今日は帰るわ。ピンチやねん。給料でたら誘って。」
と友達と別れる。
でもどうしよう。あの人、私と全く違う人生を歩んで来たんだよな。話し合うん?でも同じくらいの月齢の子供おったら、子育ての話とか合うか。いや、あの人はあの人で先に子供産んだ自分と同級生から子育て方法聞けるか。
※子育て方法は日進月歩で変わっていくので、先輩ママの方法が決して正しいわけではない。一人目と二人目で保健センターが言ってること違うのもあるある。
でも、あの子供、ずっと一人で可哀想だよ。どうしよう。どうしよう。
私はスマホを握りしめて祈った。
リリー、あんたの勇気を私にちょうだい!
よし。
私は立ち上がって、その人の前に立った。
「こ、こんにちは!」
なんて書くと私がいい人みたいだけど、この後、「姉さん」には離婚訴訟の時は姉さんの友達の弁護士を紹介してもらい、姉さんの友達が興した会社で雇ってもらい(高校中退の子持ちを事務職で雇ってくれるなんて姉さんがいなきゃ有り得んよ)、高卒認定試験の勉強も姉さんや姉さんの友達にみてもらった。
お互いの子供たちは別々の道を歩んでるけど、姉さんと私はまだ続いてる。
ちゃぶ台で化粧して、テレビで時間を確認。ごはん食べる時間ある。パン食べよ。大きな口を開けてもぐもぐ食べる。ふと、さっきまで化粧に使ってたスタンドミラーに自分の姿が映っていて、なんだか恥ずかしくなった。あ、時間だ。
玄関で靴を履いた後、部屋の方を振り向いた。
スタンドミラーをビシッと指して、勇気の出る呪文を唱えた。
「あんた、かっこよかったよ。」
私、美優は高校2年生の終わりに交通事故にあい、1年以上意識が戻らなかった。
「兄、プレステあったよね。」
足の踏み場もない兄の部屋、足で道を作りながらテレビ付近のゲーム機を探す。あった。ゲームをセットして、兄が寝転んでるベットに背をもたれて座った。
「うぇー、なんだ、この絵ないなあ。」
昔のゲームなので、映像の色数が少なく透明度が全くない。私は主役の名前に「ミュー」といれた。
「なんだあ、乙女ゲームか。お前、ずっと入院してて男日照りだったもんな。そんなんで欲求満たそうなんて可哀想なやつめ。」
兄が茶化してきた。うるさいなー、と言いながら進めていく。
「出た。金髪王子。胡散臭くて気持ち悪いよな。」
「なんでも出来るぼんぼんやねんけど、こいつ、婚約者のこと、めちゃ好きやねん。」
そして、銀色の長い髪の女が腰に手をあてて怒ってる映像が出てきた。リリーだ。
「リリアンヌ『ミュー様、あなたマナーがまるでなってませんね』
うんうん。この女よく分かってんな。」
「こいつが恋敵やねん。」
「いけ好かない女やなあ。」
「でもこいつだけやねん。ミューに話しかける女。」
そう。身分社会の女社会。女で一番権力のある公爵令嬢のこの女が私にかまうから、周りのお嬢達にいじめられることがなかった。自分のテストの順位を落としてまでミューの面倒みてたもんね。
私はスマホをテレビに向けて写真を撮った。
「なにしてんねん。」
「んー。おまもり。」
写真にはテレビ特有の線がはいっていたが、まあいっか、とゲームを進めた。
タオル渡して、タオル渡して、聖書渡して、でもラファエルとうまくいかなくて、ミューは落第した。バッドエンドだ。ラファエルとリリーがどうなったかは、わからなかった。
そこが見たかったのにな。
でも卒業テスト前、毎日ラファエルがリリーの勉強をみて、お互い満点とって、リリーが泣いてたのを思い出した。あの雰囲気のままうまくいってたらいいのにな。
ビービー泣く一歳の息子を連れて公民館にきた。今日は絵本の読み聞かせがある。
「美優~。こっちこっち。」
同じ高校中退ママ達が私を呼ぶ。そう、私は一年留年して、やっと三年になれたのに、卒業寸前に妊娠が発覚して退学、結婚という、あるある人生を歩んでる。
部屋に入ると、隅っこに年輩のママと男の子がポツンと座ってた。
「あいつ、46だって。うちのばばあよりばあちゃんで子供産んでるんや。」
「子供、成人する前に年金もらうんやな。」
「年金なんてないやろー。払ってないでー。」
だははははと笑い、絵本の読み聞かせの人達に子供をまかせて喋くってた。なんとなく気になるから横目でチラチラ見てたが、ずっと一人で寂しそうだった。
「終わったね。マクド行かん?」
「月見バーガー食べたいー。美優は?」
「うーん、今日は帰るわ。ピンチやねん。給料でたら誘って。」
と友達と別れる。
でもどうしよう。あの人、私と全く違う人生を歩んで来たんだよな。話し合うん?でも同じくらいの月齢の子供おったら、子育ての話とか合うか。いや、あの人はあの人で先に子供産んだ自分と同級生から子育て方法聞けるか。
※子育て方法は日進月歩で変わっていくので、先輩ママの方法が決して正しいわけではない。一人目と二人目で保健センターが言ってること違うのもあるある。
でも、あの子供、ずっと一人で可哀想だよ。どうしよう。どうしよう。
私はスマホを握りしめて祈った。
リリー、あんたの勇気を私にちょうだい!
よし。
私は立ち上がって、その人の前に立った。
「こ、こんにちは!」
なんて書くと私がいい人みたいだけど、この後、「姉さん」には離婚訴訟の時は姉さんの友達の弁護士を紹介してもらい、姉さんの友達が興した会社で雇ってもらい(高校中退の子持ちを事務職で雇ってくれるなんて姉さんがいなきゃ有り得んよ)、高卒認定試験の勉強も姉さんや姉さんの友達にみてもらった。
お互いの子供たちは別々の道を歩んでるけど、姉さんと私はまだ続いてる。
ちゃぶ台で化粧して、テレビで時間を確認。ごはん食べる時間ある。パン食べよ。大きな口を開けてもぐもぐ食べる。ふと、さっきまで化粧に使ってたスタンドミラーに自分の姿が映っていて、なんだか恥ずかしくなった。あ、時間だ。
玄関で靴を履いた後、部屋の方を振り向いた。
スタンドミラーをビシッと指して、勇気の出る呪文を唱えた。
「あんた、かっこよかったよ。」
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