VS Heroes -Who is justice?-

淀野 愚

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1章 誕生

閑話 その後

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ガーディアンズ   日本支部

「報告は…以上です…」
「ご苦労だった。戻っていいぞ。しっかり静養するように。」
「失礼します…」

俺は報告を終え、支部長室から退室した。

凍結された日から、もう数日経過している。
始めに回復したのが俺だった。
まだ完治はしていない。

あの日、奇跡的に氷が溶け俺たちは駆けつけた別小隊に救助された。全員が凍傷により、本当にギリギリのところで壊死を回避できたとのこと。全員が奇跡的に快方へ向かっている。

俺はまだ若い俺たちを1小隊として固めず、他の小隊に1人ずつ選出するべきだと思うという旨を伝えたが、支部長が俺の意見を聞いてくれるかはわからない。
今回の一件で思い知ったのは、自分の圧倒的な実力不足と仲間の無能さ。

まだ若いから、経験がないからという言い訳は通用しない。

俺は決めたんだ。
もうあんな目にあわないために強くなるって。
支配する強者から何もできない弱者を守るって。

「よう、どうした。そんな怖い顔して。」
「九条さん…」
「なんだよ、堅苦しいな!銀でいいって言ったろう?」

馴れ馴れしく肩を組んできた九条さん。初めは苦手だったが、今はもう慣れた。このテンションの高さにはたまについていけないが。悪い人じゃない。さっきから缶ジュースが当たっているから、顔が冷たい。

この人は、最近この日本支部の事務員として就職したらしい。そして、まだ若いにも関わらず、浅すぎるキャリアにも関わらずわずか一ヶ月で事務長になった異端児。
だが、それを皆が不思議に思わない。有能な実力を示しただけでなく、たった一ヶ月足らずでここにいる人達の高い信頼を得た。今ではこの支部で彼を知らない者はいない。

「なにかあったか?」
「…あの、」

話してみることにした。俺もこの人なら信用できた。
人間みたいだった怪人のこと。
その怪人の人が突然変わり、急に変異したこと。
自分勝手だった仲間のこと。

「…なるほど、その黒い氷に閉じ込められた君たちは何故かはわからないが、氷が溶けたところを発見され、今に至る…ってわけか。」
「はい…」
「なるほど、お前達が駆けつけた時がパニックの後だったのなら、一般人がガーディアンズやその怪人を目撃した奴は多少いるだろうな。目撃者がどうであれ、これから監視カメラの情報を消したり、後処理だったり…仕事が増えるなぁ…」
「九条さん」
「んあ?どした。」
「俺さっき仲間のことああいう風に言ったけど、なんかもうわかんなくなっちゃって…もしかしたら俺が悪かったかもしれない…もっと早くに逃げていれば、みんなこんな目に遭わずに済んだかもしれない…!けど、逃げることができても、怪人を倒せなかったことに後悔するんだろうなっても思うんです…!結局は、最後に後悔した選択しか…なかったんじゃないかって…。なにが…正しい選択なんでしょう…?なにが…正解だったんでしょう…!?」

知り合いを前に、何故か緊張している…気まずい空気になっていることすら気づかないほどに。
すると、九条さんは宙を見上げ、頭をかくとこちらを向いた。真剣な表情だった。

「…人間ってなあ、失敗する生き物…らしいぜ。お前だって人間だ。失敗することなんていっぱいあるだろう?けど、重要なのはその後だ。今回こういうことがあって、お前は偶然にも生き残ることができた。だから、今度同じミスをしないようにどうするか、後悔しないために今自分になにができるか…考えて、行動するしかないんじゃないか?俺がいくらなにやったって、結局、実際にそれを体験したのはお前だし、お前しかわからん。意味ないに決まってる。お前が後悔したくないんなら、常に後悔しない生き方をするしかないんじゃないか?えーっと…そんな訳でお前の問題はお前にしか解決できない!…それに、あいつらの問題はあいつらにしか解決できない。お前にできるのは、信じることだけ…じゃないか?」
「九条さん…」
「信じることだけじゃ、意味ない、不安だってんなら、そのゴールにたどり着くための、橋に…お前がなってやれ!」

そうやって踵を返して、九条さんは俺に缶ジュースを投げ渡した。

「うおっ、とと…いって…」

そこそこ強かった。

「ナイスキャッチ。…悪いな。俺はこうやって当たり前のことしか言えない。あまりおだてたり、励ますなんて柄じゃないし、得意でもないからな。」
「九条さん、ありがとうございます。」
「…ああ。それやるよ!俺からの奢りだ。じゃあな!。」

それを最後に九条さんはエレベーターに乗って行った。

せっかくなので、もらったジュースを飲もうと、缶のプルタブに手をかけた。
…そして、気づいた。
これがコーラだったことに。

「…俺、炭酸飲めないんだけど。」

♢♢♢

「色が変異した、黒い氷を使う奴…か…。へぇ。」

♢♢♢

某都--
警察庁

「何故です!?何故…!?警察官1人が突然ビルの10階に吹っ飛んだ原因不明の大事故ですよ!?なんで調査しないんですか!?」
「…はぁ…あのな、さっきから言ってるだろう。事情があるんだ…。」
「上からの圧力ってやつですか?冗談じゃない!弟が瀕死の重傷で生死をさまよってるっていうのに、犯人探しもせず、なにもなかったことにするなんて納得できません!!」
「今回はダメだ。」
「…もういいです、俺が直接掛け合ってきます!」
「そんなことしても無駄だ!」
「やってみてもないのに、見え透いたこと言わないでください!」
「お前は!国に喧嘩を売るつもりかぁあっ!!」
「え…」
「ハァ…ハァ…!」

しん、と沈黙が流れた。
俺は息を飲んで俺は尋ねた。
「く…国…?」
「…」
「む、村主さん…それってどういう…国って…!一体どういうことですか!?」
「…いいか、今聞いたことは全部忘れろっ!警察官を続けたいならな!これで話は終わりだぁ!」

血相を変えた怒鳴り声に思わず体がビクッと震えた。
そして、村主さんは勢いよく立ち上がり、舌打ちをして足早にこの場を去っていった。

「国…か…国って…なんだよ…」

トボトボとゆっくりと部屋を出た。
意気消沈したまま、手すりを使って階段を登り、屋上に着いた。

「俺は…」

心が不安定なのに気づかず、俺は決意した。

「俺は絶対に犯人を見つけ出す…俺が捕まえることができれば、周りの見る目も、国が警察を見る目も…変わるはずだ…!」

俺は決めた。
そんな奴がいるのなら、黙って見過ごすわけにはいかない。
弟の犠牲を無駄にしてはいけない…!
なんとしても、

「捕まえてやる…!」

ギリリと力強く握った拳は、激しく震えていた。
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