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BUDDY-0-SURVIVOR
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夜の警察署は静かだった。
外の雨音と、時折鳴る古びた換気扇の音が、かすかに耳に残る。
誰もいない執務室の蛍光灯が、一つ、また一つと瞬いている。
使い古されたデスクの隙間には、タバコの匂いがこびりついている。
消臭スプレーでも誤魔化しきれない、そんな臭気。
志摩の鼻腔にそれが入り込んで、眠気をごまかす。
隣の席に置きっぱなしのマグカップからは、酸化したコーヒーの残り香が漂っていた。
志摩はゆっくり椅子を引き、引き出しの底にしまい込んでいた分厚いファイルを取り出した。
背表紙にマジックで書かれた名前。
薄れて読みにくくなった、それでも間違いようのない文字列。
「……アルノー。」
七年前の資料だった。
犯人像が掴めぬまま、放置されてきた連続殺人事件。
その最初の犠牲者。
志摩の頭に、あの日の記憶がかすかに蘇る。
指先でめくる紙の質感は、湿り気を帯びていて鈍い。
報告書の一枚に、志摩の目が止まる。
港のバーで働いていたバーテンダーの証言。
犯行の直前、現場付近で目撃されたという男の特徴。
「……紺のウインドブレーカー。顔の左側に……傷。」
誰なのかは分からない。
名前もなければ、追跡記録もない。
匿名化法案の導入直後、警察の力は急速に鈍った。
身元が伏せられ、DNAも、種別も追えない。
その男の情報は、あまりに薄い。
まるで、霧のようだった。
志摩はゆっくりと椅子から立ち上がる。
背後に人の気配はない。
アルノーの資料を封筒にまとめ、無造作に鞄に放り込む。
その動きに、どこか焦りと、ためらいが混ざっていた。
未解決。
それはこの街の、空気の底に今も沈んでいる。
「……一から洗い直しだ。」
低く、誰にも聞かれない声で呟く。
志摩は上着を羽織り、重い足取りで夜の署を出ていった。
外の雨音と、時折鳴る古びた換気扇の音が、かすかに耳に残る。
誰もいない執務室の蛍光灯が、一つ、また一つと瞬いている。
使い古されたデスクの隙間には、タバコの匂いがこびりついている。
消臭スプレーでも誤魔化しきれない、そんな臭気。
志摩の鼻腔にそれが入り込んで、眠気をごまかす。
隣の席に置きっぱなしのマグカップからは、酸化したコーヒーの残り香が漂っていた。
志摩はゆっくり椅子を引き、引き出しの底にしまい込んでいた分厚いファイルを取り出した。
背表紙にマジックで書かれた名前。
薄れて読みにくくなった、それでも間違いようのない文字列。
「……アルノー。」
七年前の資料だった。
犯人像が掴めぬまま、放置されてきた連続殺人事件。
その最初の犠牲者。
志摩の頭に、あの日の記憶がかすかに蘇る。
指先でめくる紙の質感は、湿り気を帯びていて鈍い。
報告書の一枚に、志摩の目が止まる。
港のバーで働いていたバーテンダーの証言。
犯行の直前、現場付近で目撃されたという男の特徴。
「……紺のウインドブレーカー。顔の左側に……傷。」
誰なのかは分からない。
名前もなければ、追跡記録もない。
匿名化法案の導入直後、警察の力は急速に鈍った。
身元が伏せられ、DNAも、種別も追えない。
その男の情報は、あまりに薄い。
まるで、霧のようだった。
志摩はゆっくりと椅子から立ち上がる。
背後に人の気配はない。
アルノーの資料を封筒にまとめ、無造作に鞄に放り込む。
その動きに、どこか焦りと、ためらいが混ざっていた。
未解決。
それはこの街の、空気の底に今も沈んでいる。
「……一から洗い直しだ。」
低く、誰にも聞かれない声で呟く。
志摩は上着を羽織り、重い足取りで夜の署を出ていった。
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