27 / 65
エリートオメガ受佐美の出張
5※挿絵付
しおりを挟む
暖房が効いた部屋の中、受佐美は無駄のない動きでノートパソコンを操作していた。
小さなタイピング音だけが、静寂の空間に規則的に響く。
客室の窓の外では、雪がしんしんと降り積もり、あたり一面が白銀の世界になっている。
攻田はというと、すでに浴衣に着替え、畳の上に大の字で寝転びながらパンフレットを眺めていた。
指でページをめくるたびに、写真に映る雪見露天風呂の美しい景色が目を引く。
「……先輩。」
声をかけると、受佐美はキーボードを叩く手を止めずに「ん?」とだけ返事をする。
「露天風呂、行きません?」
攻田は上体を起こし、パンフレットをひらひらと見せつける。
「雪の中の露天風呂とか……俺、初めてで。テンション上がっちゃうなぁ♡」
いつもの軽口で誘うが、受佐美の反応は冷静そのものだった。
「風呂なら部屋にもあるだろ。経費だからって、馬鹿高い部屋取ってるしな。」
画面から目を離さず、ぶっきらぼうにそう返す。
「……うっ。」
攻田は肩を落とすが、すぐにめげずに続けた。
「でも、露天風呂の景色がマジで最高みたいですよ?ほら、この写真……見てくださいよ。旅館の人も、お湯の温度はあっちのほうが温かいって言ってましたし。」
視線を逸らすように小さく息をついた受佐美は、しばし黙りこみ、ついには手を止めることもなく淡々と答える。
「お前は先に入ってこい。俺は仕事を片付けてから入る。」
「……そうですか。」
攻田はあからさまに残念そうな顔をして立ち上がる。
少し間を置き、気を取り直すように明るい声で言った。
「んじゃ……ちょっと館内ぶらついて、後で迎えに来ますんで。合流、しましょう?」
「……ああ。」
短い返事の後、再びキーボードがカタカタと鳴り始める。
攻田は少しだけその背中を見つめてから、ドアを開けて部屋を後にした。
館内の娯楽スペースは、古びているが味のある空間だった。
卓球台が中央に鎮座し、その脇には懐かしいアーケードゲーム機が数台。
壁際には瓶ジュースの自販機とマッサージチェアまである。
窓の外にはうっすらと積もる雪が見え、まるで昭和にタイムスリップしたかのような雰囲気だ。
攻田は最初、卓球ラケットを手にして軽く素振りをしてみたが、対戦相手がいないとどうにも張り合いがない。
肩をすくめてラケットを戻すと、自販機で缶コーヒーを買い、奥のアーケード機へと向かった。
ゲームセンターの片隅に追いやられていそうな古いゲーム。
とりあえずコインを入れ、気楽にプレイを始める。
単調な効果音と光る画面。
無心でボタンを連打しているうち、気がつけば時間があっという間に過ぎていた。
「……あ。」
攻田はスマホを取り出して時間を確認し、目を見開く。
「やべっ、結構時間経っちゃったな……。」
心なしか顔が赤らんでいるのは、暖房のせいか、それとも何か別の理由か。攻田は急いでゲームを終了させ、そそくさと部屋を後にした。
小さなタイピング音だけが、静寂の空間に規則的に響く。
客室の窓の外では、雪がしんしんと降り積もり、あたり一面が白銀の世界になっている。
攻田はというと、すでに浴衣に着替え、畳の上に大の字で寝転びながらパンフレットを眺めていた。
指でページをめくるたびに、写真に映る雪見露天風呂の美しい景色が目を引く。
「……先輩。」
声をかけると、受佐美はキーボードを叩く手を止めずに「ん?」とだけ返事をする。
「露天風呂、行きません?」
攻田は上体を起こし、パンフレットをひらひらと見せつける。
「雪の中の露天風呂とか……俺、初めてで。テンション上がっちゃうなぁ♡」
いつもの軽口で誘うが、受佐美の反応は冷静そのものだった。
「風呂なら部屋にもあるだろ。経費だからって、馬鹿高い部屋取ってるしな。」
画面から目を離さず、ぶっきらぼうにそう返す。
「……うっ。」
攻田は肩を落とすが、すぐにめげずに続けた。
「でも、露天風呂の景色がマジで最高みたいですよ?ほら、この写真……見てくださいよ。旅館の人も、お湯の温度はあっちのほうが温かいって言ってましたし。」
視線を逸らすように小さく息をついた受佐美は、しばし黙りこみ、ついには手を止めることもなく淡々と答える。
「お前は先に入ってこい。俺は仕事を片付けてから入る。」
「……そうですか。」
攻田はあからさまに残念そうな顔をして立ち上がる。
少し間を置き、気を取り直すように明るい声で言った。
「んじゃ……ちょっと館内ぶらついて、後で迎えに来ますんで。合流、しましょう?」
「……ああ。」
短い返事の後、再びキーボードがカタカタと鳴り始める。
攻田は少しだけその背中を見つめてから、ドアを開けて部屋を後にした。
館内の娯楽スペースは、古びているが味のある空間だった。
卓球台が中央に鎮座し、その脇には懐かしいアーケードゲーム機が数台。
壁際には瓶ジュースの自販機とマッサージチェアまである。
窓の外にはうっすらと積もる雪が見え、まるで昭和にタイムスリップしたかのような雰囲気だ。
攻田は最初、卓球ラケットを手にして軽く素振りをしてみたが、対戦相手がいないとどうにも張り合いがない。
肩をすくめてラケットを戻すと、自販機で缶コーヒーを買い、奥のアーケード機へと向かった。
ゲームセンターの片隅に追いやられていそうな古いゲーム。
とりあえずコインを入れ、気楽にプレイを始める。
単調な効果音と光る画面。
無心でボタンを連打しているうち、気がつけば時間があっという間に過ぎていた。
「……あ。」
攻田はスマホを取り出して時間を確認し、目を見開く。
「やべっ、結構時間経っちゃったな……。」
心なしか顔が赤らんでいるのは、暖房のせいか、それとも何か別の理由か。攻田は急いでゲームを終了させ、そそくさと部屋を後にした。
33
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
雨の放課後、君が泣いた理由
雪兎
BL
■あらすじ
放課後の教室。窓の外は冷たい雨。
偶然残っていた悠真は、教卓の端で俯く陸を見つける。
「…泣いてるのか?」
ふいに顔を上げた陸の目は赤く、唇が震えていた。
原因を聞き出そうとする悠真に、陸は小さく呟く。
「だって…悠真が、俺のこと避けるから…」
ほんの些細なすれ違いが、互いを苦しめていたことを知る二人。
雨音が消える頃、握られた手はもう離さないと決めていた。
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
