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エリートオメガ受佐美の受難
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しおりを挟む煌々とした明かりが落ちる無機質なトイレ。
洗面台の前、受佐美はまだ乱れたままのシャツの裾を直し、額の汗を拭うようにして深く息を整えていた。
その隣で攻田は鏡越しにじっと受佐美を見つめながら、ネクタイを締め直す。
「……國立部長とは、お知り合いなんですか?」
その問いに、受佐美は視線を上げずに短く答える。
「大学時代の同期だ。」
「なるほど。それであの顔……。」
攻田が少し意地悪に笑うと、受佐美はピシャリと視線を寄越す。
「は?」
「先に昇進されるのって、やっぱ悔しいんじゃないですか?」
軽口を叩く攻田に、受佐美は静かにため息を吐く。
「……いや。ただ嫌なヤツが上司になったと思っただけだ。」
素っ気なく言い放ちながらも、声の奥に少しだけ苦味がにじむ。
その微妙な表情に攻田は思わず腰へ手を回し、そっと寄り添った。
「……先輩、今日、家に……。」
耳元で囁くその声が落ちる寸前、
ガチャッ。
突然ドアが開き、場の空気がピリリと張り詰めた。
「受佐美。」
冷たく鋭い声が響き、二人がはっとして振り返る。
國立が、冷たい眼差しを受佐美に向けて立っていた。
「っ……!」
受佐美は条件反射のように攻田の手を払い、身を引く。
國立はゆっくりと近づき、受佐美を真っ直ぐに見つめた。
「探したぞ。」
「……何か?」
警戒するように問い返す受佐美に、國立は一瞬だけ口角をわずかに持ち上げる。
「今夜、会食に付き合え。」
「は?何で私が?」
國立は少し顔を近づけるようにして冷ややかに続ける。
「顧客を紹介する。……お前のことはよく知っているし、功績も聞いている。」
「……。」
受佐美が沈黙して睨むと、國立はさらに淡々と付け加えた。
「……何か問題でも?」
鋭い沈黙がしばらく続いたが、やがて受佐美は唇を引き結び、低く答える。
「……いえ。」
國立は満足げに頷き、トイレから背を向けて出ていく。
その背中を無言で見送りながら、受佐美の指先はわずかに震えていた。
「……マジで感じ悪いな、あの人。」
攻田が小さく吐き捨てるが、受佐美は無言で國立が消えた扉を見つめ続けていた。
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