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溺愛エルフの禁忌魔法
小さな影
しおりを挟む新緑の大地——帝都より東南に広がる、穏やかな土地。ここは多くの種族が共存する場所であり、はじまりの街はその中心として人々が行き交う。
街の広場には笑い声が響き、露店では果物や手作りの雑貨が並んでいる。子供たちは石畳を駆け、楽しそうに遊んでいた。
しかし、その輪の外でエイダンは足を止め、じっと眺めるだけだった。
かつて、師匠とこの家で暮らし始めた頃。
新参者のエイダンは、街の子供たちとすぐに打ち解け仲良くなった。
「エイダン、一緒にかくれんぼしよう!」
「ねえ、今日も薬屋の店番手伝ってるの?」
毎日、賑やかで、楽しくて、笑顔が絶えなかった。
しかし時が経つにつれ、かつての友人たちは少しずつ変わっていった。
「昨日、俺さ、街の外で旅の商人に会ったんだ!」
「今度、剣術の修行に行くんだ。」
思春期を迎え、彼らは新しい世界へ歩みを進めていた。だがエイダンは——
そのままだった。
背は伸びず、声も変わらない。子供の頃のまま、何も変わらない自分だけが取り残されているようだった。
最近では、昔の友人たちはまるで弟を見守るような目でエイダンを見ていた。優しく接してくれるが、遊びの誘いは少なくなり、話す機会も減ってしまった。
「何で僕だけ……。」
必死で涙をこらえ、夕暮れの道をとぼとぼと歩いた。
「エイダン、何かあったのかい?」
帰宅すると、オズリックが静かに声をかけた。その七色の瞳が、エイダンの様子を見て心配そうに揺れていた。
「……別に。」
短く答えるも、師匠の優しい視線に促されるように、ぽつりぽつりと言葉が漏れ始めた。
「僕、半分獣人族だからかな……?それとも、小人族の血が入ってるから?」
頬を膨らませながら、エイダンはふてくされたように言った。
「みんな、どんどん大きくなって、おとなになっていくのに、僕だけ変わらないんだ。昔みたいに遊べなくなったし、みんなが話してる時、僕だけ蚊帳の外みたいで……僕だけ、取り残されてるみたいで……。」
その言葉に、オズリックは静かに耳を傾けた。そして、エイダンの頭に優しく手を置き、柔らかく撫でた。
「君は君のままでいいんだよ、エイダン。」
その言葉は、確かに優しさを帯びていた。しかし、その瞳の奥にはどこか後悔の色が滲んでいた——。
(このことは、まだ話すべきじゃないのかもしれない。)
かつて触手の森で瀕死だったエイダンを蘇生するため、禁忌魔法を使ったこと。自分の寿命を分け与えたことで、彼の成長が遅くなったこと——それを、今もエイダンは知らない。
しかし、今の彼の悩みは確かに本物だった。
オズリックはただ、弟子の不安を包み込むように撫でながら、そっと夕陽に目を向けた。
バルコニーへ出ると、空は橙色に染まり、街並みの輪郭が淡く滲んでいた。
「師匠……僕、大きくなれるかな……。」
エイダンはぽつりと呟く。
「君は君のまま、ゆっくりと成長していくよ。焦ることはない。」
オズリックは微笑みながら答えた。
エイダンは小さく息をつき、そっと師匠の隣に身を寄せる。
その穏やかな時間の中、二人は夕焼けに包まれていた。
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