溺愛エルフの禁忌魔法

TERRA

文字の大きさ
8 / 8
溺愛エルフの禁忌魔法

小さな影

しおりを挟む

新緑の大地——帝都より東南に広がる、穏やかな土地。ここは多くの種族が共存する場所であり、はじまりの街はその中心として人々が行き交う。  

街の広場には笑い声が響き、露店では果物や手作りの雑貨が並んでいる。子供たちは石畳を駆け、楽しそうに遊んでいた。  

しかし、その輪の外でエイダンは足を止め、じっと眺めるだけだった。  


かつて、師匠とこの家で暮らし始めた頃。
新参者のエイダンは、街の子供たちとすぐに打ち解け仲良くなった。  

「エイダン、一緒にかくれんぼしよう!」  
「ねえ、今日も薬屋の店番手伝ってるの?」  

毎日、賑やかで、楽しくて、笑顔が絶えなかった。  

しかし時が経つにつれ、かつての友人たちは少しずつ変わっていった。  

「昨日、俺さ、街の外で旅の商人に会ったんだ!」  
「今度、剣術の修行に行くんだ。」  

思春期を迎え、彼らは新しい世界へ歩みを進めていた。だがエイダンは——  

そのままだった。  

背は伸びず、声も変わらない。子供の頃のまま、何も変わらない自分だけが取り残されているようだった。  

最近では、昔の友人たちはまるで弟を見守るような目でエイダンを見ていた。優しく接してくれるが、遊びの誘いは少なくなり、話す機会も減ってしまった。  

「何で僕だけ……。」  

必死で涙をこらえ、夕暮れの道をとぼとぼと歩いた。  


「エイダン、何かあったのかい?」  

帰宅すると、オズリックが静かに声をかけた。その七色の瞳が、エイダンの様子を見て心配そうに揺れていた。  

「……別に。」  
短く答えるも、師匠の優しい視線に促されるように、ぽつりぽつりと言葉が漏れ始めた。  

「僕、半分獣人族だからかな……?それとも、小人族の血が入ってるから?」  

頬を膨らませながら、エイダンはふてくされたように言った。  

「みんな、どんどん大きくなって、おとなになっていくのに、僕だけ変わらないんだ。昔みたいに遊べなくなったし、みんなが話してる時、僕だけ蚊帳の外みたいで……僕だけ、取り残されてるみたいで……。」  

その言葉に、オズリックは静かに耳を傾けた。そして、エイダンの頭に優しく手を置き、柔らかく撫でた。  

「君は君のままでいいんだよ、エイダン。」  

その言葉は、確かに優しさを帯びていた。しかし、その瞳の奥にはどこか後悔の色が滲んでいた——。

(このことは、まだ話すべきじゃないのかもしれない。)  

かつて触手の森で瀕死だったエイダンを蘇生するため、禁忌魔法を使ったこと。自分の寿命を分け与えたことで、彼の成長が遅くなったこと——それを、今もエイダンは知らない。  

しかし、今の彼の悩みは確かに本物だった。  

オズリックはただ、弟子の不安を包み込むように撫でながら、そっと夕陽に目を向けた。  


バルコニーへ出ると、空は橙色に染まり、街並みの輪郭が淡く滲んでいた。  

「師匠……僕、大きくなれるかな……。」  
エイダンはぽつりと呟く。  

「君は君のまま、ゆっくりと成長していくよ。焦ることはない。」  
オズリックは微笑みながら答えた。  

エイダンは小さく息をつき、そっと師匠の隣に身を寄せる。  

その穏やかな時間の中、二人は夕焼けに包まれていた。  
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

処理中です...