初恋〜夏の残像〜

TERRA

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夏の残像

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 空はゆっくりとオレンジから深い青へと移ろいでいた。  
 港町の喧騒は遠のき、代わりに森の奥から微かな虫の音が響く。  

 「陸……どこにいるの?」  
 理央の声が風に流される。  

 森の入り口に立つ三人。理央、颯太、海。  
 木々の間から覗く夕闇は濃く、不安をかき立てるように静まり返っている。  

 「あと探してないのはここくらいだな……。」  
 海が険しい表情で呟く。  
 足元の枯れ葉がかさかさと音を立て、風が枝葉を揺らすたび、不気味なざわめきが広がる。  

 「手分けしよう。」  
 颯太が短く言う。  
 森の奥へと散らばり、それぞれが陸の姿を探し始めた。  

 海は単独で森の奥へと進む。  
 暗さが増し、木々の間に入り込むと、一層深い静寂が広がった。  

 遠くで鳥の羽ばたく音がし、森全体が低くうめくように揺れている。  

 ふと、朽ちた納屋が視界に入った。  
 その壁はところどころ崩れ、屋根はひび割れ、夜の闇に飲み込まれそうになっている。  

 中へ足を踏み入れると……。
 納屋の隅で、膝を抱えて震えている陸の姿があった。  

 「陸……!」  
 海は駆け寄り、その肩に優しく触れる。  
 陸はびくりと体をこわばらせるが、海の声を聞くと、微かに顔を上げた。  

 「もう、大丈夫だ。」  
 海は静かに陸を抱きしめ、その細い背をそっと撫でる。  

 陸の体温が僅かに伝わり、彼の震えがゆっくりと収まっていく。  
 しばらくの沈黙のあと、陸は小さく息を吸い、海の腕を抱き返した。  

 その瞬間。  
 納屋の入り口に影が立っていた。  

 音もなく。  
 ただ、そこにいる。  

 闇の向こうで、濁った目が陸を捉え、ゆっくりと笑みを浮かべる。  

 「見ィつけたァ……。」  
 その声が粘つくように空気を揺らした。  

 海の背筋が冷たいものに締め付けられ、陸は凍りついたように息を止めた。  

 風が吹き抜け、古びた木材がギギギ……と軋む音を立てる。  
 その音が、まるで何かの足音のように広がった。  

 海は陸の体を僅かに後ろへ押しやる。  
 「陸、下がれ。」  

 男の足音がゆっくりと納屋の中へと踏み込んでくる。  
 海はじっとその動きを見据えながら、静かに拳を握る。  

 逃げ場のない閉ざされた闇が、二人を包もうとしていた。  

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