OUTSIDER

日常編:ソーマ✕イスズ/ビッチなお兄さんと年下男

運命の収束点

数年前。
雨が窓を叩く夜。
五十鈴はリビングのソファに深く座り、ぼんやりとテレビのニュースを眺めていた。

「連続誘拐事件の容疑者が焼死体で発見されました。また、重要参考人とみられていた警察関係者の遺体も相次いで――。」

画面に映し出された名前。
鷲宮透。
彼は、五十鈴の最愛の男だった。

胸の奥がきゅっと締め付けられる。
息をするだけで、痛む。
「……鷲宮さん。」

その名前を呟いた瞬間、インターホンが鳴った。

ピーンポーン。

五十鈴は重たい体を引きずるように玄関へ向かい、モニターを確認する。

画面の向こうには、中高生くらいの少年が立っていた。
「お届けものでーす。」

少年は手を掲げ、何かを見せる。
「見える？これ。」

画面に映ったのは、鷲宮の遺品。
メテオライトの石が埋め込まれたネックレス。

五十鈴は一瞬息を呑み、慌ててドアを開けた。
「……これをどうして？」

リビングへ案内すると少年は無表情のまま、無言でネックレスを差し出した。
「鷲宮って奴の使いで来たんだ。」

その名前を聞いた瞬間、五十鈴の瞳が揺れる。
「……鷲宮さん……。」

少年はそれ以上何も言わず、ネックレスをそっと手渡した。

五十鈴は、それを握りしめた瞬間、崩れ落ちるようにソファに座り込んだ。
「鷲宮さん……どうして……。」

言葉が震え、涙がとめどなく溢れ出す。
どんなに声を押し殺しても、嗚咽がこぼれてしまう。

少年は、その姿をただ黙って見つめていた。

胸の奥がじんわりと痛む。
理由はわからない。
ただ、手を伸ばさずにはいられなかった。

少年……蒼馬はそっと五十鈴の肩に手を置き、優しく抱き締めた。
「大丈夫だよ。悲しい時は好きなだけ泣けばいい。」

その言葉に、五十鈴は少しずつ呼吸を落ち着かせ、やがて泣き疲れて眠りについた。

子供だと思って油断したのか。
それとも、鷲宮の死で警戒心を働かせる心の余白を奪われていたのか。

五十鈴が眠りにつくと、蒼馬は静かに動き始めた。

リビングの隅に盗聴器を仕掛け、キッチン、寝室にも同じように設置していく。
耳につけたヘッドセット型通信機に指を添え、低い声で囁く。
「言われたとおりにしたけど、ちゃんと聞こえてんの？」

通信の向こうから、冷静な声が返ってくる。
「あぁ、上出来だ。」

蒼馬は少し鼻を鳴らし、皮肉げに笑う。
「それにしても、アンタって最低だね。鷲宮さん……？」

通信を切り、最後の盗聴器を設置し終える。

振り返り、眠る五十鈴の横顔を見つめる。
弱く脈打つような、痛みと罪悪感。

それを胸の奥に押し込み、蒼馬は静かに部屋を後にした。

それが、蒼馬の記憶の中の、五十鈴との出会いだった。

傷心の五十鈴と任務を遂行する蒼馬。
その背後には、死んだはずの男、鷲宮透――梓梓豪の影が静かに揺れていた。

雨音が響く夜。
二人の運命は、不穏な形で交差し始めていた。