黄泉ノ彼岸葬儀店

EP.6最後の刃Ultima Lamina

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控室の空気は、静寂に包まれていた。  

無機質なテーブルの上に置かれた木箱。  

その表面には緻密な彫刻が刻まれ、ただの装飾とは思えないほど精巧な細工が施されていた。  

まるで、持ち主の意思を継ぐかのように、沈黙を守っている。  

黄泉は箱を指で軽く弾いた。  

「さて、この箱はただの箱じゃないわけだ。」  

棺は腕を組みながら、じっと箱を見つめる。  
「見た感じ、職人の作った精巧なからくり箱って感じだよね。」  

黄泉は箱の表面に彫られた模様を眺めながら、ふっと息を吐いた。  
「この紋様……どこかで見たことあるな。」  

棺も箱の側面を指でなぞる。  
「……竹？月？どこか物語のような意匠を感じるけど……。」  

次の瞬間、黄泉は軽く指を鳴らした。  
「なーんだ、これって竹取物語じゃん」  

棺は驚いた顔になる。  
「竹取物語？」  

黄泉はスマホを取り出し、竹取物語の資料を検索しながら続ける。  

「ほら、かぐや姫の話だよ。貴族たちが求婚して、無茶な贈り物を持ってきたろ？」  

棺は目を細めながら箱の表面を見つめた。  

「……あっ、この箱の紋様って、花婿候補が持ってきた品々なのか」  

黄泉は軽く笑った。  
「あの竹林…。これも爺さんの趣味ってことか。」  

「じゃあ、彼らが持ち込んだ品の順に絵柄を合わせれば」  

彼は箱の側面をゆっくりと回し、紋様を順番に並べていく。  
次の瞬間。  

カチッ

箱が僅かに開いた。  

棺は目を見開く。  
「……開いた！」  

しかし。  

箱の内部には さらに一つの仕掛けが待っていた。  

黄泉は眉をひそめる。  
「……ったく、二重の謎かよ。」  

そこには、英数字の並ぶダイヤル式の鍵が埋め込まれていた。  

黄泉はスマホをいじりながら、竹取物語の情報を再び確認する。  
「かぐや姫の月の使者？いや、違うな……。」  

「五人の貴族の名前……？それも違う。」  

彼は手当たり次第にそれらを入力するが。  

反応なし。

黄泉は疲れたように息を吐き、頭を抱えた。  
「ちっ……まだ鍵が足りねぇのか。」  

棺は木箱をじっと見つめながら、静かに口を開いた。  
「黄泉、もう一度精神世界に行ってヒントを手に入れよう。」  

黄泉は項垂れていたが、その言葉にふっと顔を上げる。  

棺の提案が、次の鍵を開く最後の手がかりになるのだった。