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EP1
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朝。
閉じられた障子の隙間から、やわらかな陽が細く射し込んでいた。
畳の上を金色の光がそっと滑り、布団にくるまるイクの頬を撫でる。
「……ん……。」
イクが小さく身じろぎ、まどろみの中で目をこすった。
頬にはまだ微かな赤みが残り、伏せた睫毛に涙の痕がかすかに光っている。
「……起きたか。」
低く、けれど優しい声が、部屋の隅から響いた。
そこには既に起きていた極道の姿があった。
数珠を指に絡め静かに目を閉じ、穏やかな呼吸を繰り返している。
朝の光が肩に淡く触れ、背中に長い影を落としていた。
「極道さん……もう、朝?」
「ああ。昨夜はよく眠れたか?」
イクはゆっくりと身体を起こし、まだぼんやりとした微笑みを浮かべた。
指先がそっと頬をなぞり、布団の端を探るように布の感触をたどる。
その仕草には昨夜の熱がかすかに宿っていた。
極道は立ち上がり、側へ歩み寄る。
乱れた髪をくしゃりと撫で、片眉を上げて微かに笑った。
「無茶しやがって。まったく、お前ってやつは。」
「ふふ……。」
イクが小さく笑い、微かな汗が頬を伝った。
極道の指がその頬に触れ、熱を確かめるように優しく撫でる。
「今日はもう帰る?」
イクが小さな声で問いかける。
「あぁ、そうだな。」
極道はふと障子の向こうに目をやり、肩をすくめた。
「休暇のつもりが、結局お前はあんまり休めなかった気がするけどな。」
その言葉にイクは目を瞬かせ、小さく微笑んだ。
「僕は平気……だよ。」
その声がほんの少し掠れて、余韻の甘さを含んでいた。
極道は布団の縁に腰を下ろし、そっとイクの指に自分の指を絡めた。
「今度はちゃんと、お前が休めるように来ようぜ。」
「ほんとに?約束だよ?」
「ああ。約束だ。」
二人の手が結ばれた。
指と指、掌と掌。
その温もりが、昨夜のすべてをそっと包み込む。
障子の向こうで、遠く鳥のさえずりが微かに響いた。
澄んだ朝の空気が、ふたりの間に流れる余韻を優しく撫でていく。
胸の奥にまだ残る熱と、交わした約束の重み。
それは穏やかに、けれど確かに、ふたりをこれからの日々へと繋いでいく。
閉じられた障子の隙間から、やわらかな陽が細く射し込んでいた。
畳の上を金色の光がそっと滑り、布団にくるまるイクの頬を撫でる。
「……ん……。」
イクが小さく身じろぎ、まどろみの中で目をこすった。
頬にはまだ微かな赤みが残り、伏せた睫毛に涙の痕がかすかに光っている。
「……起きたか。」
低く、けれど優しい声が、部屋の隅から響いた。
そこには既に起きていた極道の姿があった。
数珠を指に絡め静かに目を閉じ、穏やかな呼吸を繰り返している。
朝の光が肩に淡く触れ、背中に長い影を落としていた。
「極道さん……もう、朝?」
「ああ。昨夜はよく眠れたか?」
イクはゆっくりと身体を起こし、まだぼんやりとした微笑みを浮かべた。
指先がそっと頬をなぞり、布団の端を探るように布の感触をたどる。
その仕草には昨夜の熱がかすかに宿っていた。
極道は立ち上がり、側へ歩み寄る。
乱れた髪をくしゃりと撫で、片眉を上げて微かに笑った。
「無茶しやがって。まったく、お前ってやつは。」
「ふふ……。」
イクが小さく笑い、微かな汗が頬を伝った。
極道の指がその頬に触れ、熱を確かめるように優しく撫でる。
「今日はもう帰る?」
イクが小さな声で問いかける。
「あぁ、そうだな。」
極道はふと障子の向こうに目をやり、肩をすくめた。
「休暇のつもりが、結局お前はあんまり休めなかった気がするけどな。」
その言葉にイクは目を瞬かせ、小さく微笑んだ。
「僕は平気……だよ。」
その声がほんの少し掠れて、余韻の甘さを含んでいた。
極道は布団の縁に腰を下ろし、そっとイクの指に自分の指を絡めた。
「今度はちゃんと、お前が休めるように来ようぜ。」
「ほんとに?約束だよ?」
「ああ。約束だ。」
二人の手が結ばれた。
指と指、掌と掌。
その温もりが、昨夜のすべてをそっと包み込む。
障子の向こうで、遠く鳥のさえずりが微かに響いた。
澄んだ朝の空気が、ふたりの間に流れる余韻を優しく撫でていく。
胸の奥にまだ残る熱と、交わした約束の重み。
それは穏やかに、けれど確かに、ふたりをこれからの日々へと繋いでいく。
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