One Night Lovers

TERRA

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Beyond That Night

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グラスがぶつかり合う音、笑い声、ざわざわとした会話の波。  
職場の飲み会は、いつもより賑やかな空気に包まれていた。  

後藤は、輪の中にいながらも、どこか一歩引いた視線でそれを眺めていた。  
手元のグラスには、まだ半分ほど酒が残っている。  
飲もうと思えば飲める。  
けれど、なんとなく、視線だけが彷徨っていた。  

「後藤くん、あんまり飲んでない?」  

隣から、静かな声がした。  
先嶺が、さりげなく視線を向けている。  

「いや……まあ、普通っすよ。」  

適当に返す。  

先嶺は、ふっと微笑んでグラスを傾けた。  
氷が静かに揺れ、光の反射がわずかに揺らぐ。  

「今日は寒いね。」  

何気ない言葉だった。  
けれど、その声は妙に柔らかく、飲み会の喧騒とは違う静けさを持っていた。  

後藤は、無意識に指でグラスの縁をなぞる。  

「……ですね。」  
目線を落としたまま答える。  

その時、不意に先輩の肩がふっと触れた。  
一瞬だけ、軽く寄りかかるような感覚。  

後藤は、息を詰めた。  
「……先輩?」  

驚いて横を見ると、先嶺は微かに目を伏せていた。  

「ん……ちょっと眠い。」  

酒のせいなのか、疲れのせいなのか。  
けれど、その声は掠れていて、どこか甘い。  

こんなに近い距離で、先輩の温度を感じたことはなかった。  
ほんの数秒。  
けれど、その一瞬のぬくもりが、胸の奥に静かに広がる。  

「……俺は、何をしてるんだろうな。」  

この人は、もうすぐ結婚する。  
自分とは違う世界へ進む。  
そんなことは分かっているのに、温かさに触れるだけで心が揺れる。  

後藤は、ゆっくりと息を吐いた。  

「先輩……飲みすぎないでくださいね。」  

それだけ言うのが精一杯だった。  

先嶺は、ふっと微笑んで頷く。  
その優しさが、どうしようもなく染みる夜だった。  
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