呪われた騎士と関西人

ゆ吉

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3章

65.「四者面談?」

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 もしもしもし、神様聞こえますかー?

『はい、もしもしもしー。こちら貴方は神を信じますか?教団、営業所のゴッドです。あ、因みに本名ではありません。ダイチにはいつか~本名と本社所在地とスリーサイズを教えるつもりですが、かなり頑張って頂いてからになりますかしこおかしこ。』

 フォルクとヴィーダーさんの気迫が残る熱い視線プレッシャーを受けながらも頑張って連絡を取ったら早速これや。
 溜息を吐きつつやれやれだぜと言わんばかりに肩を竦め、即効で虎の威を借りる事にした。

「ヴィーダーさん。早速、神様におちょくられたんでお願いします。」

「ああ?神だかなんだか知らんがふざけてんじゃねぇ。さっさと用件に答えないとぶっ飛ばすぞ。」

『ちょちょちょちょ!怖い怖い怖い!何処で拾って来たのその堅気っぽくない人!?直接話してる訳じゃないのに感じる圧が凄いよ圧が!!?』

 いや、ヴィーダーさんの事は思いっきり知ってるでしょうが!ええですから、圧死する前に相談に乗って欲しいんです!

『もう、分かったよ~。頼れる僕に何でも話すと良いさ!恋愛や結婚生活以外は相談に乗れるからね!任せて!』

 傷口をまだ抉るタイプなんかと神様の自虐ネタにそこそこ痛ましい気分になりながらも、とりあえず話し聞いてくれるみたいなんでヴィーダーさんにお礼を言ってから話し出した。

 内容としては、まず『青の国』の亡くなった人達について。
 アンデッド化せぇへんようにするにはどうしたら良いか相談したら一時凌ぎやけど【浄化】のスキルで時間稼ぎは出来るそうやった。
 やから、事情をフォルクとヴィーダーさんにも説明して出発前に許可もろて安置所に向かう計画を立てた。

 で、次に聞いたのは現在この国に降ってる雨の事。
 これに関しては確認みたいなもんやったんやけど、詳しく聞いたら体力を奪う効果、低体温症の状態異常効果、視界不良、更に海の魔獣達にとっては体力と魔力上昇の効果があるらしい。
 爆上がりって訳ではないらしいけど通常より二割から三割の上昇って明らかにこちら側が不利になる。

『だから、可能ならその国でも味方は多く見つけた方が良い。最悪、三人と一頭になっちゃったらヴィーダーとルツも魔改造するから連絡して?』

 いや、それほんま最悪な事態ですわ。今でさえかなり助けて貰ってるのに巻き込み過ぎもええ所です。
 気合入れて援軍探しますんで、魔改造は置いといて下さい。

『うん、無理強いするものでは無いから気が変わったら言ってね。それに本人とも相談した方が良いだろうし…勝手にやったら与えた力でぶっ飛ばされそうだよ。』

 それはほんまに有り得るんで万が一の時はヴィーダーさんと書類の隅の隅まで協議して判を押します。巻き添えは勘弁やで!

 ヒヤッとしつつも更に忘れてないからなフォルク!の首輪の件。
 魔道具の改造って出来るんか聞いてみたら難しいけど専門の人やったら書き換えが出来るらしい。
 只、この状況で専門の人を探す余裕が無いんで、親切にも神様がしてくれる事になった。

『首輪と鎖を外すだけで良いんだよね?うーん、少しつまらないから外した後はダイチがやっぱり新しい首輪を買ってあげなよ。君がプレゼントする物ならフォルク絶対喜ぶよ?下手したら道端で拾ったスライムでも大事にしてくれるんじゃない?後、そいつなんか強くなりそう。』

 スライムは可愛いんで個人的に欲しいですけども!首輪のプレゼントは冗談になる気が全くせんのでしませんよ!

『えー、フォルクに可愛くお願いされても?ダイチもフォルクに甘いし、強請られたらパトロンのおじさんみたいにご機嫌で買っちゃうんじゃない?』

 待て待て待てーい!侮辱!全体的に侮辱!?
 いや、パトロンさんが全てあかんとは言わんけどってか妙にグレーな話題をぶっこんで来ないで!?反応に困るわ!

『いや、冗談だから?そんなに必死にならないでって言ってる間に外しといたよ!だから、お礼に今度は僕に何か貢いでね。ダイチがくれるなら僕、セーラー服でも体操着でも、なんならスクール水着でも着ちゃう。ゼッケンに大きく名前も書いてよね!』

 ズダァアアアアーーーーン!!!!と、そこで俺は思い切り机を叩いてしまい、見守ってくれてる二人を大いに驚かせ心配させた事はほんまにごめんやねんけど、脳裏に過ぎった精神を尋常じゃないぐらいに揺さぶる危険な映像を抹消したかったんや…。
 何とかフォルクとヴィーダーさんに言い訳ってか深刻な表情で『一旦、見逃して…。』て、言ったら黙って見守る体勢に戻ってくれた。二人の優しさにほんま感謝や。

 えーと…後、何聞けば良かったんでしたっけ!?神様のせいで全部吹っ飛んでしまったやないですか!俺の矮小な記憶力を返して下さいよバカー!!!!

『自分で矮小って言ってるじゃない!神もそこまで万能じゃないから頑張って思い出して!?若しくは、思い出す事があったらまた連絡すれば良いんじゃない!?僕も作業の合間にダイチと話して息抜きしたいしさ!』

 なんか突然の優しさ!?ありがとうございます!そうさせて貰います!て、そういえば世界の調整は上手く行ってるんですか?

『うん、順調ではあるんだけどまだ時間は掛かるね。だから、申し訳ないのは承知でダイチも出来る範囲で頑張って。それからフォルクとヴィーダーに…僕も弁えている。て、伝えて置いて貰えない?』

 順調なら良かったですし言われんでも頑張ります。なんや分かりませんが伝言も了解しました。
 でも、皆俺抜きで話しし過ぎじゃないですか?何かあるならちゃんと言って欲しいんですけど…。

『まあ、拗ねないでよ。時期を見てるんだ、多分今説明してもダイチに良い事って無いと思う、寧ろデメリットが多い。話せる時が来たら話すし、その時は君も選べると思う。そう僕は、ダイチを信じてる。』

 不穏でしかないですが、そんな風に言われたら追求し難いやないですか…んもー!分かりました!時期ってのが来たら洗いざらい教えて貰いますからね!それと、信じてるって言われんの嬉しいです。俺も神様信じてるんであんま悪させんといて下さいよ。

『ええ!?何その返し…ダイチの方が狡くない?うわー、そうやってフラグを乱立させて行くんだ!このすけこまし!ジゴロー!…はああ、じゃあ一旦この辺で失礼するよ。また連絡待ってるからね、ハニー。』

 言いたい放題って、ええ!?神様の方がなんかタラシっぽい!?とか考えてる間に【神話】がぷつっと切れた。
 あっちから切るの珍しいし妙な雰囲気になってもうたな~と思いつつ、預かった伝言を二人に伝えると神妙な顔しながらも一応頷いてくれる。
 今は納得してくれたみたいなんで一先ず今回の件はここで終了し、リスムスさん伝いにギードさんに安置所の件を頼もうと探したらヴィレさんの部屋におった。
 顔色の良い彼女に軽く挨拶し、リスムスさんに用件を話したら感謝されて伝言を快く預かってくれた。
 急な話でもあったんで明日の早朝、出発前に案内して貰える流れになってその日は休養に当てさせて貰い、神様が直して?くれたフォルクの装備を確認して貰ったら心の底から感謝されてちょっと仰け反った。







 翌日、爽やかな鳥の鳴き声なんかは無かったものの夢でエプロン姿の可愛いらしい新妻風レオが起こしに来てくれるという…俺の頭ちょっと待たんかい!いや悪くはないけどそれどうなん!?悪くは決して無いんやけども大丈夫!?新妻エプロン実は大好きやったん!?て、声に出てたみたいでヴィーダーさんに軽く叩かれて起きた。
 フォルクは叩かれた所を撫でて心配してくれたんやが微笑んでくれてるのが眩しくて、雲で見えない太陽の変わりかな?素敵すぎるわと朝から色々ご馳走様やった。

 全く締まらんながらも起床すると各自準備をしてリスムスさんが運んで来てくれた美味しい朝食を取り、迎えに来てくれたギードさんを加えて皆でヴィレさんに挨拶に行った。

「ヴィレさん、調子はどうですか?」

「お陰様で少しなら立ち上がれるまでに回復致しました、本当に有難うございます。それに何かあってもギードが面倒を見てくれるそうです、私の事は気にせずに旅立って下さい。そして、どうか無事に…それだけが望みです。」

 明らかに容態が良いままやし見るからに元気そうで、心配はほんまに無さそうやった。
 只、不安そうに揺れる瞳は潤んでて、それでも優しく笑い掛けてくれながら旅立ちを見送ってくれる。

「心配しないでよ、母さん。皆さんは旅を続けて来られた強い方々だし、俺が人一倍頑丈なのも知ってるだろ?」

「ふふ、そうね。リーベとシュテルケの子で、私の自慢の息子。きっと無事に皆さんを連れて、役目を果たしてくれる。信じているわ、誰よりも…。」

「ありがとう、母さん…。行ってくるね。」

「ええ、気をつけて。いってらっしゃい。」

 言葉の最後にリスムスさんがヴィレさんの頬に親愛のキスを贈り、ヴィレさんもリスムスさんに返してから暫しの別れの挨拶を終えた。
 部屋を出るとギードさんにくれぐれもヴィレさんの事を頼むってリスムスさんが念押ししてたのはちょっと見てておもろかったけど。

 その後は、従魔舎にルツを迎えに行ってからギードさんに案内されて安置所に向かい、到着したのは街の教会みたいな場所やった。
 祀ってるのは初代竜王様と母神らしく…なんで父神いないの?また、何かやらかしちゃったのゴッド?てな、事を考えつつもスルーして目的の場所に向かう。

 建物の中に入ると説明を既に受けてるらしい教会関係者で人族の青年のフェアトさんも加わったんやけど、ここも現在は軍の管轄に入っててギードさんがそのまま案内してくれた。
 廊下を進みアーチ型の大扉の前に到着すると門番の兵士数人で開けてくれ、中に入ると想像してた光景と少し違って足が自然に止まる。

「大丈夫カ、ダイチ…?」

「うん、なんか悲しい光景やのに…こんなにも綺麗なんやなって、思って。」

 真っ白な広い室内に吹き抜けの高い天井、魔力を帯びて淡く発光する氷山と…その中に多くの遺体が静かに眠ってる。
 氷は透明度が高くて、一人一人の表情や最期の状態が確認できた。
 お世辞にも良いとは言い切れん状態やし、澱みもあって、そのままを見ただけの言葉やったらいっそ狂人の発言なんやと思う。
 でも、なんて言うのか…その人達を愛した、慈しんだ、大切やって気持ちが今も情景から感じ取れて胸が熱くなってた。

「毎日、欠かさず祈りを捧げております。氷山の管理も常に交代で行い、望まれる方の参拝もして頂いて皆の想いで支えております。しかし…」

「それでも、アンデッドになってまうんですね…。」

「はい、それも時と共に酷くなって来ております。失礼ですが、本当に貴方様はこの状態を何とかできるのでしょうか?」

 疲労が滲むフェアトさんの表情からは今までの苦労や苦痛が感じられ、いきなり来た奴の事を頭から信じろってのも無理な話しやろう。
 それに、完全に防ぐ事は出来ないのもほんまやった…。

「時間稼ぎ程度になってしまいます。でも、半年から一年は保つそうなんで今までよりは確実に緩和が出来ます。言葉では信用ならんと思いますんで見といて下さい。」

 止めてた歩みを進めて氷山に近付くと気合いと想いを込めて【浄化】を発動させた。
 すると、澱んだ空気が室内から完全に取り払われ淡く光ってた氷山が更に輝きを増す。
 一瞬、強烈な光を放って【浄化】が終わると光の粒子が次々に舞って登るように消えて行った。
『青の国』に来た時の最初の【浄化】みたいに悲しげな雰囲気は無く、嬉しげな感謝の念みたいなんも伝わって来て口元が綻んだ。
 肉体はそのままやけど少なくとも魂は大丈夫やないんやろうか、もし次にアンデッドになっても肉体だけなんやったら多少の救いになるかもしれん。

 そう思いながらフェアトさんの方向いたらさっきと打って変わった様子で号泣してて、仰け反った。
 ツァールトさん達から貰った布をアイテム袋から取り出して手渡し、早速役に立ちましたよと念じながら落ち着くのを待って話を聞こうとしたら今度は綺麗な土下座をされて転けそうになる。

「落ち着いて下さい!何も気にしてませんから直ちに立って下さい!」

「ああ…なんと慈悲深いお言葉、有難うございます。しかし、先程の非礼を深くお詫び致します。」

 立ってくれたんやが今度は折り目正しくお辞儀されてからの謝罪を受けた。
 その謝罪後は流石に落ち着いてくれたんやが、なんか話す時に好きなアイドルのファンかってぐらいに瞳に物凄く熱意が篭るようにはなってた。
 疲れてたフェアトさんにも輝きを取り戻せた事は何よりやと思いつつ、若干お礼をと引き止めに掛かり出した辺りで皆がSPばりに止めに入ってくれたんで助かった。
 教会から半ば脱出するように出て来て、逃避行ばりにそそくさと港の方へ皆で移動しながら今日は締まらんなぁ~と思ってたら驚く光景が広がってた。

 朝早いのに街から港に抜ける道沿いや門の付近に人集りが出来てて、なんやなんやと思ったら治療した患者さん達や家族の人ら、ギードさんの部下の方達にツァールトさんまでおった。

「関係者で動ける者達だけに限定させて頂いたのですが、皆、見送りをしたいとの事でしたので。本当に有難うございました、道中、お気をつけ下さい。」

 ギードさんの説明を受け、周囲を見渡すと皆笑顔で手を振ってくれてる。
 ほんま元気になって良かった、治療できて良かったと手を振り返し俺も笑顔を浮かべた。

「集まってくれて、ありがとうございます!皆さんどうかお元気で!」

 わっと歓声が上がり、温かい別れの言葉と見送りを受けながら俺達はゼーヴィントの街を後に出来た。
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