5 / 35
1.現実と仮想と
05_コードゼロツー
しおりを挟む
俺の部屋に戻ると――部屋の中は、さっき出た時と、内装も物の位置も変わっていないのに――何故だか不気味さと物寂しさを感じた。
「何だろう、この違和感……俺の部屋なのに、何か変な感じがする」
「ねぇ、ゼロワンがいない――どこに行っちゃったの?」
窓の外は未だ赤く染まったまま。 警報音も鳴り響いている。 不安な気持ちのせいで、そんな気がしていたと思っていたが、どうやらそれは違っていたようで……さっきまでそこに居たはずのゼロワンが、居なくなったいたのだった。
「どこ行ったんだ……?」
「分からない……でもなんか……この部屋、おかしい……?」
部屋の中へ、一歩足を踏み入れた途端――心臓が脈打つのと同じくらいの速さで、部屋中が電子のように入り乱れて行く。 頭の中で聞こえて来る砂嵐の音、体ごとそれに飲み込まれて行くかのような不思議な感覚が襲ってきていた。
【コードネームレント……我はディスカトーテ お前のココロを奪還する者……】
「それはっ、さっき…聞いたっ!! くっそ、お前がやったのか!?元に戻せよ!」
「蓮人?大丈夫!?誰と話してるの!?」
【ハハッハハハ……諦めろ――お前はもうすでに………こちら側の人間だ――ハッハッハハハハ――!!】
地面が揺れ、部屋中の物が床に散乱し……俺は明美の手を取った。 二人で固く手を繋ぎ合って、家が崩れてなくならない事を祈りながら――目の前はプツリと、照明が消えるように暗転していった。
「……」
「……………」
……………転送完了。
「うっ……ここ、どこだ……?」
見渡す限りの青空――草木が生い茂り、露に濡れた後の青々しい葉の香りが鼻をかすめる。 俺達が元居た部屋は既に跡形も無く、ただ広がる草原に寝転がっているだけだった。
「あっ!明美!明美は――!」
俺はがばっと起き上がり、周囲を見回した。 明美は俺の隣でスヤスヤと寝息を立てて寝ている姿に、ホッと安堵のため息をついた。
「それにしても――ここ、どこだ? 俺の部屋は一体どうなったんだ?」
「おはよう、こんな所でいつまでも転がっているから、死んだものだと思っていたけど……まぁ、君が生きていてこちらも助かったよ」
「誰だ?」
俺の事を見下ろしている少女が一人……ここが現実なのか分からないが、彼女の頭上にはNPCの文字は浮かび上がっていなかった。
「私の名前は【コードゼロツー】……君たちはゼロワンと一緒にいたはずだよ……ゼロワンはどうした?」
「ゼロワン!そうだよ、ゼロワン!アンドロイダってやつ!肝心な時に消えてさ!」
「しっ!!【アンドロイダ】は禁忌だ、ここではその名を語らないでもらいたい……どこで聞かれてるかわからないんだ。 ここは、首都の外れだから監視の目も緩い、以後気を付けて」
ゼロツーと名乗るこの少女は、おそらくアンドロイドなのだろう。 しかし――彼女の容姿は、まったくと言っていいほどアンドロイドらしくなかった。
まるで人間のような見た目、肌の質感も、毛先の一本一本でさえ、生身の人間と変わらない姿。 喋り方も滑らかで、機械かと疑う程だった。
「お前――アンドロイド?」
「だったら何?」
「いや、別に……」
「ふんっ……ゼロワンめ……任務中だというのに、一体どこへ消えというんだ」
ゼロツーは深く考え込んでいた。 その横から、遠目に見える都市は……まるで、俺が長く遊んでいた、コルテクスオンラインにそっくりだった。
「コルテクスオンライン……?」
「それとは似て非なるものだ。 ここは、電解都市ルズイールサマタギア」
「電解都市……? ルズイールサマタギア……?」
「やれやれ、物語の最初って……やっぱり必要? しょうがないなぁ……ようこそ――ルズイールサマタギアへ。 それで、一応確認するけど、君の名前は?」
頭の中がいっぱいだった。 警報音の中――赤くなったゲーム画面、無関心な人をよそにモンスターだらけになった町、物が散乱した床……ココロを奪還するという……謎の男の声。
目を覚ませば、広大な大地……遠目には長年遊んだゲームと似ている大都市……頭の中はもうぐちゃぐちゃになっていた。 明美が目を覚ましたのが、唯一の救いだった。
「んん……蓮人!?てっかここどこ!?」
「はぁ~また説明しなくちゃいけない?――かったるいなぁ、もう」
「いや、この子誰!?」
目を丸くして驚いている明美に、俺はそっと耳打ちをしてゼロツーに聞こえないようにヒソヒソ声で話し出す。
『なぁ、明美……俺も今目を覚ました所なんだ……訳が分からないんだけどさ、ゲームの中っぽくて、とりあえず――今は名前を聞かれてるところなんだ……どうする?』
『えぇ――ここがゲームの世界なら、本名とか教えるの、怖くない?』
『うーん、でもゼロワンを知ってるみたいなんだ……やっぱ本名で行く?』
「何だろう、この違和感……俺の部屋なのに、何か変な感じがする」
「ねぇ、ゼロワンがいない――どこに行っちゃったの?」
窓の外は未だ赤く染まったまま。 警報音も鳴り響いている。 不安な気持ちのせいで、そんな気がしていたと思っていたが、どうやらそれは違っていたようで……さっきまでそこに居たはずのゼロワンが、居なくなったいたのだった。
「どこ行ったんだ……?」
「分からない……でもなんか……この部屋、おかしい……?」
部屋の中へ、一歩足を踏み入れた途端――心臓が脈打つのと同じくらいの速さで、部屋中が電子のように入り乱れて行く。 頭の中で聞こえて来る砂嵐の音、体ごとそれに飲み込まれて行くかのような不思議な感覚が襲ってきていた。
【コードネームレント……我はディスカトーテ お前のココロを奪還する者……】
「それはっ、さっき…聞いたっ!! くっそ、お前がやったのか!?元に戻せよ!」
「蓮人?大丈夫!?誰と話してるの!?」
【ハハッハハハ……諦めろ――お前はもうすでに………こちら側の人間だ――ハッハッハハハハ――!!】
地面が揺れ、部屋中の物が床に散乱し……俺は明美の手を取った。 二人で固く手を繋ぎ合って、家が崩れてなくならない事を祈りながら――目の前はプツリと、照明が消えるように暗転していった。
「……」
「……………」
……………転送完了。
「うっ……ここ、どこだ……?」
見渡す限りの青空――草木が生い茂り、露に濡れた後の青々しい葉の香りが鼻をかすめる。 俺達が元居た部屋は既に跡形も無く、ただ広がる草原に寝転がっているだけだった。
「あっ!明美!明美は――!」
俺はがばっと起き上がり、周囲を見回した。 明美は俺の隣でスヤスヤと寝息を立てて寝ている姿に、ホッと安堵のため息をついた。
「それにしても――ここ、どこだ? 俺の部屋は一体どうなったんだ?」
「おはよう、こんな所でいつまでも転がっているから、死んだものだと思っていたけど……まぁ、君が生きていてこちらも助かったよ」
「誰だ?」
俺の事を見下ろしている少女が一人……ここが現実なのか分からないが、彼女の頭上にはNPCの文字は浮かび上がっていなかった。
「私の名前は【コードゼロツー】……君たちはゼロワンと一緒にいたはずだよ……ゼロワンはどうした?」
「ゼロワン!そうだよ、ゼロワン!アンドロイダってやつ!肝心な時に消えてさ!」
「しっ!!【アンドロイダ】は禁忌だ、ここではその名を語らないでもらいたい……どこで聞かれてるかわからないんだ。 ここは、首都の外れだから監視の目も緩い、以後気を付けて」
ゼロツーと名乗るこの少女は、おそらくアンドロイドなのだろう。 しかし――彼女の容姿は、まったくと言っていいほどアンドロイドらしくなかった。
まるで人間のような見た目、肌の質感も、毛先の一本一本でさえ、生身の人間と変わらない姿。 喋り方も滑らかで、機械かと疑う程だった。
「お前――アンドロイド?」
「だったら何?」
「いや、別に……」
「ふんっ……ゼロワンめ……任務中だというのに、一体どこへ消えというんだ」
ゼロツーは深く考え込んでいた。 その横から、遠目に見える都市は……まるで、俺が長く遊んでいた、コルテクスオンラインにそっくりだった。
「コルテクスオンライン……?」
「それとは似て非なるものだ。 ここは、電解都市ルズイールサマタギア」
「電解都市……? ルズイールサマタギア……?」
「やれやれ、物語の最初って……やっぱり必要? しょうがないなぁ……ようこそ――ルズイールサマタギアへ。 それで、一応確認するけど、君の名前は?」
頭の中がいっぱいだった。 警報音の中――赤くなったゲーム画面、無関心な人をよそにモンスターだらけになった町、物が散乱した床……ココロを奪還するという……謎の男の声。
目を覚ませば、広大な大地……遠目には長年遊んだゲームと似ている大都市……頭の中はもうぐちゃぐちゃになっていた。 明美が目を覚ましたのが、唯一の救いだった。
「んん……蓮人!?てっかここどこ!?」
「はぁ~また説明しなくちゃいけない?――かったるいなぁ、もう」
「いや、この子誰!?」
目を丸くして驚いている明美に、俺はそっと耳打ちをしてゼロツーに聞こえないようにヒソヒソ声で話し出す。
『なぁ、明美……俺も今目を覚ました所なんだ……訳が分からないんだけどさ、ゲームの中っぽくて、とりあえず――今は名前を聞かれてるところなんだ……どうする?』
『えぇ――ここがゲームの世界なら、本名とか教えるの、怖くない?』
『うーん、でもゼロワンを知ってるみたいなんだ……やっぱ本名で行く?』
0
あなたにおすすめの小説
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
書籍化の打診が来ています -出版までの遠い道のり-
ダイスケ
エッセイ・ノンフィクション
ある日、私は「書籍化の打診」というメールを運営から受け取りました。
しかしそれは、書籍化へと続く遠い道のりの一歩目に過ぎなかったのです・・・。
※注:だいたいフィクションです、お察しください。
このエッセイは、拙作「異世界コンサル株式会社(7月12日に電子書籍も同時発売)」の書籍化の際に私が聞いた、経験した、知ったことの諸々を整理するために書き始めたものです。
最初は活動報告に書いていたのですが「エッセイに投稿したほうが良い」とのご意見をいただいて投稿することにしました。
上記のような経緯ですので文章は短いかもしれませんが、頻度高く更新していきますのでよろしくおねがいします。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる