ーANDROIDAー 禁忌の“ココロ” 僕らは――もうどこにも存在しない 【完結】

ゆずたこぽんず

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1.現実と仮想と

05_コードゼロツー

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 俺の部屋に戻ると――部屋の中は、さっき出た時と、内装も物の位置も変わっていないのに――何故だか不気味さと物寂しさを感じた。

「何だろう、この違和感……俺の部屋なのに、何か変な感じがする」
「ねぇ、ゼロワンがいない――どこに行っちゃったの?」

 窓の外は未だ赤く染まったまま。 警報音も鳴り響いている。 不安な気持ちのせいで、そんな気がしていたと思っていたが、どうやらそれは違っていたようで……さっきまでそこに居たはずのゼロワンが、居なくなったいたのだった。

「どこ行ったんだ……?」
「分からない……でもなんか……この部屋、おかしい……?」

 部屋の中へ、一歩足を踏み入れた途端――心臓が脈打つのと同じくらいの速さで、部屋中が電子のように入り乱れて行く。 頭の中で聞こえて来る砂嵐の音、体ごとそれに飲み込まれて行くかのような不思議な感覚が襲ってきていた。

【コードネームレント……我はディスカトーテ お前のココロ・・・を奪還する者……】
「それはっ、さっき…聞いたっ!! くっそ、お前がやったのか!?元に戻せよ!」
「蓮人?大丈夫!?誰と話してるの!?」
【ハハッハハハ……諦めろ――お前はもうすでに………こちら側・・・・の人間だ――ハッハッハハハハ――!!】

 地面が揺れ、部屋中の物が床に散乱し……俺は明美の手を取った。 二人で固く手を繋ぎ合って、家が崩れてなくならない事を祈りながら――目の前はプツリと、照明が消えるように暗転していった。


「……」
「……………」

……………転送完了。 


「うっ……ここ、どこだ……?」

 見渡す限りの青空――草木が生い茂り、露に濡れた後の青々しい葉の香りが鼻をかすめる。 俺達が元居た部屋は既に跡形も無く、ただ広がる草原に寝転がっているだけだった。

「あっ!明美!明美は――!」

 俺はがばっと起き上がり、周囲を見回した。 明美は俺の隣でスヤスヤと寝息を立てて寝ている姿に、ホッと安堵のため息をついた。

「それにしても――ここ、どこだ? 俺の部屋は一体どうなったんだ?」

「おはよう、こんな所でいつまでも転がっているから、死んだものだと思っていたけど……まぁ、君が生きていてこちらも助かったよ」
「誰だ?」

 俺の事を見下ろしている少女が一人……ここが現実なのか分からないが、彼女の頭上にはNPCの文字は浮かび上がっていなかった。

「私の名前は【コードゼロツー】……君たちはゼロワンと一緒にいたはずだよ……ゼロワンはどうした?」
「ゼロワン!そうだよ、ゼロワン!アンドロイダってやつ!肝心な時に消えてさ!」
「しっ!!【アンドロイダ】は禁忌だ、ここではその名を語らないでもらいたい……どこで聞かれてるかわからないんだ。 ここは、首都の外れだから監視の目も緩い、以後気を付けて」

 ゼロツーと名乗るこの少女は、おそらくアンドロイドなのだろう。 しかし――彼女の容姿は、まったくと言っていいほどアンドロイド・・・・・・らしくなかった。
 まるで人間のような見た目、肌の質感も、毛先の一本一本でさえ、生身の人間と変わらない姿。 喋り方も滑らかで、機械かと疑う程だった。

「お前――アンドロイド?」
「だったら何?」
「いや、別に……」
「ふんっ……ゼロワンめ……任務中だというのに、一体どこへ消えというんだ」

 ゼロツ・・・ーは深く考え込んでいた。 その横から、遠目に見える都市は……まるで、俺が長く遊んでいた、コルテクスオンラインにそっくりだった。

「コルテクスオンライン……?」
「それとは似て非なるものだ。 ここは、電解都市ルズイールサマタギア」
「電解都市……? ルズイールサマタギア……?」
「やれやれ、物語の最初って……やっぱり必要? しょうがないなぁ……ようこそ――ルズイールサマタギアへ。 それで、一応確認するけど、君の名前は?」

 頭の中がいっぱいだった。 警報音の中――赤くなったゲーム画面、無関心な人をよそにモンスターだらけになった町、物が散乱した床……ココロを奪還するという……謎の男の声。
 目を覚ませば、広大な大地……遠目には長年遊んだゲームと似ている大都市……頭の中はもうぐちゃぐちゃになっていた。 明美が目を覚ましたのが、唯一の救いだった。

「んん……蓮人!?てっかここどこ!?」
「はぁ~また説明しなくちゃいけない?――かったるいなぁ、もう」
「いや、この子誰!?」

 目を丸くして驚いている明美に、俺はそっと耳打ちをしてゼロツーに聞こえないようにヒソヒソ声で話し出す。

『なぁ、明美……俺も今目を覚ました所なんだ……訳が分からないんだけどさ、ゲームの中っぽくて、とりあえず――今は名前を聞かれてるところなんだ……どうする?』
『えぇ――ここがゲームの世界なら、本名とか教えるの、怖くない?』
『うーん、でもゼロワンを知ってるみたいなんだ……やっぱ本名で行く?』
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