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1.現実と仮想と
06_仮想と現実の狭間
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いつまでもコソコソと話している俺たちに、痺れを切らしたのか……背後でゼロワンの大きなため息が聞こえた。
「早くしてくれないかなぁ?」
「ハ、ハイ、藤ヶ谷蓮人です!」
「花崎明美です!よろしくお願いしまーす!」
「はいはい、コードネーム レント、コードネーム アケミ、どうぞ宜しく」
ゼロツーは、やれやれと言った表情をしながら、社交辞令のごとく手を差し出した。 握手を交わすと、何とも言えない、少女の手の感触……一瞬、胸がドキッとした事は……明美には秘密だ。
それにしても、この手触り……目を疑う程の素肌感と温かさ。 彼女は本当にアンドロイドなのだろうか?
「さて、ひとつ大切なことを教えよう……まず――これを腕に貼りつけて。 すぐに体内へ吸収されるから……そしたら、その眼鏡を外してもこの世界に止まれる筈だよ」
ゼロツーは、俺の手の平へ乗せるようにして、小さな丸い形のステッカーを差し出してきた。
俺も明美も、それぞれがここへ来る以前から、眼鏡を装着したままだった事を忘れ――言われるままに、ステッカーを腕に貼りつけようとした。
(まてよ、この世界に止まる?)
ゼロツーが放った、不思議な言い方に、思わずステッカーを腕に貼り付ける手を止めた。 眼鏡を外したら、一体どんな事が起こるのか――俺は、その場でパッと眼鏡を外してみた。
「な……!?なんだこれ!!」
目の前には、今まで見ていた世界はおろか……明美もゼロツーの姿も消え、驚いて何度も何度も眼鏡をかけたり外したりを繰り返した。
眼鏡を上下に動かす度に、バリバリとフラッシュが起こって、目の前に広がる世界が消失し、泥だらけの地面が現れた。
(何なんだ、何なんだよ? こ……これ、俺の……家?)
荒廃した世界。
確かにそこに存在していた。 さっきまで居たはずの、自分の家が崩れ落ちて……屋根だけが土から少しだけ頭を出していた。 まるで何年も放り続けられ、苔むして……辺りには草木が生い茂っていた。
「も、森だ。 あ……あり得ない……!! ここは、都会のど真ん中だったんだぞ!?」
サラリーマンも、女子高生も、誰ひとり、その場にいない。 家の前に路線が通っていたはずのバス停も無ければ、スーパーさえも、跡形も無くなっていた。
人の気配はおろか……自分の呼吸する音さえ、耳に届かない。
それはまるで、この世界から自分が切り離された存在だという事を、証明しているかのようだった。
――ゾッと、顔が青ざめた。 もう一度、眼鏡をかけ直して……目の前に現れた二人がそこに居る事を確かめながら……恐怖に震えた指で、ステッカーを腕に貼り付けた。
「ピピ……承認完了……」
ステッカーから、機会音声が流れ――すうっと、体内に吸収されたかのように消えていった。
体の中がうずくような感覚……ザワザワと、体の奥底から沸き起こるソレは、あの警告の中で……砂嵐に飲まれたような、あの時と同じものだった。
体は宙を彷徨ったみたいに……分解されていた細胞が、再構築されていくような、何とも気味の悪い感覚だった。
「ステッカーが消えた……」
「もー、びっくりしたよ! 蓮人ってば、いきなり消えたり、戻ってきたりするんだもん!」
「眼鏡を外してみて、驚いた? 今度はもう外しても大丈夫だよ」
俺は、恐る恐る眼鏡に指をかけ、そっと持ち上げ――ぎゅっと力いっぱい目を閉じた。 薄ら目を開けながら……今見えている世界が消えないか確かめた。 幸い、あの荒廃した世界に変わることはもう無かった。
「どう言うことか、説明してくれないか……?」
「もちろん。 君が見た世界は、現代の日本だ。 場所は北緯……」
「ああっ!そんな難しいことはいらない! 俺ん家の屋根みたいなのが、土に埋まってたんだ!!いったいどう言うことだ!!」
ゼロツーは、うーんと言うように、顎に手を当て……頭を傾けた。
「ここに来る前……君達の住んでいた世界は、過去の日本。 ここは、そこから何百年も先に誕生した――仮想現実空間なんだ」
「仮想現実……空間?」
「この世界は、リズム・アグレー博士によって作られた」
「リズム・アグレー……?何処かで聞いた覚えがあるな……」
ゼロツーが言うには、ここは俺たちが元いた世界とは違い、何百年も進んだ後の世界――リズム・アグレーと言う人物が、この仮想世界を開発、そして……現実世界と融合させた。
元居た世界で、急がれていた自動化社会は完璧なものとなり、誰一人が無理に働くことのない完璧な楽園と化したらしい。
「でもさぁ、人間は?ほら、家にこもってばかりじゃ……飯とかどうすんの?」
「それが、問題ないんだ。 この仮想世界に住む全ての生き物たちは――実在しているにもかかわらず、どこにも存在しない――そして、目に見えない」
「目に、見えない……!?」
「そう、いわば……この世界に住まう者たちは皆、小さな粒……言うなれば粒子なんだ」
全くもって、理解ができなかった。
今、この世には壊滅した家屋しか存在しない――そして、ここに居る生き物たちは皆粒子となって、この電解都市に暮らしている、というのだ。
「さっき見たものが現実……そして、ここが……」
「仮想空間、ルズイールサマタギア……人々の楽園。 僕らは――もうどこにも存在しない、粒子の一部だ」
さも当たり前のように、ゼロツーが呟いた。 何度も人に教えて来たかのような口ぶりで……ここがそう言った世界だと、認めざるを得なかった。
「早くしてくれないかなぁ?」
「ハ、ハイ、藤ヶ谷蓮人です!」
「花崎明美です!よろしくお願いしまーす!」
「はいはい、コードネーム レント、コードネーム アケミ、どうぞ宜しく」
ゼロツーは、やれやれと言った表情をしながら、社交辞令のごとく手を差し出した。 握手を交わすと、何とも言えない、少女の手の感触……一瞬、胸がドキッとした事は……明美には秘密だ。
それにしても、この手触り……目を疑う程の素肌感と温かさ。 彼女は本当にアンドロイドなのだろうか?
「さて、ひとつ大切なことを教えよう……まず――これを腕に貼りつけて。 すぐに体内へ吸収されるから……そしたら、その眼鏡を外してもこの世界に止まれる筈だよ」
ゼロツーは、俺の手の平へ乗せるようにして、小さな丸い形のステッカーを差し出してきた。
俺も明美も、それぞれがここへ来る以前から、眼鏡を装着したままだった事を忘れ――言われるままに、ステッカーを腕に貼りつけようとした。
(まてよ、この世界に止まる?)
ゼロツーが放った、不思議な言い方に、思わずステッカーを腕に貼り付ける手を止めた。 眼鏡を外したら、一体どんな事が起こるのか――俺は、その場でパッと眼鏡を外してみた。
「な……!?なんだこれ!!」
目の前には、今まで見ていた世界はおろか……明美もゼロツーの姿も消え、驚いて何度も何度も眼鏡をかけたり外したりを繰り返した。
眼鏡を上下に動かす度に、バリバリとフラッシュが起こって、目の前に広がる世界が消失し、泥だらけの地面が現れた。
(何なんだ、何なんだよ? こ……これ、俺の……家?)
荒廃した世界。
確かにそこに存在していた。 さっきまで居たはずの、自分の家が崩れ落ちて……屋根だけが土から少しだけ頭を出していた。 まるで何年も放り続けられ、苔むして……辺りには草木が生い茂っていた。
「も、森だ。 あ……あり得ない……!! ここは、都会のど真ん中だったんだぞ!?」
サラリーマンも、女子高生も、誰ひとり、その場にいない。 家の前に路線が通っていたはずのバス停も無ければ、スーパーさえも、跡形も無くなっていた。
人の気配はおろか……自分の呼吸する音さえ、耳に届かない。
それはまるで、この世界から自分が切り離された存在だという事を、証明しているかのようだった。
――ゾッと、顔が青ざめた。 もう一度、眼鏡をかけ直して……目の前に現れた二人がそこに居る事を確かめながら……恐怖に震えた指で、ステッカーを腕に貼り付けた。
「ピピ……承認完了……」
ステッカーから、機会音声が流れ――すうっと、体内に吸収されたかのように消えていった。
体の中がうずくような感覚……ザワザワと、体の奥底から沸き起こるソレは、あの警告の中で……砂嵐に飲まれたような、あの時と同じものだった。
体は宙を彷徨ったみたいに……分解されていた細胞が、再構築されていくような、何とも気味の悪い感覚だった。
「ステッカーが消えた……」
「もー、びっくりしたよ! 蓮人ってば、いきなり消えたり、戻ってきたりするんだもん!」
「眼鏡を外してみて、驚いた? 今度はもう外しても大丈夫だよ」
俺は、恐る恐る眼鏡に指をかけ、そっと持ち上げ――ぎゅっと力いっぱい目を閉じた。 薄ら目を開けながら……今見えている世界が消えないか確かめた。 幸い、あの荒廃した世界に変わることはもう無かった。
「どう言うことか、説明してくれないか……?」
「もちろん。 君が見た世界は、現代の日本だ。 場所は北緯……」
「ああっ!そんな難しいことはいらない! 俺ん家の屋根みたいなのが、土に埋まってたんだ!!いったいどう言うことだ!!」
ゼロツーは、うーんと言うように、顎に手を当て……頭を傾けた。
「ここに来る前……君達の住んでいた世界は、過去の日本。 ここは、そこから何百年も先に誕生した――仮想現実空間なんだ」
「仮想現実……空間?」
「この世界は、リズム・アグレー博士によって作られた」
「リズム・アグレー……?何処かで聞いた覚えがあるな……」
ゼロツーが言うには、ここは俺たちが元いた世界とは違い、何百年も進んだ後の世界――リズム・アグレーと言う人物が、この仮想世界を開発、そして……現実世界と融合させた。
元居た世界で、急がれていた自動化社会は完璧なものとなり、誰一人が無理に働くことのない完璧な楽園と化したらしい。
「でもさぁ、人間は?ほら、家にこもってばかりじゃ……飯とかどうすんの?」
「それが、問題ないんだ。 この仮想世界に住む全ての生き物たちは――実在しているにもかかわらず、どこにも存在しない――そして、目に見えない」
「目に、見えない……!?」
「そう、いわば……この世界に住まう者たちは皆、小さな粒……言うなれば粒子なんだ」
全くもって、理解ができなかった。
今、この世には壊滅した家屋しか存在しない――そして、ここに居る生き物たちは皆粒子となって、この電解都市に暮らしている、というのだ。
「さっき見たものが現実……そして、ここが……」
「仮想空間、ルズイールサマタギア……人々の楽園。 僕らは――もうどこにも存在しない、粒子の一部だ」
さも当たり前のように、ゼロツーが呟いた。 何度も人に教えて来たかのような口ぶりで……ここがそう言った世界だと、認めざるを得なかった。
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