ーANDROIDAー 禁忌の“ココロ” 僕らは――もうどこにも存在しない 【完結】

ゆずたこぽんず

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1.現実と仮想と

10_機械的な信号

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 ゼロツーが、一歩進んだその時だった。 都市に浮遊していたポリスたちが、一斉にけたたましい程の警報を鳴らし出す。

――ビービービー

「な、なに……!?」

――ビビビー!!警報、警報……けい……ほ……ザザ……コネクション開始……接続、せつぞ……

「こ、これは……」
「今度は何だって言うんだよ!」

――システムに侵入者あり、都市部の市民は直ちに帰宅せよ。警報、けいほ……

 ポリスどころか、町中の電光掲示板に赤い文字で警告文が表示されていた。 奴の、ディスカトーテの仕業に間違いない。この間と同じような現象に、思わず俺は身構えた。

「このままではまずい……ポリスシステムが誤作動を起こすかもしれない。 一度どこかの建物に避難する」
「レント様、アケミ様、急いでこの場を離れましょう!」
「あ、ゼロワン、ゼロツー、まてよ!まだ明美が……」

 ゼロワンとゼロツーが、早歩きで前へ進みだすと、横に居たはずの明美が居ない事に気が付いて……俺は、振り返って明美を探した。 頭上に浮遊していたポリスの装置を見上げて、明美は固まったようにその場から動かなくなっていた。

「あけ、み……?」
「蓮人……?私……いったい……ここ……は……?」
「何を言ってるんだ、明美!早く行くぞ!」
「だめ……私……いけない……」

 ポリスから放たれた直線の光が、明美の腕に当たった。 消えたはずのステッカーが焼かれ、明美の身体はその場で粒子となって存在事その場から消えて行った。

「お、おい……あけみ、あけみいいいいいっ!!」
「アケミ様!! なんてこと!まだ、粒子がそこにあるなら間に合う!」

 手を伸ばしても、もう遅い。 警告の色に反射した明美は粒子となって、辺りに散らばっていった。 ゼロワンが走り出して、粒子となった明美の元へ高速で向かっていく――それと同時に、まるで手招くように、突然ポータルが近くに現れ、明美の粒子だけを吸い取って行く。

 ゼロワンが到着するのもむなしく、ポータル事、明美はその場から姿を消した。 ゼロワンの背中には、悲壮感が漂っていた。 肩をガクッと落として……まるで、本物の人間のように振る舞うゼロワンは、やはりその辺で歩いていたアンドロイドとは全く違う表情をしていた。

 掲示板の警告色が赤から黄色に変わり、やがて青色の安全色になった。 浮遊していたポリスも、動きを取り戻し……何事もなかったかのように、今までの警備に戻っていった。

「やはり、こうなってしまったんですね」
「阻止できなかった……これは、明日と言わず、今すぐ博士の元へ戻らなければならくなった」
「なんだよ、くそっ……おれ、何もできなかった……なんでだよ……うわぁああっ」

 震える手を眺めながら、地面を殴って叫んでいた俺の肩にそっと手を置いて、ゼロワンは静かに俺の肩口で囁いた。

「まだ、大丈夫です。 希望はあります……」
「なんだよ、希望って」
「ワタシハ……アケミを模して、“明美”となるように造られました。 彼女の全てが私にインストールされています……だからこそ、アケミが何処にいるか、その存在を感じる事が出来ます」
「じゃあ、明美は今どこに居るんだよ……」

 静けさを取り戻した都市の中で、ひやりと冷たい風が吹き抜けた。 その冷たさを、アンドロイドであるゼロツーは感じているのだろうか。 彼女の瞳の奥に見えた、機械的な信号は、青と緑の点滅を繰り返していた。
 何かを受信しているのだろうか、それとも……今、明美が消えたことについて、悲しんでいるのだろうか……? 表情からは読み取れないが、彼女の慰めようとしている気持ちだけは伝わって来た。

「ディスカトーテに、連れていかれたのです。 私が――必ず見つけ出します……だから今は落ち着いて」
「くっ……俺は、ディスカトーテを許さねぇ。 あいつもアンドロイドだったら、この手でぶっ壊してやる」
「行きましょう? ……博士の元へ」

 俺は、拳を握りしめ立ち上がると、地面を力いっぱい踏みしめた。 郊外の柔らかい草と土とは違って、鉄板とコンクリートでできた固い地面は、ガツンと音を立てた。
 今、俺に出来る事は……俺が作り出したという、リズム・アグレーに会わなければならない。

……ただ、それだけを胸に。 俺はゼロワン、ゼロツーと共に歩き出した。
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