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1.現実と仮想と
09_都市部の中
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日が落ちて、すっかり辺りは暗くなった。 仮想世界といえど、俺の腹は健在なようで……ぐぅーっという大きな音が、辺りに響いた。
「あー腹減ったぁ……なぁ、何か食いもんねえか?」
「そうだね、私もお腹がすいたかな……」
「君たちは人間だものね、お腹がすくのも無理はない。 それに、辺りも暗くなってきたし……都市部に移動して宿を探してみようか」
「ゼロワンちゃんも賛成ですぅ~」
空には、夜空が広がって輝かしい星々の間にオーロラが広がっている。 現代では見る事の出来ない幻想的な光景に、明美は「わぁ」と声を上げて、空を見上げていた。
都市部までの草原の上を歩くと――現実と変わらない地面の踏み心地に関心しつつ、鳴りやまない自分の腹を抑えながら、ゼロツーの後を追っていた。
「ここから先は、高セキュリティゾーンとなる。 サーチポリスが常に辺りを監視しているから、くれぐれも僕たちが“アンドロイダ”だと口にしないようにして」
「あ、あぁ……もし言ったらどうなるんだ?」
「言わなくても分かると思ったけど、まあ、容赦なく破壊されるから観念してよね」
「うっわー、蓮人ってば……残酷ぅ」
「おれじゃ、ねぇ!」
明美と、ゼロワンが声をそろえて俺の事をいじり倒していた。 困った顔で、ゼロツーに助けを求めると……ゼロツーは無表情で「触らぬ神に祟りなし……」と呟きながら、無関心に都市部の中へ入っていった。
都市部は、入り口からやけに華やかだった。 郊外の静けさは無く、そこら中に所せましとアクセサリーや、衣装を売る店が立ち並んでいた。
他にも気になったのは、いつでも好きな時に外見の変更ができるアバターショップなる店も置いてあったのだ。 ゼロツーは、それを“被せ”だと言う。
粒子である俺らの外側に、また別の粒子である職人の作ったアバターを重ねるという二重構造で、他人にそれが本物であると見せるのだそうだ。
「いやー、すげえな、未来って……」
「実質、君が作り上げたようなものだけど」
「こんな未来なら、俺は大歓迎だなぁーはっははは」
「いうなれば、そこら中に君の癖が詰め込まれてるんだけどね――ほら、あれなんて君の黒歴史……」
「う、うわああ、な、なんで……!?俺が秘密に描いた、キャラの画像が売られてるんだ!!」
一昔前に好きだったキャラクターに、ちょっ大人セクシーな衣装を着せ、それを描いて、画像フォルダの奥にしまっていたはずの絵が、なんと目の前で額縁に詰められて販売されていたのだ。
「アグレー博士が君を懐かしんで、君のフォルダから探り当て、忘れないように量産して売り出したものだよ」
「何やってくれてるんだああああうわあああ!!ていうか、やっぱり死んでるのか俺ええ……」
「ふっ……当り前じゃない。 生身の人間が数百年後に実在していたらおかしいでしょ?……今いる、君たち二人を除いては」
「ふふ、レント様?あなたはよく言っておられました……俺の死後は、PCごと水没させてくれと――博士は寂しくて、無理だったようですよ」
「ぶ、ぶん殴ってやる……!」
明美は額縁の中のキャラクターをじっと見つめながら、ニヤリと笑って俺の顔を覗き込んだ。 ……もう、言おうとしている事は分かっている。
「蓮人君てば……こんなセクシーボディのお姉さんが好きなのねぇ」
「やっぱりいいい、うおおおお、明美にだけは見られたくなかった!!」
俺は頭を抱え、膝から崩れ落ちた。 床に這いつくばって、絶望を全身で表現していると、それを見た明美が、俺を指さしながらゲラゲラと笑っていた。
ふと、良い香りが鼻をかすめた。 これは、現代でも嗅いだことのある……炭火で焼かれた醤油の香ばしくて美味しい香り。
「やぎどり!!やぎどりくいてぇ!!」
「ほんとだー、焼き鳥の香りがする……」
「あぁ、やきとりーのショップですね、あそこは人気なんです、私が買ってきますね」
しばらくすると、ゼロワンが焼き鳥の袋を両手にたくさん抱えて持ってきた。 ここに来る前……学校から帰宅した後から何も食べていない。 何時間経ったかもわからないけれど、丸一日以上は何も食べていないような空腹感が、食べ物を求めて胃を動かし出す。
醤油の甘い香りに、一気に焼き鳥を何本も頬張って、お腹の中は満足げに重くなった。
「あーー、くったくった、やっぱ焼き鳥はうめぇ~」
「本当に、美味しかった!こんな所でも美味しいものが食べられるなんて、感心だよ、ありがとうゼロワン!」
「えへへ、それほどでもありませんよ~」
「ふんっ、お腹がいっぱいになったなら、早く泊まる場所を探しに行くよ。 明日は君たちを博士の元へ連れて行かなきゃならないからね」
ゼロツーは、都市の中心部にある、高い塔の先を見上げた。 それにつられて、俺もその塔を眺める。 遥か高くそびえ立つ塔の上、その場所に……この世界の創立者であるリズム・アグレー博士が、この世界を監視しながら、法と秩序を守っているのだと、ゼロツーは言った。
「あー腹減ったぁ……なぁ、何か食いもんねえか?」
「そうだね、私もお腹がすいたかな……」
「君たちは人間だものね、お腹がすくのも無理はない。 それに、辺りも暗くなってきたし……都市部に移動して宿を探してみようか」
「ゼロワンちゃんも賛成ですぅ~」
空には、夜空が広がって輝かしい星々の間にオーロラが広がっている。 現代では見る事の出来ない幻想的な光景に、明美は「わぁ」と声を上げて、空を見上げていた。
都市部までの草原の上を歩くと――現実と変わらない地面の踏み心地に関心しつつ、鳴りやまない自分の腹を抑えながら、ゼロツーの後を追っていた。
「ここから先は、高セキュリティゾーンとなる。 サーチポリスが常に辺りを監視しているから、くれぐれも僕たちが“アンドロイダ”だと口にしないようにして」
「あ、あぁ……もし言ったらどうなるんだ?」
「言わなくても分かると思ったけど、まあ、容赦なく破壊されるから観念してよね」
「うっわー、蓮人ってば……残酷ぅ」
「おれじゃ、ねぇ!」
明美と、ゼロワンが声をそろえて俺の事をいじり倒していた。 困った顔で、ゼロツーに助けを求めると……ゼロツーは無表情で「触らぬ神に祟りなし……」と呟きながら、無関心に都市部の中へ入っていった。
都市部は、入り口からやけに華やかだった。 郊外の静けさは無く、そこら中に所せましとアクセサリーや、衣装を売る店が立ち並んでいた。
他にも気になったのは、いつでも好きな時に外見の変更ができるアバターショップなる店も置いてあったのだ。 ゼロツーは、それを“被せ”だと言う。
粒子である俺らの外側に、また別の粒子である職人の作ったアバターを重ねるという二重構造で、他人にそれが本物であると見せるのだそうだ。
「いやー、すげえな、未来って……」
「実質、君が作り上げたようなものだけど」
「こんな未来なら、俺は大歓迎だなぁーはっははは」
「いうなれば、そこら中に君の癖が詰め込まれてるんだけどね――ほら、あれなんて君の黒歴史……」
「う、うわああ、な、なんで……!?俺が秘密に描いた、キャラの画像が売られてるんだ!!」
一昔前に好きだったキャラクターに、ちょっ大人セクシーな衣装を着せ、それを描いて、画像フォルダの奥にしまっていたはずの絵が、なんと目の前で額縁に詰められて販売されていたのだ。
「アグレー博士が君を懐かしんで、君のフォルダから探り当て、忘れないように量産して売り出したものだよ」
「何やってくれてるんだああああうわあああ!!ていうか、やっぱり死んでるのか俺ええ……」
「ふっ……当り前じゃない。 生身の人間が数百年後に実在していたらおかしいでしょ?……今いる、君たち二人を除いては」
「ふふ、レント様?あなたはよく言っておられました……俺の死後は、PCごと水没させてくれと――博士は寂しくて、無理だったようですよ」
「ぶ、ぶん殴ってやる……!」
明美は額縁の中のキャラクターをじっと見つめながら、ニヤリと笑って俺の顔を覗き込んだ。 ……もう、言おうとしている事は分かっている。
「蓮人君てば……こんなセクシーボディのお姉さんが好きなのねぇ」
「やっぱりいいい、うおおおお、明美にだけは見られたくなかった!!」
俺は頭を抱え、膝から崩れ落ちた。 床に這いつくばって、絶望を全身で表現していると、それを見た明美が、俺を指さしながらゲラゲラと笑っていた。
ふと、良い香りが鼻をかすめた。 これは、現代でも嗅いだことのある……炭火で焼かれた醤油の香ばしくて美味しい香り。
「やぎどり!!やぎどりくいてぇ!!」
「ほんとだー、焼き鳥の香りがする……」
「あぁ、やきとりーのショップですね、あそこは人気なんです、私が買ってきますね」
しばらくすると、ゼロワンが焼き鳥の袋を両手にたくさん抱えて持ってきた。 ここに来る前……学校から帰宅した後から何も食べていない。 何時間経ったかもわからないけれど、丸一日以上は何も食べていないような空腹感が、食べ物を求めて胃を動かし出す。
醤油の甘い香りに、一気に焼き鳥を何本も頬張って、お腹の中は満足げに重くなった。
「あーー、くったくった、やっぱ焼き鳥はうめぇ~」
「本当に、美味しかった!こんな所でも美味しいものが食べられるなんて、感心だよ、ありがとうゼロワン!」
「えへへ、それほどでもありませんよ~」
「ふんっ、お腹がいっぱいになったなら、早く泊まる場所を探しに行くよ。 明日は君たちを博士の元へ連れて行かなきゃならないからね」
ゼロツーは、都市の中心部にある、高い塔の先を見上げた。 それにつられて、俺もその塔を眺める。 遥か高くそびえ立つ塔の上、その場所に……この世界の創立者であるリズム・アグレー博士が、この世界を監視しながら、法と秩序を守っているのだと、ゼロツーは言った。
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