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2.機械の友
13_エネルギー源
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研究室のドアは、スモークのかかったすりガラスで、外から内部を覗き見る事は出来ない。 その代わり、センサーはすぐに俺の身体に反応して、生体反応を読み取ると、ガラスと鉄が擦り切れるような音が聞こえ、スーッとドアが開いた。
中に入ってみると、思いのほか殺風景で、円形状に張り巡らされた床の先に、再びいくつもの扉が現れた。 チリリンと、一つのドアに取りつけられた鈴が鳴る。 別のドアがさっきと同じような音を立てながら開いた。
俺は部屋の中を見つめた。 中では、一人で操作パネルをいじる男の背中が見えた――白衣の裾を揺らしながら、静かな部屋に、パチパチとパネルに固い物がぶつかる音が聞こえる。
「彼がアグレー博士だ」
「お? やっとお出ましになった?」
アグレーと呼ばれた男は、ゆっくりと振り返った。 随分と高身長で、ぱっと見180センチくらいだろうか?
自分の父親でさえ、170もいってなかった。 未来の俺が作ったというのなら、確かに憧れだった高身長を反映させているかもしれない。
「やあ、久しぶりだね。 と、いっても……君とは初めましてかな、蓮人。 私がリズム・アグレーだ」
「初めまして、藤ヶ谷蓮人です……なんか、変な感じ」
「そりゃー、私だって変な感じだよ? でもねぇ、私は嬉しい……こうしてまた君に会えたんだから。 懐かしき友よ。 ようこそ……ルズイールサマタギアへ」
ニコリ、とアグレーは笑う。 何年も、何百年も動いてきたアンドロイドとは思えないほどの滑らかな動き。 肌質は全くと言っていい程衰えていない――つまり、若々しい。 それに、彼はコーヒーを嗜んでいたのか、辺りにほろ苦い良い香りが漂っていた。
「コーヒー、飲むのか?機械なのに?」
「はぁい、私はコーヒーをエネルギー源に選んだのダヨ。 このなんとも、言えない香り……私に脳みそは無いが、エネルギー循環装置ならあるからね……あハは」
「へぇ……それにしても、何百年も動いてるのに、何で壊れないんだ?」
「ボディメンテナンスは常に欠かせません。 週一日はメンテナンスで古い部品は交換してるからネ!人間と違って……私は随分と長い事、こうして動いているってわけだ……君も機械になってみるかぁい?」
アグレーは、とんでもない冗談を良いながら、指先から小さな飴玉を出して見せた。 丁度、甘いものが恋しいと思っていたところだ。 それをそっと口に入れてみる。 舌先で転がしていると、ほのかな砂糖とミルクの香ばしさを感じ……何とも懐かしいミルクキャンディの味だった。
「あぁ~うま。 近所のスーパーでよく買ってたお気に入りのやつ!」
「そうそう、君は事あるごとに、ずーっとこれを食してたからね!眠たい時も~、疲れた時も~、あ、奥さんと喧嘩した時も」
「おぅ!?奥さん……?」
「ああぁ~はっはは、そそそ、君には奥さんが居てね~、もーめちゃカワイイ、早く会いたいって言ってたんだよね~」
まさか、未来の俺には奥さんがいたなんて……衝撃的だった。 俺は、頭がいいわけでもないし、スポーツ万能なわけでもない。 ただ家でオンラインゲームと、機械いじりをして遊ぶだけの……ほとんど引きこもりのような生活なのだ。 俺の部屋っていったって……実家だし。 こんな俺を好きになってくれる人が居たなんて、なんて感動ものだろう。
「可愛い?可愛いの?」
「可愛いと毎日いってたねぇ~……」
「うおっしゃーーー!!そ、それで?なんて子……?」
「え~きくぅ~?」
「うんうん、きくきく!!わっくわく!」
早く答えろと言わんばかりに、俺はソワソワとして、ゼロワンとゼロツーの顔を交互に見ながら、にやけた顔がとまらない。 明美が連れていかれて、こんなことをしている訳にもいかないのだが……時には、こういうワクワクする時間も必要だろう。
「アケミちゃんです」
「は?」
「だから~君の幼馴染の、明美ちゃんだよ~」
「えぇ……なんか、がっかり……」
未来の奥さんが明美と聞いて……嬉しいのか、嬉しくないのか……複雑な心境に俺は、がっくりと頭を下げた。 結局の所……幼馴染という腐れ縁からは逃れられないのか。
「はっははは、今の君では、そういう感情になるのも致し方ないねぇ……もっと大人にならないと」
「うるせぇ!……ちえっ……致し方ないか。 まぁ、明美でも俺に奥さんが出来るとは大したもんだな、うんうん」
「レント様……ちょーおもろい」
「君って奴は……毎回僕の予想外な感情を出すから、飽きないね」
やれやれと言うように、全員がクスクスと笑っていた。 俺以外全員アンドロイドなのに……それぞれが、皆違う表情を持っていて、血の通った人間のように接する事ができた。
「さて……蓮人君。 お遊びはここまでにして、これから、本題に入りたい――まず、君がここへ来た理由なんだけど……」
「俺も、それを聞きに来たんだ。 ……俺たちは何のためにここへ来て、何故、明美が何故連れ去られなければならなかったのか。 ディスカトーテって奴は何考えてるんだ……?」
「うーん、話せば長くなる……まぁ、その辺に座ってよ」
俺は、近くにあった研究室の丸椅子にドカッと座り込んで、アグレーの顔をじっと見据えた。 彼の瞳が、俺を見て――ほんの少し寂しそうな表情をしているのが見えた。
中に入ってみると、思いのほか殺風景で、円形状に張り巡らされた床の先に、再びいくつもの扉が現れた。 チリリンと、一つのドアに取りつけられた鈴が鳴る。 別のドアがさっきと同じような音を立てながら開いた。
俺は部屋の中を見つめた。 中では、一人で操作パネルをいじる男の背中が見えた――白衣の裾を揺らしながら、静かな部屋に、パチパチとパネルに固い物がぶつかる音が聞こえる。
「彼がアグレー博士だ」
「お? やっとお出ましになった?」
アグレーと呼ばれた男は、ゆっくりと振り返った。 随分と高身長で、ぱっと見180センチくらいだろうか?
自分の父親でさえ、170もいってなかった。 未来の俺が作ったというのなら、確かに憧れだった高身長を反映させているかもしれない。
「やあ、久しぶりだね。 と、いっても……君とは初めましてかな、蓮人。 私がリズム・アグレーだ」
「初めまして、藤ヶ谷蓮人です……なんか、変な感じ」
「そりゃー、私だって変な感じだよ? でもねぇ、私は嬉しい……こうしてまた君に会えたんだから。 懐かしき友よ。 ようこそ……ルズイールサマタギアへ」
ニコリ、とアグレーは笑う。 何年も、何百年も動いてきたアンドロイドとは思えないほどの滑らかな動き。 肌質は全くと言っていい程衰えていない――つまり、若々しい。 それに、彼はコーヒーを嗜んでいたのか、辺りにほろ苦い良い香りが漂っていた。
「コーヒー、飲むのか?機械なのに?」
「はぁい、私はコーヒーをエネルギー源に選んだのダヨ。 このなんとも、言えない香り……私に脳みそは無いが、エネルギー循環装置ならあるからね……あハは」
「へぇ……それにしても、何百年も動いてるのに、何で壊れないんだ?」
「ボディメンテナンスは常に欠かせません。 週一日はメンテナンスで古い部品は交換してるからネ!人間と違って……私は随分と長い事、こうして動いているってわけだ……君も機械になってみるかぁい?」
アグレーは、とんでもない冗談を良いながら、指先から小さな飴玉を出して見せた。 丁度、甘いものが恋しいと思っていたところだ。 それをそっと口に入れてみる。 舌先で転がしていると、ほのかな砂糖とミルクの香ばしさを感じ……何とも懐かしいミルクキャンディの味だった。
「あぁ~うま。 近所のスーパーでよく買ってたお気に入りのやつ!」
「そうそう、君は事あるごとに、ずーっとこれを食してたからね!眠たい時も~、疲れた時も~、あ、奥さんと喧嘩した時も」
「おぅ!?奥さん……?」
「ああぁ~はっはは、そそそ、君には奥さんが居てね~、もーめちゃカワイイ、早く会いたいって言ってたんだよね~」
まさか、未来の俺には奥さんがいたなんて……衝撃的だった。 俺は、頭がいいわけでもないし、スポーツ万能なわけでもない。 ただ家でオンラインゲームと、機械いじりをして遊ぶだけの……ほとんど引きこもりのような生活なのだ。 俺の部屋っていったって……実家だし。 こんな俺を好きになってくれる人が居たなんて、なんて感動ものだろう。
「可愛い?可愛いの?」
「可愛いと毎日いってたねぇ~……」
「うおっしゃーーー!!そ、それで?なんて子……?」
「え~きくぅ~?」
「うんうん、きくきく!!わっくわく!」
早く答えろと言わんばかりに、俺はソワソワとして、ゼロワンとゼロツーの顔を交互に見ながら、にやけた顔がとまらない。 明美が連れていかれて、こんなことをしている訳にもいかないのだが……時には、こういうワクワクする時間も必要だろう。
「アケミちゃんです」
「は?」
「だから~君の幼馴染の、明美ちゃんだよ~」
「えぇ……なんか、がっかり……」
未来の奥さんが明美と聞いて……嬉しいのか、嬉しくないのか……複雑な心境に俺は、がっくりと頭を下げた。 結局の所……幼馴染という腐れ縁からは逃れられないのか。
「はっははは、今の君では、そういう感情になるのも致し方ないねぇ……もっと大人にならないと」
「うるせぇ!……ちえっ……致し方ないか。 まぁ、明美でも俺に奥さんが出来るとは大したもんだな、うんうん」
「レント様……ちょーおもろい」
「君って奴は……毎回僕の予想外な感情を出すから、飽きないね」
やれやれと言うように、全員がクスクスと笑っていた。 俺以外全員アンドロイドなのに……それぞれが、皆違う表情を持っていて、血の通った人間のように接する事ができた。
「さて……蓮人君。 お遊びはここまでにして、これから、本題に入りたい――まず、君がここへ来た理由なんだけど……」
「俺も、それを聞きに来たんだ。 ……俺たちは何のためにここへ来て、何故、明美が何故連れ去られなければならなかったのか。 ディスカトーテって奴は何考えてるんだ……?」
「うーん、話せば長くなる……まぁ、その辺に座ってよ」
俺は、近くにあった研究室の丸椅子にドカッと座り込んで、アグレーの顔をじっと見据えた。 彼の瞳が、俺を見て――ほんの少し寂しそうな表情をしているのが見えた。
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